神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] ガンパレード・マーチ2K 新大陸編

2013-01-29 00:03:39 | SF

『ガンパレード・マーチ2K 新大陸編』 榊涼介 (電撃文庫)

 

ラノベで今でも読み続けているシリーズといえば、すでにこれぐらいになってしまった。まぁ、1年間積読状態だったわけだけれど。(ほかにもブギーポップが塩漬けになってるw)

“ガンパレード・マーチ”の何が一番いいかと言うと、戦争が適度に悲惨であり、悲壮であること、なんだろうか。今回も数百人単位の民間人やら軍人が一気に神に召され、最終的な犠牲者は300万人に及ぶとされる。

そんな悲壮な戦争の中でも、精神のバランスを取るためと称する意図的なラブコメや、もふもふが、冷たいアイスクリームに添えられたウェハースのように感じられる。

悲壮な小説と言えば、秋山瑞人とかがいるけれど、あれほどじゃなくて適度な悲壮感が長く付き合える理由とでもいうべきか。

今回の舞台は遂に北米大陸上陸。幻獣戦争も最終局面かと思いきや、北米の王(王女?)は狂言回し的に出てきただけで、まだまだ続くらしい。最終話でもシアトルでイルカと遊んでるくらいだから、まだ帰ってこないんじゃないか。それどころか、紅陵女子組とかも合流しちゃったしな。この後が大決戦なのかも。

唯一不満と言えば、遠坂、田辺、田代が出てこないこと。彼らも5121小隊に復帰しないものかね。新キャラもいいけど、もう覚えられませんよ。浅井でさえ、「誰だっけこいつ」って感じだったので。

米軍のエリートたちが人種差別的で脳味噌筋肉なのもちょっと気になるが、これはこれまでの日本軍も同様なので、そういうものだとしか。5121や、その周囲に集まる変人たち(アミーゴ中佐もかなり変人)の有能さを強調する演出なのだね。

今回の目玉は幻獣占領地のど真ん中で民間人1万5千人の救出作戦。そういえば、ガンオケのゲームで一番苦手だったよ、救出作戦。自分は無傷でも、いつの間にか現れた幻獣に輸送車がフルボッコとか。レイクサイドヒルはまさにそんな感じで、ガンオケの経験が蘇って、またゲームがやりたくなった。でも、うちのPS2壊れたまんまなんだよね。やっぱり、PS2本体買う?

 


[SF] この空のまもり

2013-01-28 23:25:27 | SF

『この空のまもり』 芝村裕吏 (ハヤカワ文庫 JA)

 

仕事でAR(拡張現実)系の話が出るたびに、ニール・スティーブンスンやらその手のSFのことを思い出し、そういえばこんな話が合ってね……なんてことを口走ったりするのだけれど、これもそのひとつになりそう。

拡張現実(作中では強化現実)で視界のいろいろな場所、いろいろなレイヤーにタグを張り付けられるようになった近未来。いわば、2chの世界が現実化したような騒がしい世界。

そして、そこで繰り広げられる外国勢力 vs ネトウヨ・嫌韓・嫌中な人たちのバーチャルな攻防。それはついに現実世界で爆発する。その中で、現実ではニートで引きこもりなネットの国防大臣や、小学生や大学生や校長先生の行動が“愛国心”とは何かという問いを読者に投げかける。

本当の現実で発生している反日デモや嫌韓嫌中デモを題材に、現実を嗤い、そんなデモに踊らされる人々を諭し、正しく国を愛することをテーマに描いた小説。とはいえ、説教くさいわけではなく、主人公の考え方にみんなが共感してくれればいいと思えるくらいのもの。

大切な人を守ることがまず第一。そして、その人の周りを守ること、その人々の周りを守ること。そうやって、守る対象が、家族へ、地域社会へ、地方自治体へ、国家へとつながっていく。ひとを愛することの延長戦上に愛国心があり、国のために人がいるわけではない。この考え方に基づけば、人種や国籍を越えて、ひとの繋がりによる愛国心というものが、自然と見えてくる。

唐突だけれど、実はJリーグのサポーターはこの考え方が非常にしっくりくるんじゃないかと思う。Jリーグの、おらが街のチームがあって、日本代表がある。決して、日本代表のためにチームがるのではない。この考え方って、どちらかというと少数派かもしれないんだけれどね。


著者の芝村裕吏はガンパレード・マーチの、あの人。

相変わらずシバムラをやっているのか、尊大不遜な奴で、その態度はあとがきでも見られる。そして、SFマガジンのインタービューの方がさらに顕著。こうすれば売れるんでしょ、こうすれば面白いと思うんでしょ、という態度を微塵も隠そうとしないところがすごい。普通はそういうものは見えないよう隠しておくものだろうに。ちょっと醜悪だよ。

そうは言いつつも、最終的には、最後の演説に涙せずにはいられないあたりが、わかっていながら落とし穴にはまるみたいでくやしい…!でも…感じちゃう!

 


[SF] 影の王国

2013-01-26 23:54:21 | SF

『影の王国』 ロイス・マクマスター・ビジョルド (創元推理文庫)

 

ビジョルドで創元で推理文庫レーベルなので、てっきり《死者の短剣》の続きだと思って買ったら、こっちは《五神教》シリーズの続編だった。とはいっても、前作とは時代も国も違う話。時代も、前作より前なんだか後なんだか。

どんな話だったかすっかり忘れていたけれど、5本指になぞらえられる五柱の神様はなんとなく覚えてた。特にお葬式のシーンは「そうそう!」という感じ。

しかし、この物語では五神教は渡来の新教。もともとあったアニミズム的精霊を、征服者が連れてきた五神教が駆逐してしまい、人々が征服者を押し戻した後でも五神教がこの地に根付いてしまったという設定。しかし、そこで強大な力を手に入れようとした王子が過去の精霊をこの世の中で呼び戻してしまう。

宗教戦争は現実世界でも数々あるが、それ以上にこうやって宗教が混合していくことも多い。日本でも神仏習合だし、キリスト教も耶蘇教となってカトリックとは似て非なるものになっていった。現代でも、南米やアフリカのキリスト教は現地の古代宗教と融合して訳の分からないことになっているらしい。そういう融合の過程の話としても面白いが、その過程で神々が精霊を敵視しないところが興味深い。これは五神教が絶対神を持たないことにつながるのだろうが、おそらくキリスト教徒であるビジョルドがどうしてこういう宗教をモチーフにしたのかというところが、実に興味深い。

神々に支配された人々の中で、精霊たちが果たすべき使命を神々が手助けする。ちょっと見方を変えると、既存の宗教への批判とも取れるわけだ。

それはさておき、宗教的な使命を果たすために命を懸けた男女二人の出会いと恋の物語でもあるし、荘厳な神話の結末でもあるわけで、何も考えずにビジョルド的ファンタジー世界に浸る心地よさを感じた。

そういえば、今回の主人公は珍しくおっさんじゃないとのことだったが、設定上の年齢はさておき、なんだか老成したおっさんぽかったと思うけどな。

 


[SF] 宙の地図

2013-01-26 23:11:51 | SF

『宙の地図』 フェリクス・J・パルマ (ハヤカワ文庫 NV)

 

全世界でSFファンの裏をかき、度肝を抜いた『時の地図』の続編が出た! しかも、正統な続篇。あの人もこの人も健在。そしてなんと、主人公はH.G.ウェルズ本人だ。

前作の『タイムマシン』ネタに続き、今回は『宇宙戦争』ネタ。しかし、この『宇宙戦争』は、我々が知っている『宇宙戦争』とはちょっと違う。それもまた伏線だったとは。

リチャード・アダムス・ロックなんていう知る人ぞ知る実在ネタも、ちょっとだけ違う『宇宙戦争』も、極地の穴から“地底旅行”も、南極に住んでいる白熊も、とにかくマニアな人ほど喜んで騙される。どこからどこまでが歴史的事実で、どこからが捻じ曲げられた歴史なのか、思わずwikipediaで確認しにいってしまうほど。

そして、この地底旅行がまたすごい。今度はベルヌなのかと思いきや、なんと極地の穴まで到達できずに遭難。そこに襲い掛かる化け物。なんだこの“物体X”! 気付いた時には大笑いですよ。

しかしながら、遂に始まってしまった宇宙戦争は悲惨な敗北への道を転がり始める。いったいどうした、このまま終わってしまうのかと思ったところでの、あっと驚く大逆転。そうだよね、『時の地図』の続編だし。

騙されたことで爽快になれる作品なんてそうないのだけれど、これはある意味そういう話。いろんな小ネタが伏線として線につながっていくところは本当に気持ちがいい。

そして、もうひとつ特筆すべきは、物語への想い。エマの祖母から3代伝わる“宇宙の地図”に象徴される、物語の力。著者が本当に伝えたいことはこれなのかもしれない。ひとを喜ばせ、勇気づけ、時にはつらい現実から目をそらさせ……。

いけ好かないマリーが、最後にエマの心をつかんだのも、この力があってこそ。

生きるために切実に物語を必要とする人々は少なくない。そして、物語の力を信じる人々も少なくない。だからこそ、こうやって物語は生まれ、読まれ、伝わっていく。

物語の力を信じる人々に幸いあれ。

 


[映画] LOOPER

2013-01-17 23:37:15 | 映画

LOOPER/ルーパー - goo 映画


(C)2012 LOOPER DISTRIBUTION, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

 

タイムトラベルとサイキック。個別のネタはオーソドックスなのだが、そういう組み合わせをするのかと感心した。予告編を見ただけでは、この結末は想像がつかないだろう。だって、サイキックの話が出てこないからな!

まず最初に、LOOPERの役割を聞いたとき、そんな仕事をする奴はいないだろうと思った。なにしろ、自分の寿命が決まってしまうのだから。しかし、その後の描写の中で、生きるか死ぬかの子供時代が示唆されると、その中では確かに、LOOPERが救いの道に見えるのかもしれないと納得した。そのあたりの葛藤が、もう少しちゃんと描かれていたら良かったかもしれない。

青年のジョーは、寿命を生きた壮年のジョーを自分の分身に思えないのは当然だ。なぜなら、青年ジョーは、まだ何もいい思いをしていないのだから。一方で、壮年ジョーは青年ジョーを守る必要がある。なぜなら、好むと好まざるとにかかわらず、自分の過去であるからだ。

現在の状況が未来から来た男の過去に影響する。未来から来た男にとって、過去は“可能性”に過ぎない。これはちょっと《センス・オブ・ワンダー》を感じる設定だった。しかも、これを伏線としてちゃんと描写してある。スタッフがちゃんとわかっている証拠だ。

しかし、青年だろうが壮年だろうが、主人公のジョーがなかなか感情移入しにくいキャラだったせいで、ドキドキ感がいまいち。

そして、ラストシーンで、なぜ彼がそうしたのかということを考えると、なかなか腑に落ちない。あれだけ利己的な男が、なぜ。

そもそも、壮年ジョーの目的が、黒幕を少年時代に殺す(ターミネーターですな)ことではなく、妻を殺させないということなのであれば、ラストシーンの解決策は彼自身が気付いても良かったと思うのだけれどね。

俺としては、倫理よりも論理の方から彼ら二人の行動を読み解こうとしてしまい、いまいち納得できないのだけれど、あれは単なるナルシズムとヒロイズムによる自己犠牲と解釈している人が多いんだろうか。

でも、いろいろ考えると、あれはまだ見ぬ未来の妻を救ったのでも、世界が悪魔に支配されることから救ったのでもなく、目の前の子どもを悪魔にすることから救うためだったと思うんだよね。その考えの中に、未来の愛する人などいなかったはず。

そんな感じで、論理としては理解はできるけれども、いまひとつカタルシスの無い結末で、不完全燃焼な気がする映画だった。

 


[SF] SFマガジン2013年2月号

2013-01-17 23:07:31 | SF

『S-Fマガジン 2013年2月号』 (早川書房)

 

特集「日本作家特集」。

毎年この時期には恒例の特集だが、今回は有名どころが入っておらず、新進作家のみ。

直木賞候補になって出世頭となった宮内悠介。日本SF大賞ノミネートの樺山三英。さらに、創元短編賞出身のオキシタケヒコに、電子書籍自費出版で注目を浴びた藤井太洋。

いわゆる第6世代にあたるのかもしれないが、すっかり世代交代? いやいや、まだまだって感じですか。年間ベスト級というにはちょっと物足りない気が。

それにしても、新人作家がどんどん出てくるなぁ。新生ハヤカワSFコンテストからどんな作品が生まれるのかも期待したいところ。


○「コラボレーション」 藤井太洋
 新たな生命の始まりなのか、セカイの終わりの始まりなのか。なかなか実現しないSF的未来が多い中で、このテーマはだけは、すぐにでも実現しそうな近未来へ近づきつつある気がする。

○「エコーの中でもう一度」 オキシタケヒコ
 近未来技術小説。これは明日にでも実現しそうな未来かもしれない。

○「ハドラマウトの道化たち」 宮内悠介
 こちらは今ここにある現実、と言われても納得するかもしれない。この短編シリーズは印象的なシーンが続くが、最終的にどんな絵が見えてくるのか、実はよくわかっていない。短編集で出たら読み直そう。

-「無政府主義者の帰還」 樺山三英
 分載なので評価保留

○「クリストファー・レイヴン」 シオドラ・ゴス
 オーソドックスなゴーストストーリー。少女漫画にありそうな感じ。

 


今年の抱負

2013-01-17 22:55:43 | つぶやき

こちらでは、あけましておめでとうございます。

しばらく放置してましたが、なんとかせにゃーと思って戻ってきました。

近況はtwitter(@kats_takami)にポチポチと書いているので、こっちはやっぱり感想文用ですかね。

 

とりあえず、今年の正月のまとめ。

・ 初夢はボルダリングしてる夢。なんとかゴールして、飛び降りようと思ったら、下は断崖絶壁の海岸だったうわあー!

・ 上川神社のおみくじは大吉だった。「縁談多くて困る」とかw

・ 1/3の雪は困ったというより笑った。もう笑うしかねー的な状態。1/4を有給休暇にしておいてよかったと思った。

・ 実家ではひたすら大雪地ビール飲んだ。足りなくなってイオンまで買いにいったくらい。ちなみに、イオンまで徒歩3分。

 

ということで、今年は、ボルダリングと縁談頑張ります(笑)

あと、ビールは輸入ビールから日本の地ビール漁りに変更ですかね……。

 

あー、ボルダリングの今年初登りでは、同行者2名が負傷という残念な結果になりました。みなさん、準備運動は大切ですよ。あと、落ちるときは受け身で。受け身チョー重要。