★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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街のカラス(6)

2009年09月08日 | 短編小説「街のカラス」
 さっきまで大声で泣いていた女は、狸のようなメイクになった顔をレースのハンカチで拭きながら、キョトンとした目つきで壷を見つめた。
 「陰陽のバランスが取り戻せると、彼氏が戻ってくるかもしれませんね」
 ラメの紫服男がさりげなく言った一言に、女はピクリと動いた。
 「お・お幾らかしら?」
 女は左手で顔のハンカチを押さえたまま、右手でハンドバックの中の財布を探し始める。
 「そんな・・お金なんていりませんよ。悪徳霊感商法じゃあるまいし・・・、まあ、ただで差し上げるのもなんですから、お貸しするということでいかがでしょうか。どうぞお持ち帰りください。」
 女のハンドバックを探る手が止まった。
 「え、、よろしいんですの?」
 「はい。ただ先ほどお話したように、この壷は気を溜めるだけなんです。ですからやがては気でいっぱいになり溢れてきます。そうなりますと、もう壷は役に立たなくなります。」
 「はぁ・・」
 「ですが、ご心配は無用です。その時は、またこちらにお持ち下さい。新しい壷と交換いたしますので。お持ちいただいた古い壷は、道師さまが念を送り、いっぱいになった余分な気や邪気を浄化させ、また使えるように精錬します。」
 「そうなんですか・・」


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