神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] SFマガジン2014年1月号

2013-11-30 11:23:09 | SF

『S-Fマガジン 2014年1月号』 (早川書房)

 

「第1回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作発表! 」がメイン記事。大賞の『みずは無間』の第一部と、最終選考作の中から「オニキス」。さらに、「最終選考委員選評」を掲載。

ハヤカワSFコンテストは満を持しての開催ということで、優秀な作品が揃った模様で、豊作なのはうれしい限り。なんと、ここから4作品が商業出版化とのこと。日本SF新人賞の休止から貯め込まれた4年分のエネルギーが爆発的に放出されたということだろう。実際、大賞受賞作も、本来SF新人賞用だったとのことだ。

選評についても、審査員それぞれのSFに対する認識、想いが読み取れてなかなかおもしろい。ハヤカワのSFコンテストで大賞を受賞すべき小説とは、いったいどんなものであるべきなのか。そういう議論が巻き起こるところからも、やっぱり、この場所こそが日本SFの中心地であると思う。


もうひとつの特集は「《グイン・サーガ》正篇刊行再開記念小特集」。こちらはエッセイ、クロスレビュー程度で、新作は無し。

グイン・サーガ・ワールドの方を読んでいるので、あえて今さら何も言うことは無いのだけれど、五代ゆうがあとがきで何か書いている雰囲気があるので、ちょっと読んでみようかと思う。

次の刊行予定がヤガ篇なっているのだけれど、執筆者は誰なんだろうか。また新しい著者が参加するのか、それとも、五代ゆうか、宵野夢が書くのか。久美沙織はちょっと雰囲気が違ったし、牧野修ってことはないだろうしなぁ。


そして、神林長平の新連載、「絞首台の黙示録」がスタート。いきなりの死刑執行直前シーンから父親の失踪話への場面展開が唐突で、まだ何もわからないが、死刑執行パートでの死にまつわる自問自答は、さすがに神林。隔月掲載とのことで、「膚の下」のときのように、次回掲載が待ち遠しく、読みづらい連載になりそうだ。


○「みずは無間(第1部)」 六冬和生
やたらと面白かったので、さっそく書籍版をぽちった。意識を持った宇宙探査機という意味では、創元SF短編賞の宮西建礼「銀河風帆走」、小川一水「青い星まで飛んでいけ」あたりと設定は被るが、チャールズ・ストロスを思わせるような加速していく探査機の進化パートと、探査機の意識の素(?)である透の記憶の中の過食症な彼女との出来事のミスマッチが面白い。最終的にこの二つは相互作用し、宇宙を食らいつくすことになるらしいのだが、そんなネタバレを記事に書いていいのか?

○「オニキス」 下永聖高
神林長平には「夢オチとしか思えない」と言われてかわいそうだが、これは夢オチと見せかけて、夢じゃないSFなわけだ。いわゆる虚偽記憶の物語として読むのもおもしろい。つい最近も、「11年にわたり使っているハンドルネームを付けた由来が全部偽記憶だった」というエントリが話題になっていた。こういうことは、細かいことを含めれば珍しいことではないが、もしかしたら、記憶違いではなく、本当に過去が改変されているのかもしれない。

○「岐路 星界の断章」 森岡浩之
軍士(ボスナル)と交易者(サル―ギア)の悲恋と、アーヴ的な考え方の帰結。星界シリーズの世界は独特なので、短編で読むとその世界に浸りきる前に終わってしまうので読みづらさだけが残る。完全なファンならば、助走期間が短くて済むのだろうけど。 

 


[本] 黒祠の島

2013-11-30 11:09:03 | SF

『黒祠の島』 小野不由美 (新潮文庫)

 

この前読んだ『パッチワーク・ガール』がSF+ミステリならば、こちらはホラー+ミステリ。なおかつ、罪と罰がテーマということで、なんとなく個人的シンクロニシティ。

閉鎖的な島で起こる失踪事件。非協力的な村人。季節外れの風車と風鈴。島を支配する神領家。恐ろしげな伝説。血塗られた廃屋。存在しない娘。はたして、真相はどこに。

こちらもミステリ的なトリックは珍しくないし、最初からそこを探せよというのが結末。しかしながら、小野不由美のストーリーテリングに乗せられて、読者はミスリードに嵌り込む。主人公や登場人物に感情移入すればするほど、読者は真相に気付かないようになっている。

罪と罰、もしくは、“裁き”をテーマとする思弁小説と考えると、これはこれでなかなか深い。馬頭夜叉信仰(実はカイチ)が、閉鎖された島で果たしてきた役割は、現在の裁判所につながる。そして、裁判所の持つ機能としての、犯罪者への量刑と、被害者、および、被害者家族の精神的救済のバランスの問題がそこにはある。

たとえば、残忍な殺人事件に対し、被害者家族は犯人への極刑を望むだろうが、現在の日本の裁判所は判例としてそれを容易に許さない。このバランスの崩れ方は裁判員裁判導入のひとつの要因になっており、裁判員裁判制度そのものの是非も問題になっている。

さらにその裏には、この小説のメインテーマとなる、残忍な殺人犯は残忍に殺されてもいいのか、という問いにつながる。この物語の白眉は、オカルティックな島の文化でも、ミステリ的な取り違えトリックでもなく、そこにある。

以下、かなりネタバレに付き、改行。

 

 

 

 

この物語を本格推理小説として見た場合、探偵役は主人公の式部ではない。探偵ではないという意味で、式部は探偵事務所ならぬ、調査事務所を運営しているというところも象徴的。真の探偵役となり、すべてを明らかにするのは、式部から調査結果を聞いた“存在しないはずの少女”である。彼女は揺り椅子探偵のごとく、事件の真相を見抜く。

普通のミステリであればそこで「犯人はお前だ」をやって大団円となるのだが、この物語ではそこからが本番。彼女の裁きが始まるわけだ。そして、その裁きは彼女の守護としての性質に直結する。

犯人は元守護であり、守護の性質を持たなかった偽物という扱いだが、彼の行った事件は凄惨であり、快楽殺人の様相も見える。これは、彼が守護としての性質を持っていた証拠なのではないかと思う。そういう意味では、彼も偽物ではなかったのだろう。

こうして事件は現代ミステリの範疇で幕を閉じるのだけれど、オカルト/ファンタジー的には物足りなさが残る。あれだけ引っ張っておどろおどろしい文化を作り上げたのだから、思わせぶりな設定ぐらいは残しておいて欲しかったものだ。

たとえば、神領家の人々にとって、生まれてすぐに浅緋が守護であるとわかったのであれば、カイチの角ぐらいは生やしておくぐらいすべきだったんじゃないか。それでこそ、守護は人前に出ずという設定も生きただろうに。

敢えて浅緋を普通の人間にしたのは、普通の人間である(読者の)あなたにも、残忍な復讐を望む気持ちがあるでしょうということを強調したかったのだろうか。 

 


[SF] パッチワーク・ガール

2013-11-30 11:07:22 | SF

『パッチワーク・ガール』 ラリー・ニーヴン (創元推理文庫)

 

古本消化。

ちょっとまえに、twitter界隈で盛り上がっていたミステリとSFの違いについての議論でも紹介されていた、ラリー・二ーヴン著作のSFミステリー。

月面に面する高級ホテルで、地球の外交官がレーザービームで狙撃される。一命を取り留めたものの、月社会においては殺人未遂は殺人と同等の臓器移植刑送り。

容疑者はその時間に月面に出ていた唯一の存在である、地球出身の美女。彼女の嫌疑を晴らすため、地球の警察官僚である主人公が、超能力を駆使して捜査に挑む。

超能力とは言っても、SFミステリの文脈で紹介されているように、なんでもありの能力ではなく、どちらかというとストーリー上で捜査を簡略化するための透視能力程度。要するに、遺留品探しのため。

ミステリのネタ自体は、古典的な謎解きものでもありがちなものなので割愛。というか、この物語の主眼はそこには無いのではないかと思う。

タイトルの“パッチワークガール”の意味が明らかになる終盤以降がSFとしては本番。

死刑の是非は日本においても議論が絶えないが、この物語の未来設定では死刑の替わりに臓器移植が使われる。最終的には、心臓まで含めて提供して死んでしまうので、死刑にかわりはないが。

そして、過酷な月社会では臓器移植の需要が大きく、臓器移植刑の範囲は次第に大きくなり、殺人や強盗、強姦だけでなく、窃盗レベルでも臓器移植行き。さらに、裁判も簡略化され、どんどん臓器ドナーの供給へと回していく。

冤罪防止のために、6か月間の猶予期間があり、タンクの中で人工冬眠させられ、その間に疑いが晴れればという制度もあるのだが……。

制度というよりは運用に問題があると言い切れればよいのだが、確かに、これは無いよなと思わせるようなディストピア。未来の世界がこうならないように考えていくことは重要なことだ。そして、それを物語として語るのがSFの効用でもある。

「僕にはiPS細胞という武器がある!」と叫んだのはゴン中山だが、中山の現役復帰のためにも、こうしたディストピアの到来を防止するためにも、ES細胞やiPS細胞による臓器培養、臓器移植の実用化が望まれる。

 


[コンサ] 2013 J2 第42節 札幌 vs 北九州

2013-11-26 23:42:04 | コンサ

2013 J2 第42節 コンサドーレ札幌 0-0 北九州 @札幌ドーム

 

プレーオフ進出をかけての最終戦。どんな形であれ、勝てばプレーオフ進出が決定。相手は下位の北九州。お膳立てはすべて揃った。

……にもかかわらず、なんとも締まらない幕切れ。

 

この日はOB戦も開催され、ゴン中山や吉原コータのチームゴンと、ノノ社長やソダンのチームノノが対決。ごっさんや太田、田渕、村田と、オールドファンにも懐かしい名前が並んだ。

OB戦は中山、吉原のツートップを芳賀がマジアタックで潰し、曽田がギリギリでクリアするファンタジーを魅せるという展開。前半のみ出場の野々村(選手のため敬称略)も華麗なフリーキックを蹴ったりしたものの、結果は0-0のドロー。前半20分、後半20分、その間にハーフタイム20分(!)という短い時間だったが、なんでこれを放送しないというくらいの楽しい時間だった。

ゴンちゃんは最後に、「今日のトライアウトは失敗でした。でも、iPS細胞という武器がある」と言い残して去って行った。現役復帰はまだあきらめていないようだ。

 

さて、その後の本番の試合。札幌のメンバーは怪我人を抜いたベストメンバーの布陣。チョソンジンの代わりには櫛引が入ったが、特にDFラインに不安は無い。

選手を迎えるコレオグラフィーは、なんどもゴール裏メンバーがくどいくらいに説明しに回っていたが、河合キャプテンが芝生に入った瞬間に掲げるようにとのこと。

しかし、掲げていた最中はまったく何が見えていたのかさっぱりわからず。気を利かせて、場内ビジョンでちょっとぐらいゴール裏を抜いてくれても良かったのにと思う。浮かび上がっていたメッセージは「12.1→12.8」。プレーオフ進出へかける想いだ。

 

試合内容はあまり覚えていない。

札幌はパスが良くつながり、定番のサイド攻撃を何度も繰り出した。レコンビンの強烈なミドルシュートもあった。

しかし、ゴールは遠かった。

 

24000人を越えるサポータの祈りも届かず。試合終了。札幌ドームは静かにシーズンの終わりを迎えた。わずかなブーイング。まばらな拍手。北九州サポの歌声だけが響いていた。

シーズン終了セレモニーのため、試合後の選手の挨拶もなく、そのせいで、なんとも言いようのない雰囲気が流れた。

セレモニーも、財前監督の挨拶、野々村社長の挨拶、そして、サンクスウォークと、なんだか淡々と流れて行った気がする。でも、それは自分の気持ちの問題だけだったのかもしれない。他のみなさんはどんな印象だったでしょうか。

 

終了後はサッポロビール園に移動し、炎の宴に参加。なんと、ここでも野々村社長が登場。乾杯の挨拶だけで退場となったが、会場到着時からネクタイやスーツの裾を直しながら、背筋を伸ばして緊張した雰囲気だったのが印象的だった。もしかしたら、ブーイングを浴びることを覚悟していたのかもしれない。そうでなくても、最終戦の結果を踏まえ、サポーターの前にどういう顔で出ればいいのかと迷いがあったのだろう。そこで、第一声は「乾杯といっても、何に乾杯していいやら」。

しかし、サポーターの暖かい笑顔に迎えられ、最後はマイクスタンドを無意識に握りしめながら熱弁をふるった。開幕当初はここまで来る実力は無かった。強化費3億じゃ、正直言って勝てない。しかし、若い子たちが良く成長した。もっとうまくなる。来年はどんな形であっても昇格できるように。来年の昇格を祈念して、乾杯。

その後、ドーレ君も登場してのくじ引きがあったりなんだり。宴会後はビール園の売店でTシャツとジョッキを購入。いいおみやげになりました。この宴会が無かったら、試合終了のもやもやした気持ちのまま東京に帰ることになっていただろうけど、これで吹っ切れたような気がする。

 

まぁ、なんというか、最終戦だけを見るとなんだかなぁという試合だったけど、シーズン全体を観れば、期待以上のできだったのではないかと思う。特に、古田、河合、上里、最後の最後には深井までと、怪我で離脱する選手が多かったにもかかわらず、代役の若手選手たちが頑張ったことは素晴らしい。

シーズンを通して、決定機に決められない、勝てる試合に勝ちきれないという問題が露呈したものの、それは来年の課題とすればよい。今思えば、群馬、熊本のどちらかに勝ってさえいれば。下位チームに対してこそ全力で戦う。そのことを選手もスタッフも忘れないことだ。

 


[SF] 老人と宇宙5 戦いの虚空

2013-11-22 23:10:28 | SF

『老人と宇宙5 戦いの虚空』 ジョン・スコルジー (ハヤカワ文庫SF)

 

完結したと思っていた《老人と宇宙》シリーズが再開。さらにその続きかと思いきや、今度の主人公はハリー・ウィルスン。すかり忘れていたが『老人と宇宙』において、これまでの主人公だったジョン・ペリーと同時に志願した老人兵だ。タイトルも、これまでの名作もじりではなくなった模様。まさに新たなる出発と言える。

だいたい、地球やコロニー連合がこんなことになっているなんて、まったく覚えていない。背景説明には、そうだったんだっけと思ってしまうが、これまではコロニー連合中枢部の話は出てきてなかったんだっけ。

体裁は長編というより、短編連作。もしかしてと思ったが、やはりTVドラマ風の1クール13回を意識しているのだという。おまけに、電子書籍で毎週1話リリースとのこと。なかなかおもしろい企画だと思った。

そしてもちろん、企画以上に中身も面白い。

ハリーが所属するのは、Bチームの外交団。要するに、二軍。しかし、彼らが機転を利かせて難関を突破していく様は痛快である。ご都合主義な展開が多いとはいえ、これを読むと、外交とはどういうことか、あるいは、営業とは、コミュニケーションとはということを考えさせられる。

大使のアブムウェ、外交船船長のコロマ、そして、CDFからの技術顧問であるハリーの3人が互いに反発し合いながらも、最後は隠された陰謀を暴き、難事件を解決し、コロニー連合のピンチを救っていく。副大使のシュミット、地球の外交官ローウェンも含め、彼らの掛け合いも面白すぎる。

ひとつひとつのエピソードは短くて読みやすいが、それらの背景に流れる大きな陰謀が次第に姿を現してくる。

しかし!

なんと、その陰謀はまったく解明されていない。続くのかよ……。

 

 


[コンサ] 第93回天皇杯 4回戦 甲府 vs 札幌

2013-11-22 22:41:03 | コンサ

第93回天皇杯 4回戦 ヴァンフォーレ甲府 1-0 コンサドーレ札幌 @スカパー


天皇杯4回戦。しかしながら、J2でプレーオフ進出を掛けた大一番が4日後に控えているとあって、遠征メンバーは控え中心どころか、ほぼ完全なターンオーバー。最終戦に出場停止の砂川は先発だが、前田もレコンビンもベンチスタート。先発メンバーの平均年齢は札幌22.5歳、甲府29.3歳とのこと。若さで押し切れればいいのだけれど。

そして、試合の地は札幌どころか、甲府からも離れた南国熊本。これは甲府、というか、山梨サッカー協会のチョンボでスタジアムの予約がなかったせいとのこと。

案の定、中立地での平日ナイターということで前売り230枚。まるで罰則を受けた無観客試合のよう。しかも、スカパーでの放送開始が21時から。FootNikにでも行こうかと思っていたのだけれど、さすがにこれは断念し、おうち観戦。いったい、いつから熊本には時差ができたんだ?

解説は札幌の野々村社長、ゲストが甲府の海野会長。のっけから、どっちが遠いか自慢。

この両者の掛け合いが面白すぎ。崔誠根のミスに対し、海野会長の「崔かよ、チェっ」に始まり、審判の話、経営の話を試合そっちのけで語るかと思えば、チャンスやピンチの時には、「また後で」。

ノノさんの的確な解説と甲府社長のぼやきといった感じで始まったが、ノノさんも次第に社長の顔へ、そして、ただのサッカー好きおやじ状態に。

「なぜそれが止まらない」と松本酷評するは、パウロンに対しては「1試合出たら5試合休む」と散々な言いよう。前寛へは「まだ怖いものなし。これからサッカーが怖くなる」との評。本当に二人ともおもしろいわ。


試合内容としては、前半に札幌が決定的なチャンスを作るも、札幌は本当にこの一発だけ。

右サイドバックに入った前貴の突破から絶妙なクロスを横野がフリーで外す。

それでも、前半は札幌がボールを保持してパス回しができていたのだが、時間がたつにつれて、肉体的、精神的疲労からプレーが雑になり、どんどん自滅。

おそらくそこまでは想定通りだったのだろうが、後半勝負に入れた前田、古田、レコンビンの3人がまったくの誤算。怪我明けの古田が無理できないのはわかるにしても、前田もレコンビンも、本来のキレのあるプレーではなかった。

0-0のまま延長戦に突入したが、延長の前後半でも札幌はシュート数ゼロというダメっぷり。どの選手も、まともに走れていない感じだった。

札幌にとって天皇杯勝ち残りはある意味罰ゲームみたいなので、モチベーションが上がらなかったんだろうか。フェホよりも前田先発の方がよかったのだろうが、そうすると、最終戦に影響が出そうだし、難しい判断だったと思う。


この試合で注目のユース選手、前寛之は、最後は体力的に落ちたものの合格点。ボール奪取からの縦パスにはセンスあると思った。

阿波加も思った以上に落ち着いたプレーで、ミスらしいミスも無かったのは素晴らしい。相手のシュートミスに助けられたシーンもあったが、全体的には合格点なできだっただろう。

小山内はセンターバックでも問題なさそう。松本もセンターバックの練習をしていたので松本がセンターかと思ったのだけれど、この試合のプレーを見て納得。逆に松本はノノさんに怒られっぱなし。それも期待の裏返しだと思ってがんばれ。

あと、神田はもっとFK練習しような。


負けたのだけれど、若手選手だらけの布陣だったため、延長戦まで粘ったことは悔しいというよりは、よくやったという気分。こうやって天皇杯をある意味犠牲にしたのだから、最終戦ではきれいに勝ってプレーオフ進出を決めてもらいたい。

 


[SF] SFマガジン2013年12月号

2013-11-19 22:19:13 | SF

『S-Fマガジン 2013年12月号』 (早川書房)

 

今月号は「ジャック・ヴァンス追悼特集」。

ジャック・ヴァンスといえば、やっぱり『竜を狩る種族』ですかね。記事の中に浅倉久志さん訳の話が出てくるが、そうか、竜の名称は原文から浅倉さんが捻り出したものだったのか。言われてみれば、確かに、青面夜叉とか、原文にあるわけないな。

掲載作を読んでみると、なんというか古き良き時代のSFという気がする。小道具から文体まで、俺が中学生や高校生の頃に読んでいたような図書館の古びたハヤカワ文庫の匂いがする。内容的には新しいわけでも、科学的でもないけれど、寓話として読むにはとても楽しいお話しだと思う。特に、最後に意外とアンチ・ハッピーエンドなところもおもしろい。

そして、もうひとつの追悼特集が「追悼・金子隆一」。サイエンスライターとして、いろいろなところで活躍なさっていたけれど、その名前を直接意識することは少なかったように思う。学研の『恐竜世界のひみつ』も監修しているけれど、俺の愛読書は旧版の『恐竜のひみつ』だったからな。

『中生代のシー・モンスター』は情報整理の第一章だけの掲載で、面白い部分はこれからのようだった。これは今後出版されるかどうかわからないけれど、すでに刊行済みの著作を探してみようか。


○「世界捻出者」 ジャック・ヴァンス
妄想SF。この世界は誰かの見た夢。というありがちな話ではあるが、物語としての起承転結やどんでん返しがしっかりしていて、デビュー作とは思えない。

○「ミス・ユニバース誕生!」 ジャック・ヴァンス
バカSF。それぞれの異星人の“美”とは何かを考えると、ギャグでは終わらない深淵なネタ。とはいえ、やっぱりクスクス笑いながら読むべき。

○「暗黒神降臨」 酒井昭伸訳
天体SF。大気の無い植民惑星における農場消失を巡るミステリーが、ハードな天体SFに化ける瞬間の種明かしが素晴らしい。って、ネタバレ過ぎか。

○「ウンディ」 草上 仁
生物を奏でるという設定がとても詩的で美しい。しかも、それでバンド対決をやってしまうというあたりは、どうやって音楽を描写するかという面白さもある。

○「パリンプセスト〈後篇〉」 チャールズ・ストロス
ただのタイムパラドックスものかと思いきや、これまたスケールの大きな宇宙SFと人類の絶え間ない歴史へと広がっていく。さらにそこからのひっくり返しもすごい。タイムパラドックも含めたすべてのデータを記録した図書館という存在も、発想が飛び過ぎていて、想像もつかない。

 


[コンサ] 2013 J2 第41節 岐阜 vs 札幌

2013-11-18 23:59:59 | コンサ

2013 J2 第41節 FC岐阜 0-3 コンサドーレ札幌 @スカパー

 

いろいろあって、リアルタイム観戦不可だったので、ビデオで視聴。結果は東北道を移動中に車内で知った。とりあえず、勝ったことに安堵したと同時に、最終戦で勝てばPO進出という書き込みにはてなマーク。

いろいろ調べた結果、最終戦で長崎-徳島の組み合わせがあり、札幌が勝てば、どちらかは札幌の下になるらしい。これは考えていなかったので、とても嬉しい情報だった。これで、他チームの結果を気にしてやきもきする必要はなくなる。要するに、勝てばいいのよ。

そんなわけで、結果がすべてといった感じで、ビデオ視聴はそんなに真剣じゃなく、何度も寝落ちして、巻き戻しながら見た。でも、いつ堀米が入ったのかわからなかったけどな!


今節、札幌は前田とフェホが出場停止。深井が怪我で離脱。しかし、古田がベンチに復活といううれしいニュースも。

一方の岐阜は服部の引退記念ゲーム。岐阜は勝てば残留決定。そして、GKは元・札幌の高木貴弘。

初っ端から服部への歓声をかき消す札幌サポ。さすがのセレモニー・クラッシャーと言いたいところだが、今回に限っては、そんな余裕もない。ただ単に、他チームを気にしていられないというだけ。


試合内容としては、完全に押し込んでいたのでまったく問題なし。特に目立ったのはGK杉山の安定したセーブと、岐阜GK高木の不安定さ。高木って、札幌の正GKだったよな。しかも、割と安定している方だったように思うんだが。いつからこんなに劣化してしまったのか。

杉山も、すべての試合でこれぐらい安定していたなら、こんなに叩かれずに済んだのに。これまで第3GKとしての生活が長かったので、実戦に慣れるまでここまでの時間がかかったと考えればいいのか。でも、来年はホスンが正GKだろうし、曳地もいるし、どうなることやら。

得点シーンは、1点目がレコンビンのCKから上原のヘディングを高木がファンブル。2点目は逆側、砂川のCKからソンジンのヘッド、GK高木が弾いたところに内村。前半の早いうちに2得点を決めて、岐阜の試合プランを台無しにする。

後半になっても札幌の攻撃は止まらず。3点目は砂川のボール奪取からショートカウンターとなり、上原のクロスに内村がドンぴしゃヘッド。なかなか珍しい内村のきれいなヘディング。

三上がボールを治め、サイドに展開。そこから内村が裏を狙うという戦術は完成されており、多少のメンバー変更があっても、このレベルであれば圧倒できる。岐阜には失礼だけれどそれが事実。問題は、群馬や熊本相手になんでこれができなかったのかということだ。

後半にソンジンと内村が相次いで負傷退場したので心配していたが、ソンジンは軽い肉離れ、内村は足が攣っただけとのことで、どうやら最終戦には問題なさそう。

次の天皇杯はターンオーバー制で行くらしいので、選手的にもスクランブルは無さそう。ターンオーバー制で控え組と言っても、今節出場停止の前田とフェホがいるし、パウロンも復帰する。もしかしたら、古田も出場するかもしれない。残念ながら累積4枚で最終戦出場停止の砂川にも頑張ってもらおう。返ってワクワクするメンバーだったりして。

 

 


[SF] 死者の短剣 地平線

2013-11-12 23:56:02 | SF

『死者の短剣 地平線』 ロイス・マクマスター・ビジョルド (創元推理文庫)

 

湖の民ダグと、地の民フォーンのラブラブカップル(笑)が活躍するファンタジー・シリーズの完結編。

ダグの基礎継ぎの匠への弟子入りと、北部への帰還の旅。そして、その旅での悪鬼との戦いが描かれる。

上巻の話の流れでは悪鬼は出てこないのかと思いきや、下巻でとんでもない悪鬼が出現。しかし、それに対抗するフォーンたち地の民の戦い方もとんでもなかった。いや、よく見ると表紙の通りなんですが。いや、最終的に弓を持っている人が違うか。


フォーンの兄の結婚や、レモとバーのコンビのダブルナンパに、あっちでこっちで、くっついたり離れたりもあって、ついには悪鬼を倒したにも関わらず、フォーンに命の危機が!ってあたりが一番面白かった。女の嫉妬は怖いですね。

いや、これは女の嫉妬ではなく、人種差別、カースト差別のエピソードとして見るべきなのだが。特に、ダグは湖の民、地の民、さらには、川の民の融合と団結(とまでいかなくても協調)を目指しているのだし。

解説を読むまですっかり忘れていたのだが、湖の民はもともと騎士階層で、平民である地の民との間の階層差別は歴史的なものなのだよね。そして、戦争が終わって(悪鬼戦争は終わってないけど、悪鬼の出現はまばら)、仕事を無くしつつもプライドを捨てられない武家の立場というわけ。その背景が忘れ去られがちなので、湖の民がただの偏屈ものの集団に見えることもある。

シリーズ全体のテーマを考えれば、最後の最後で出現したニータという人物は民族融合を願うダグにとって、非常に大きなカギを握っているのだと思う。物語の中での位置づけとしては、これからダグの進む道の困難さの象徴といってもいい。

日本の幕末や中世の終わりごろには似たような話が合ったんだろうか。でも、工業化によって封建制度が終わり、近代戦争の始まりとなった現実の歴史に比べ、平和になったから武家階層の存在意義が薄れていったというのは、なんと牧歌的なことか。どこかの居留地が周囲を武力制圧し始めてもおかしくないと思うのだけれど。


で、結局、悪鬼や泥人、それに対抗する湖の民の出自は伝説で語られるだけで、その“SF的”な設定は詳しく語られずに終わってしまったのだけれど、個人的にはそのあたりをもう少し突っ込んで欲しい気がする。できれば外伝か何かで、太古の封建時代の崩壊と最初の悪鬼の誕生あたりを……。

 


[コンサ] 2013 J2 第40節 札幌 vs 神戸

2013-11-10 23:59:59 | コンサ

2013 J2 第40節 コンサドーレ札幌 1-0 ヴィッセル神戸 @スカパー


試練の上位4連戦の4戦目。先週の千葉戦はリアルタイムで見られなかったので、今回は万難を排してテレビの前に正座して観戦。

直前に京都がG大阪に敗れたせいで、神戸は自動昇格が決定。J2優勝を目指しての戦いに気持ちの切り替えが必要。これがいい方向に働くのかどうか。札幌がプレーオフ進出するためには、相手がどこであろうととにかく勝たねばならないので、他のチームはどうでもよい。

内村がイエロー累積で出場停止のため、宮澤がトップ下。さらに右にレコンビン、左に荒野。宮澤の替わりに、ボランチの位置に深井が復帰。宮澤、深井、レコンビンと、注目選手が目白押し。


試合は序盤こそ札幌が先手を取ったものの、やはり神戸のうまさにペースを握られる。しかし、神戸は前田の変則的なドリブルを止められず、ファールを連発。これでペースを崩し始める。

主審の池内明彦は、札幌戦でクソ判定を出しまくっているので警戒していたが、今日のジャッジは札幌優位に働いた。やっとホームディシージョンの意味を理解したようだ。

今日は札幌も意気込みが違うのか、いつもは少ないミドルシュートをガンガン打ちまくる。特に深井の豪快ミドルはすごかった。わずかに左に外れたけど、あれが入っていればワールドクラスの弾道だった。

そんなミドル連発の中で、河合のミドルが北本のハンドを呼び、PKゲット。さすがにクソ審判だけあって、微妙な判定だったけれどもありがたく受け取っておこう。

ここでPKを蹴りに行ったのは、なんとレコンビン。このPKを見事にサイドネットに突き刺した。さすが、ベトナムの英雄。

後半は動きの鈍ったレコンビンに替えて岡本、さらに、フェホ、榊の凸凹コンビを投入。勝ってる時のフェホの信頼感は凄い。とにかく、足が速いので相手DFがラインをうかつにあげられず、ボールを奪っても早いカウンターにつなげられなくなる。セットプレーでの跳ね返しも強くなるし、鬼に金棒状態。

神戸は焦りからか、プレーが雑に、荒くなり、池内のカードマジックの餌食に。ついにエステバンも退場。

最後の最後には、ゴールライン上での攻防もあったが、なんと杉山がこれを防いでセーブした瞬間にタイムアップの笛。なんともドラマティックな幕切れだった。

最終的には、シュート数20-10という大差を付け、1-0で札幌の勝ち。プレーオフ進出への望みをつないだ。


注目選手のうち、宮澤は攻撃では今一つ。最近、ボランチが多いので、FWの動きを忘れてしまったかのように、裏への動き出しが少なかった。マークが前田に集中する分、チャンスはあったはずなのだが、うまく生かせず。

レコンビンはPKを含めたプレースキックでさすがの精度を魅せるが、チームとして連動した動きがまだできていない感じ。一生懸命なのは伝わってくるので、もうちょっと時間が欲しい。お立ち台での「コンニチハ」は伝説になるかも。

久し振りの深井はすごかった。本当にルーキーかと思えるほど落ち着いていて、視野が広い。ボランチとしては、同じルーキーの堀米も新人離れしているが、さすがに器の大きさが違う気がする。これでなんと、1995年3月生まれはチーム最年少のようだ。

一番目立っていたのは前田。変則的なドリブルと、訳の分からないループシュートで味方のサポも煙に巻くほど。天才なのか変人なのか、あいかわらずよくわからないが、神戸にとっては最大の脅威になっていたようだ。


さて、上位陣との4連戦が終わって、3勝1敗と勝ち越し、プレーオフ進出の可能性は十分残された。残り試合が岐阜、北九州ということを考えると、これからつぶし合いを残している他チームに比べれば優位と考えてもいい。しかし、この4連戦の前に熊本、群馬と連敗したことが痛すぎる。まさに、強きをくじき、弱きを助く状態。まさか、次も岐阜を助けるなんてことはないだろうな……。