神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] ブラックアウト

2012-08-26 11:28:47 | SF

『ブラックアウト』 コニー・ウィリス (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

 

『ドゥームズデイ・ブック』、『犬は勘定に入れません』に続く、オックスフォード大学史学部シリーズ。今回はすれ違い成分200%アップですれ違いまくり。基本的に、ひとは会えません。情報は誤解されます。もう、イライラしっぱなし。

そもそもいったいこの混乱はどこから来ているのか。話はぜんぜん終わっていないので、全く分かりません。


史学部のネットが何かの理由によってスケジュール変更多発の大混乱。そんな中、第二次大戦下のイギリスへ向かった3人の史学部生。しかし、ネットは閉鎖され、降下点は開かない。しかも、回収チームもやってこない。タイムトラベルなのだから、未来で何年経とうと、トラブルの“直後”に救出できるはずなのに。

というサスペンスものなのだが、その辺の話はほとんど解決されずに次巻送り。最終的にヒューゴー賞、ネビュラ賞のダブルクラウンを獲得しているので、ちゃんとSFになるはずなんだけれど、これまでは第2次大戦当時の人々が生き生きと描かれている人情もの(笑)

気になるのは、主人公とされる3人以外のタイムトラベラーの描写が挿入されていること。これらはたぶん、彼らの前回のタイムトラベルだと思うのだが、要するにこれがデッドライン。その時点が訪れるまでに彼らは未来に帰らなければならない、はず。

そして、ラストに到着したタイムトラベラー。彼は誰?

3人が希望を掛ける4人目の史学生フィリップスなのか、はたまた、数年後のコリンが救出に来たのか。あるいは、ダンワージーその人の出陣か!

期待を持たせながらも、以下『オールクリア』へ続く。こんなところで切るな。これは続きが待ち遠しい。


歴史資料からはうかがい知れない市井の人々の思いが描かれているが、本当にそうだったのかどうかはわからない。それでも、本当にそうだったのかもしれないと思わせるところがさすがのウィリスの筆力。

最初はバラバラで短編にしても問題ないだろうと思っていたのだけれど、こういう群像劇で当時のイギリスの空気を再現しようという意図はしっかり伝わってくる。

でも、まぁ、この小説の感想を一言でいうと、「お前らみんな、ひとの話を聞けよ!」って感じ。

あとは、SFとしての面白さが時間の謎解き篇で出てくれればと思うのだけれど……。

 


[SF] ベヒモス

2012-08-26 10:55:13 | SF

『ベヒモス―クラーケンと潜水艦―』 スコット・ウエスターフェルド (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

 

読んだのは随分前なんだけど、記録のために。

蒸気機関文明のクランカーと、遺伝子工学文明のダーウィニスト。第一次世界大戦をモチーフに、二つのありえた歴史がぶつかり合う。『リヴァイアサン』に続く第2弾。

この物語はいろいろな対立を融合させていこうということがテーマなのかもしれない。世界を二つに割った最初の大戦を、機械工学と生命工学の対立と融合に託して、少年少女たちへ伝えるジュブナイル。

今回の舞台はトルコ。西洋と東洋の融合する国であり、政治的にも連合国と同盟国の間で揺れるという、まさにテーマにうってつけの国。ダーウィニストとクランカーという二項対立のわかりやすい図式から、もっと複雑な社会情勢に巻き込まれていく公子と男装少女。

男装少女のデリンは公子アレックへの気持ちに自覚的になるも、ライバルの美少女リリトの登場に揺れる乙女心(笑)

アレックは自分の国際的使命に目覚め、この戦争を終結させる決心をする。

そして、遂に目覚めた謎の卵。なんと中身は天才スローロリス。なんで卵からサルが生まれるんだか。さすがダーウィニストは違うわ。このロリスが絶妙。天才的な分析力で、周囲の会話から的確なキーワードをボソッとしゃべるだけなのだが、これがまた面白すぎる。

動物型ロボットという、ある意味折衷型の技術はトルコというごちゃまぜ文化の地にふさわしく、なるほどと思わせる。はたして、この世界の日本はどうなっているのか、第3巻が待ち遠しい。

 


[映画] ダークナイト ライジング

2012-08-26 09:39:30 | 映画

ダークナイト ライジング - goo 映画

(C)2012 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC

 

ネットでは「前作に比べて……」という酷評も見るのだけれど、それはヒース・レジャーのジョーカーに引っ張られすぎなんじゃないかと思う。『ダークナイト』は確かに傑出した作品ではあったけれど、それが『バットマン』すべてではない。

たしかに、ヒースが演じたジョーカーは映画史上、屈指の狂気と恐怖を与える存在だったけれども、ダークナイト・ライジングで描かれるのはジョーカーの復活ではなく、バットマンの復活であることは実際問題として変えられはしないのだ。

今回の敵役、べインは肉体的にも頭脳的にも強大でバットマンを追い詰めるのだが、その動機がいまひとつつかめない。いったい、こいつは何をしようとしているのか。

真の黒幕が明らかになったとき、『バットマン ビギンズ』の記憶と相まって、べインの行動がストンと腑に落ちる感じがいい。まったくもってベタだけど、それで動くことこそ人間の証。


『ビギンズ』から見直してもらえばわかるけれど、すべての話は最初からつながっている。たとえば、蝙蝠とともにブルース・ウェインのトラウマとなった、下から見上げる井戸の口がこのような形で登場するとは。そして、すべて伏線はブルースの人生の中に、最初から『ライジング』の結末を予見していたかのようにちりばめられている。

そして、みんな忘れていないか。『バットマン』はヒーロー物なんだっていうことを。

ヒーローとは何か。いったいどういう存在なのか。そして、バットマンは本当にヒーローだったのか。

彼は最初からヒーローたりえず、正義ではなく、復讐のために生きた男だった。『ダークナイト』においてすべての罪をかぶり、闇に葬られた存在だからダークナイトになったのではない。彼は最初から“ダークナイト”だった。その男がいかにして生き、いかにして最期を迎えたか。そういう形のヒーロー物であり、そういう映画だ。

そして、真のヒーローと言えばゴードン警部だろう。唯一、バットマンの無実を知っているがゆえに葛藤に苦しむ男。バットマンの復活を信じ続け、特殊訓練など受けた超人でもないのに、べインたちと渡り合う。デント法によって存在意義を失った警官隊を組織して規律の乱れを押さえ込み、数か月間にわたる幽閉の間、士気を保ち続けて逆襲の時を待ったりと、彼こそが影の立役者だ。

彼もまた、ブルースとの出会いの瞬間から、すべてのエピソードは『ライジング』の結末に至る伏線である。彼に感情移入して見てしまったせいで、バットマンサインを見上げた時には本当に涙が出そうになった。

さらに、ゴードン警部、執事のアルフレッド、フォックス社長といったオッサンたちの役どころがなかなか泣かせてくれる。ブルースの墓の前でアルフレッドが流す涙の重たさは計り知れない。


記憶が曖昧だったので、『ビギンズ』を見直してみたけれど、彼らが今後にどうなるかを知っていながら見ると、またいろいろ発見があって感慨深かった。『ライジング』があんまりおもしろくなかったという人は『ビギンズ』を見直してみるべきだと思うよ。

 


[SF] 拡張幻想

2012-08-26 00:02:40 | SF

『拡張幻想 年刊日本SF傑作選』 大森望/日下三蔵 編 (創元SF文庫)

 

毎年お馴染みになってきた創元の年刊日本SF傑作選。これで5年目。これが途切れない間は日本SFもなんとかなるだろう。

それ以上に、毎回ぶあつくなっていくというのがすごい。まさにアゲアゲ状態。

今回の傑作選は2011年のトピックの影響が色濃く出ているという。東日本大震災と原発事故、伊藤計劃と小松左京の逝去、そして、止まらないはやぶさフィーバー。その中で、自分でも意外に思ったのだが、俺は小松左京にはそんなに思い入れが無いようだ。

『日本沈没』をはじめ、『復活の日』、『日本アパッチ族』、『継ぐのは誰か』、『果てしなき流れの果てに…』と、いくらでも名作は浮かんでくるし、没頭して読んだ記憶はあるのだけれど、いまひとつ思い入れが無いのは何故なんだろう。中学時代からよく読んでたはずなんだけど。

あまりに偉大過ぎて、身近に思えないんですかね(笑)


収録作は、いつもは既読作品が多いのだけれど、今回はそれほどでもなく、読んだ奴ばっかりかよという感想にはならなかった。

一番おもしろかったのは、創元SF短編賞受賞作の「〈すべての夢|果てる地で〉」だった。まぁ、確かにSFファンにしかわからないネタが混じっているとはいえ、SFファンならこれを読むべきでしょう。SFが想像する未来が(一部を除いて)実現しないのはなぜか。そこに真っ向から切り込む一発ネタでありながら、宇宙を救うという大感動巨編に持っていくという凄さ。

今年星雲賞短編部門を獲った野尻抱介の「歌う潜水艦とピアピア動画」や、その他の賞の受賞作が入っていないのは年刊傑作選としてどうかと思うが、それはまぁ出版事情があるので仕方がない。それこそ読んだのばっかりになってしまうしね。

しかし、これは傑作選というよりは、オールスター戦のような感じがする。もうちょっとスリム化してもいいのじゃないか。


<hr>

「宇宙でいちばん丈夫な糸」 小川一水
悪くは無いんだけど、いわゆるスピンアウト作品を傑作選に入れるのかという問題はあるんじゃないか。いや、自分は読めてラッキーだと思いましたけどね。

「5400万キロメートル彼方のツグミ」 庄司卓
おもいっきりはやぶさな話。そろそろ食傷気味ではあるが、やっぱり泣ける話のいいネタだよ。

「交信」 恩田陸
これまた、はやぶさな話。でも、泣けるわ。俺もあの時、ウーメラ砂漠からのust見てた。

「巨星」 堀晃
今度は小松左京な話。こういうハイコンテクスト(と言っていいのか?)な作品を傑(以下略)

「新生」 瀬名秀明
はいはい、俺にとってのエロ本は小説でしたよ。小松左京作品のパロディだとわかって読むのと、そうでないのとでは感想がまるっきり違ってきそうだな。

「Mighty TOPIO」 とり・みき
今度はアトムのパロディ。そうだよね、今の日本にアトムがいたらこうなるよね……(泣)

「神様 2011」 川上弘美
気持ちはわかるが、その立場は取らない。

「いま集合的無意識を、」 神林長平
『ぼくらは都市を愛していた』の後に読むと、なんだか読み違いをしていたような気がして堪らない。

「美亜羽へ贈る拳銃」 伴名練
神林長平に続いて伊藤計劃トリビュート。なんか、伊藤計劃の呪縛が多すぎて、最近アンチになりつつある自分。

「黒い方程式」 石持浅海
えー、物語としてはそうなる以外ないんだけど、気持ち的に納得がいかない。

「超動く家にて」 宮内悠介
馬鹿過ぎ。電車で読むのが危険なくらい吹き出しまくった。

「イン・ザ・ジェリーボール」 黒葉雅人
最後の『SF Japan』から。もうちょっとひねりが欲しかった気が。

「フランケン・ふらん ―OCTOPUS―」 木々津克久
これはホラーじゃなくって、バカSFとして読めばいいのか?

「結婚前夜」 三雲岳斗
『SF Japan』から二つ目。これよりおもしろいのが無かったか?

「ふるさとは時遠く」 大西科学
都会と田舎では時の流れ方が違うよねという感覚を、物理法則を捻じ曲げて実現してしまった荒業。でも、物語はやっぱりそういうこと。夏に読むと、またこれがぐっと来ます。

「絵里」 新井素子
久し振りの新井素子。これも、もう一歩SF作家として踏み込んでみないかという感じ。

「良い夜を持っている」 円城塔
なんか、ずーっと「良い夜を“待”っている」だと思ってた気がする。

「〈すべての夢|果てる地で〉」 理山貞二
第3回創元SF短編賞受賞作。アーサーにアイザックにボブ。もうそれだけでおなか一杯。ちなみにエドはスミスなのか、ハミルトンなのか。SFファンが読むべき小説なんてものが、もし存在するならば、これこそがそうだろう。もう、『1984年』の話が出てきたときに、ネタの構図が分かった瞬間に背筋がゾクゾクした。

 


[コンサ] 2012 J1 第23節 G大阪 vs 札幌

2012-08-25 23:59:59 | コンサ

2012年 J1 第23節 ガンバ大阪 7-2 コンサドーレ札幌@スカパー


※降格も決まって一段落ついたので、これまで放置していた過去の試合を思い出しながら(9/30)


この試合、ほとんどメモが残っていない。とにかく入れられまくった大味な試合で、呆れてしまった。


それでも、コーナーキックから日高のヘッドで一度は1-1の同点に追いつき、後半には上原が意地でゴールを奪ったというのは、ガンバのDF陣もそうとうおかしい。なんといってもゴンザレス今野とガラパゴス藤ヶ谷だからな。いろいろ複雑な心境だったよ。

シュート数は G大阪 26-2 札幌。得点効率の素晴らしさは、すべて今野と藤ヶ谷が手加減してくれたせいだよな、きっと(笑)


攻撃面ではハモンからいいパスが出ないが、そもそもボールが回ってない。すべてのパスはパスカットされるのがお約束のような感じ。

守備面でもプレッシャーが弱すぎる。前にいるだけ。いったい何を怖がっているのか。特にボランチがボールを追わないのはいったいなぜなのか。

GKの杉山も最低な出来で、ボールはキャッチしないは、キックはフィールド外に出るは、おまけに岩沼との連携ミスでオウンゴール。

本当に、フィールドの半分で攻撃側と守備側に分かれて練習しているようなものだった。体力的にも技術的にも、それどころか精神的にも優るところがどこにもない。

たとえ奇跡が起こって札幌が残留したら、他のチームに申し訳ない。そんなレベルの最低な試合だった。

 


[コンサ] 2012 J1 第22節 札幌 vs 神戸

2012-08-18 23:59:59 | コンサ

2012年 J1 第24節 コンサドーレ札幌 2-4 ヴィッセル神戸@スカパー


※降格も決まって一段落ついたので、これまで放置していた過去の試合を思い出しながら(9/30)


思えば、この試合から大敗の連続で一気にバタバタと崩れていった気がする。得点することよりも失点することを恐れるようになってしまった。


この日もあっさりと前半2分に失点。しかし、前節の仙台戦ではここからひっくり返しているので、焦りは少なかったはず。じっくり行けば逆転可能。

しかしなぜか、この日は中盤でのあたりが浅く、DFラインも深いという腰が引けた状態。これでは神戸にボールを奪われ、繋がれるのは当たり前。

攻撃では、ハモンの好き嫌いが目立つ。山本、日高あたりを狙っているが、ほかにもボールを回せばいいのに。しかも、テレが前半30分で走れなくなり、変わって内村を投入。

後半もいきなり出だしで失点。集中力が無いのかなんなのか。これでは話にならない。監督もそう思ったのか、前節でうまくいった宮澤中央の3-5-2へ早くもチェンジ。あれは緊急手段だけじゃなくって、これからも使っていくというのか。

と思っているうちに、ハモンが倒されPKゲット。これをハモンが決めて1-2。

ここからなぜか神戸が崩れ出す。PKで1点とっただけなのにベタ引きになり、おかげで札幌側がセカンドボールを拾えるようになった。そして上原が同点ヘッド。

ところが、神戸も都倉が入ってから急に立ち直る。前線にボールの収まりどころができて、ボールが回り始める。しかし、都倉程度(失礼!)でこれだけ変わるのか。石崎監督は前田じゃなくて都倉を取るべきだったんじゃないか。

そんなわけで急に立ち直った神戸に、立て続けに得点を奪われ、スタジアムのムードも一変。

札幌の守備はズタズタ。攻撃は常にワンテンポ遅くてボールを奪われる。両チームとも、まるで別物になったような大転回。

せっかく、2-2まで追いついていい感じだったので、返って失望は深かった。たぶん、この試合が一番精神的ダメージが大きかったような気がする。

そしてここから降格までの連敗が続くのであった……。

 


[コンサ] 2012 J1 第21節 札幌 vs 仙台

2012-08-12 23:36:47 | コンサ

2012年 J1 第21節 コンサドーレ札幌 2-1 ベガルタ仙台 @スカパー

 

3歩進んで2歩下がる。それでも1歩前に進んでいるのかどうかという札幌。今回の相手は、首位仙台。ユアスタではサイド攻撃でボコボコにされて意気消沈した思い出が。

今回はキム・ジェファンとテレが復活。新戦力3人揃い組で首位に挑む。


札幌ドームはゴール裏に横断幕がたった一枚。唯一の幕にかかれた文字は「NO SURRENDER」。ピッチ練習や選手紹介時の応援コールは無し。これは応援拒否か何かの緊急事態かと思いきや、選手入場と共に掲げられるSAPPORO 12の襷、ビッグフラッグ、そして、今回初登場のビッグジャージ。

「NO SURRENDER」は、まだ終わらない、まだ終わらせない、というサポーターからのメッセージだった。


しかし、そんなサポーターのメッセージもむなしく、前半12分にあっさり失点。6月の試合を思い出させるようなコーナーキックからのヘディングだった。何度も同じことをやらかすから呆れられるのだというのに。

そこからまた一気に意気消沈してボロボロになるかと思いきや、失点の時間が早かったというのが幸いしたのか、前半の途中からなんとか盛り返して、ハモンから古田へ、砂川へとスルーパスが通り始める。しかし、試合としては完全に仙台ペースで前半終了。

後半も同じような展開で、何かを変えなければいけなかった。そこで石崎監督が選択したのは3-5-2へのシステムチェンジ。えっ、そして、宮澤がなんとセンターバックの真ん中!

いくらキム・ジェファンと顔が似てるからって、それは無いだろ。と、正直思った。石崎監督、ご乱心。

まぁ、札幌は4-4-2でもマイボールの時は両サイドが上がってボランチがCBの真ん中に下がる形を普段から使ってるんだけどさ。

しかし、これがなんとうまく行ってしまうのだから、サッカーというのは恐ろしい。

砂川に代わって入った内村からのボールを山本が絶妙なクロス、そこに飛び込んだのは日高だった。FW出身とはいえ、普段サイドバックの日高がこの位置まで上がれたのは3-5-2でのポジション取りがうまくはまったということだろう。日高は何度もゴール前に顔を出していたが、仙台DFが日高をマークしきれていなかったのは試合終了まで、ずっとSBだと思われてたからじゃないかとw

さらに終了間際。このまま引き分けで終わってほしいと祈るロスタイム4分。岡本が左サイドからシュート性の低いクロスを蹴り込み、これが相手DFの足に当たってゴール。なんと終了数秒前の大逆転。なんか、うれしいというよりも笑ってしまったよ。ありえない結末。

仙台がナビスコカップで中二日だったことが少なからず試合に影響したことは確かだろう。そして、仙台が1点を守りきるのではなく、FWを入れて追加点を取ろうとしてきたことが最大の勝因かもしれない。さらに、仙台がサイド攻撃主体のせいで真ん中に入った宮澤のボロが出なかったこともある。極め付けは最後のオウンゴールと、とにかくラッキーな試合だった。

要するに、これは実力じゃないよ。こんな試合が続くわけがない。でも、なんでもいいよ、首位に勝ったんだから。

運も実力のうちとはいえ、名古屋戦のオフサイド合戦に続いてのラッキーな勝ちを拾ったわけだ。次節もホーム。聖地厚別にカミカゼが吹くか。いや、吹かなくても勝ち続けなければならない。まだまだ降格ラインははるかに高く遠いぞ。

でも、みんなで叫ぼう。ノー! サレンダー!!

 

 


[SF] ゴースト・オブ・ユートピア

2012-08-12 23:27:00 | SF

『ゴースト・オブ・ユートピア』 樺山三英 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)


 

どこにもない(nowhere)ユートピアを探して旅立った“きみ”。いま、ここ(now here)にいる“ぼく”。

二人はさまざまなユートピア/ディストピアを巡る。どこにたどり着くということもなく、まるで地獄めぐりのごとく。ユートピアはどこにもなく、いま、ここがユートピアであるということか。

語られる世界はディストピア的色彩が強く、ユートピアと言えるほど楽園的な場所は出てこない。ユートピアの幻影を追いかけ、どこにも辿りつけない徒労感。というか、そもそも楽園を求めているのか……。

そんなわけで、あえてユートピアというテーマにこだわると、内容がよくわからずに悶々としてしまうが、そんなことは抜きに幻想文学短編集と思えば、どれも面白い短編小説だ。

小説としては、ユートピア論から離れれば離れるほど面白いというのも、また皮肉な感じ。「世界最終戦論」や「収容所群島」あたりの訳の分からない虚無感がたまらない。

ちなみに、元ネタと思われるものは下記の通り。シェーアバルトだけがタイトルを変えられているのは、著者の記憶ミスか、版権関連で問題があったりするのだろうか?


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一九八四年
『一九八四年』 ジョージ・オーウェル

愛の新世界
『愛の新世界』 シャルル・フーリエ

ガリヴァー旅行記
『ガリヴァー旅行記』 ジョナサン・スウィフト

小惑星物語
『小遊星物語』 パウル・シェーアバルト

無可有郷だより
『無何有郷だより』 ウィリアム・モリス(布施延雄訳版)

すばらしい新世界
『すばらしい新世界』 オルダス・ハクスリー

世界最終戦論
『世界最終戦論』 石原莞爾

収容所群島
『収容所群島』 アレクサンドル・ソルジェニーツィン

太陽の帝国
『太陽の帝国』 J・G・バラード

華氏四五一度
『華氏451度』 レイ・ブラッドベリ(元々社版)

蛇足ながら、タイトルの『ゴースト・オブ・ユートピア』の元ネタで扉にも引用されている『コースト・オブ・ユートピア』は2007年にトニー賞を受賞した大作演劇だそうな。

 

 


[SF] Delivery

2012-08-12 23:08:28 | SF

『Delivery』 八杉将司 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)



 

Deliveryという単語に「分娩」という意味があるを初めて知った。恥ずかしながら。しかし、発射とかの意味と同じ単語で分娩とは、ちょっとイメージ的にすごいな。それとも、コウノトリの配達という方からなんだろうか。ちょっと語源を知りたい気分。

 

スーパーディザースターでの大きな被害は当然のように311を想起させるし、統一理論の話は現実にもヒッグス粒子(の可能性)発見のニュースがあり、いろいろタイムリーだった作品。

まるで『猿の惑星:創世記』のような、猿から遺伝子操作で生まれたノンオリジンという存在。さらに彼らが操るポーター(アンドロイド)はブルース・ウィリスがふさふさ頭とツルツルお肌のアンドロイドで登場した『サロゲート』を思わせる。

そんな感じでいろいろな過去のSF作品や科学ニュースがいくつもネタとして織り込まれていて、読んでいて楽しいのだけれど、詰め込み過ぎの気もする。

とにかくその中でも最大のネタはタイトルにもある“Delivery”である。地球からのDelivery。新たな種の出産、そして、この宇宙から新たな宇宙のDelivery。

Deliveryされた種族はノンオリジンそのものではなく、情報体である。ではノンオリジンが猿だったことの意味は?

人間でも猿でもない、作られた存在としてのノンオリジン。そこから身体を失い、脳と脊髄だけの存在になり、さらに情報存在へと移り変わっていく。その中で変わってしまうもの、変わらないもの。そして、その変わらなものの中に愛が含まれる陳腐さと感動。

ノンオリジンはサルではなく、ヒトでもない。生殖もできず、進化から外れた存在という位置づけ。彼らがDeliveryされるというその皮肉。

キーワードでのつながりは示唆的で最後の大ネタまでつながっていくのだが、物語は章毎にブチ切れになって繋がりが悪いのが気になる。これは意図的なんだろうか。毎回、章の最後で主人公が気を失うのは、もはや繰り返しギャグなのやらなんなのやら。

それはさておき、“誕生”を物語るという野心的な本格SFだった。

 


[SF] 天狼新星 SIRIUS:Hypernova

2012-08-12 22:22:55 | SF

『天狼新星 SIRIUS:Hypernova』 花田智 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

 

 

最初はありがちなバーチャルリアリティものかと思った。またゲーム小説か。いい加減飽きたよ、と。

しかし、これが驚天動地なSFネタにつながるとは思っても見なかった。

 

物語は現在のITベンチャー企業、SOCOM-Japan社のトラブル対策室と、どう見てもネットゲームのようなCyber-Forceの二つを舞台にすすんでいく。

このSOCOM-Japan社での描写がなかなか身につまされる。というか、完全に狙ってるだろう。やたらスナック菓子を、しかも箸で食べるとか、夕方に出社するとか、親会社がどうとか。

自分が勤めるのは大企業なので、主人公の女性の出向元に近い。そして、ベンチャーの職場は大学の後輩や、ネットから見聞きする情報にばっちりはまっている。といううか、そういうところからネタを持ってきているのだろう。逆に言えば、それはないだろうというレベルのステレオタイプ。

そこが良いとか凄いとかいうレベルではなく、なんというか、それぐらいしか見るところの無い小説で、正直言ってハズレだと思った。

しかし最後に待っていたこの展開は何だ。地球ごとシュレーディンガーの箱に入れてしまうという大技。はたして、地球は滅んだのか、救われたのか。

そして、存在が情報だけで成り立つならば、そもそもどちらの世界が現実なのか、いや、そもそも現実とは何なのか。

一発ネタと言ってしまえばそれまでだが、そのネタだけでも読む価値がある。

それ以上に驚愕なのが、これが演劇用脚本を下地にしているというところだろう。いったい、どんな舞台だったのか。というか、普段演劇を見るような層が、このネタを理解できるのか?

いろんな意味で異端な作家の異端な作品だった。