★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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パーフェクトシティ(7)

2023年02月09日 | 短編小説「パーフェクトシティ」

 西暦(AD)2250年、画期的な薬「IM-X」が発明された。
 人類が誕生して以来、永遠の夢だった”不老薬”だ。
 この「IM-X」の効果はまさに驚異的だった。
 古来より不老不死と呼ばれる薬は山ほどあったが、実際には年をとらない薬など存在しなかった。
 しかし、この「IM-X」は違っていた。
 人体に備わっている老化(成長)システムを完全に阻害し、老化しなくなるという仕組みの薬で、飲み始めた日から一切年を取らなくなる。
 若返るわけではないが、若い人は若いまま、高齢の人は高齢のまま、子供は子供のまま、一日一錠「IM-X」を飲み続けるだけで永遠に同じ姿で生きていける。
 勿論、物理的なケガを負ったり大病を患ったりすれば普通人と同じように死が訪れるが、健康でいる限り年をとらず永遠に生き続けることができるのだ。
 年を取らない永遠の生命という人類が太古の昔から追い求めた究極の夢の薬だ。
 しかも、値段が誰でも手軽に買えるほど安価だった。
 おかげで、全世界に爆発的に広がっていき、瞬く間に人類そのものの老化(成長)が止まった。
 その結果、どうなったか・・死ぬ人が減ったのだから人口が増加するように思われたが、蓋を開けてみると人類は急激に人口を減らしはじめ、滅亡へと転げ落ちていった。
 不老薬「IM-X」により死の恐怖から解放された人々は、生きる気力を失った。
 死という期限を自ら取り払った人間は今日やるべきことをやらなくなった。
 結果として、経済が停滞し社会活動が止まってしまった。人類全体が鬱状態に陥ったのだ。


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