神なる冬

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コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[小説] 地図男

2008-10-07 21:50:08 | SF
『地図男』 真藤順丈 (メディアファクトリー)



衝動買いしてしまった、なんだかよくわからない本。

地図を片手にうろうろする浮浪者、地図男。その地図にはあまたの物語の破片が細かく書き込まれ、まるでモザイクのようになっていた。さらにその物語は荒唐無稽にして奇妙奇天烈。3才児の音楽の天才や、23区の代表が陣取り合戦のようにプレイする23区大会、関東を巡る山賊、そして、多摩川をはさんだムサシとアキルの物語。地図男は何のために、誰に向かって物語を紡ぎ続けるのか。

面白いのは、この地図男が持っているのは関東のローカル地図。したがって、彼の物語はせいぜい北は群馬、栃木から南は神奈川のあたりまでしか舞台にならない。ムサシとアキルの物語なんて、身近な地名ばかりで、なんだかご当地小説の雰囲気。

行ったことも無い場所の地図を見ながら、バカ話を考えているわけではなく、地図男はまさしく地に足をつけて、地図の中を歩き回っている。しかしながら、その物語は足で集めた拾遺譚というわけではなく、地図男の中からあふれてくるものらしい。

物語の中の物語や、さらにその中の物語といった入れ子構造を見せながら語られる物語は、語り口も軽妙で、ちょっと馬鹿馬鹿しかったり、不思議なストーリーで、どんどん惹き込まれてしまう。とはいえ、一番外側の地図男の物語は、結局語られていないということなんだろうか。

うーむ。よくわからん。

とりあえず、地図男ならぬ、真藤順丈には世界地図や宇宙地図を持って、魅力的な物語を紡ぎ続けていただきたい。