★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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パーフェクトシティ(6)

2022年04月05日 | 短編小説「パーフェクトシティ」

 さわやかな「ユキ」の声が車内に静かに響いた。
「では、発車します。詰め所への到着時刻は、今から約15分後、21時28分頃になります」
 声が終わり、一呼吸おいてから自動車はヘッドライトも点けず静かに動き始めた。
 運転している「ユキ」は、市を一括管理しているシティコンピューターと連結しているため、車や歩行者など全ての道路状況をデータとしてリアルタイムに把握している。そのおかげで、ヘッドライト等で前方確認をする必要がないのだ。
 ただ、万が一の場合に備えて、車には人が操作するハンドルやヘッドライトは付いている。しかし、俺は運転免許を取得した時以来、一度もハンドルに触れたことはないし、夜間、ライトを点けて走っている車を見たこともない。自動運転が始まってから、事故は一件も起きていない。完璧な交通管理システムだ。
 座り心地の良いシートに安心しきって身を任せた俺は、いつもより暗い夜景を見ながらつぶやいた。
「あれからもう100年以上も経つのか・・」
 俺を乗せた車は、徐々に加速していき、やがて闇の中へ吸い込まれていった。



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