「腑抜け」とはこういう状態なのだろう。
さて、いったいどこから、何から書けばいい?
そうだ、まずは結論だ。
13日水曜日。朝7時56分ごろ。ユウキが逝った。
最期を母と私で看取った。
ユウキの具合が顕著に悪くなってから、
私は夜に、弟は朝の出勤前に、ほぼ毎日のように実家へ寄っていた。
ユウキが逝く2日前、11日月曜。
私は不甲斐なくも体調を崩してしまい、7度8分の発熱。
ちょうど年度改めの総会が続く最中で、仕事を休む訳にもいかず、
熱で痛む身体をひきずり行った。
もちろん、熱のあることなんて、おくびにも見せない。
案の定のトラブルが二つ、三つ発生し、休まず無理して出て大正解~~。
ヤレヤレ、やれやれ、ヤ~レヤレ!
月曜日、仕事はこなしたが、流石の私も、実家へ向う気力も体力もわかず、
ユウキのことが気にかかったが、その日は倒れこんで眠った。
12日火曜の朝。
「ユウキが一晩じゅう吐血、もう危ない」と父から携帯電話にメールがあった。
水曜日は休むと決めて、その日も乗りきる。
仕事を終えての夜8時。
実家へ向ったが、灯りはついているものの1階には誰もいない。
ユウキのいる2階に父も母もいて、二人はユウキを囲むように座っていた。
ユウキは目を開いたままフローリングの床に横たわっていた。
「ユウキ、ユウキ?」呼びかけると目だけがくるりと動くが、
もはや意識はない。無意識に吐血し、音だけに反応している。
「ユウキ……」そのあとは言葉にならず、堪えきれずにただただ号泣する。
8日金曜の夜、トリのささみを食べて、いくぶん元気な頃の目の耀きをみせていたが、
思えばそれがユウキの命の最期の耀きだったのだ。
時折意識が戻り頭をもたげて起き上がろうとするが、
もうその体力は残されておらず、虚しく足が床を掻く。
父のベッドが大好きだったので、ユウキをその上へ横たわらせ見守った。
ずっと起きていようと思ったが、つい睡魔に襲われ寝入ってしまう。
はっと気が付くと上半身がベッドからずり落ちているユウキ。
慌てて持ち上げて元に戻すが、そのあとまた同じようになったらしく、
コツンという音で目がさめると、
目をあけたままのユウキが、縫いぐるみのように床に落ちていた。
「ユウキ、大丈夫?」呼びかけるも反応はない。
朝になり、ユウキの呼吸は早く浅い。
ユウキの様子を見に出勤前に弟が立寄った。
ユウキは仔猫のとき、父と弟がゴルフレンジでもらってきた。
もうあまり音にも反応せず目も動かさなくなったユウキが、
弟の声に反応し目をクルッと動かす。
ユウキがまだ毛糸玉のような仔猫のころ、弟はユウキと一緒に寝ていた。
そっと瞼をぬぐう弟。ユウキと二人にしてあげた。
出勤する弟を見送ったすぐあと、
2階へ戻るとユウキは頭をぐっとのけぞらせていた。
「ユキ!!」。
一瞬、誰もいない間に逝ってしまったかと思った。
私はまだ階下で弟を見送っていた母に
「お母さん!ユウキが逝ってしまった、早く来て!!」と叫んだ。
だがまだユウキは幽かに息があった。
でも、やがて舌を突き出し、またのけぞりはじめてしまい、それを見た母は、
「ゴロウも最後はこうだった、もうだめだわ……、ユキ、ユウキ…」と涙声。
そして瞳孔を大きく開いて、ユウキは逝ってしまった。
「ユキ、ユウキ…」と泣きじゃくる母の肩越しには、幼い女の子が見えるよう。
思えば17年間、ユウキは母が大好きで、いつも母の後を追いかけ傍にいた。
私も彼が大好きだったのにね。
15日金曜日。
埋めたくもなかったし、燃やしたくもなかったが、
小さな骨壷にユウキは納まってしまった。
S・キング「ペットセマタリー」の主人公の気持ちがリンクする。
さよなら、ユウキ、大好きなユウキ。
ずっと忘れない。
お言葉ありがとうございます。
やさしい心根の息子さんですね。
17年といえば、生まれた赤ん坊が高校2年生になる歳月。私たち子供が巣立っていき、猫と一緒に暮らしてきた両親にとって、「猫はかすがい」だったようで。
泣くだけ泣いた母はあっけらかん、その反対にぐっとこらえていた父は、PCのなかのユウキやゴロウの画像に、いまだ目を潤ませています。