俳句日記/高橋正子

俳句雑誌「花冠」代表

9月15日(土)

2012-09-15 06:41:52 | Weblog
★萩のトンネル真上ぱらぱら空があり  正子
白や紅の萩が真っ盛りでトンネル状になっている.。見上げるとその隙間より青空が見える。その隙間の青色と萩の花がこぼれてきたりと、いい景色に満たされています。(祝恵子)

○今日の俳句
箱の荷の泥付き芋は地方紙に/祝恵子
届いた箱の荷を開けると、地方紙にくるまれた畑から掘り起こしたばかりの泥つきの芋が入っている。地方の便りも、合わせて届き、懐かしい思いだ。(高橋正子)

○数珠玉

[数珠玉/横浜・四季の森公園]

★数珠玉や歩いて行けば日暮あり/森澄雄
★数珠玉や家のまはりに水消えて/岸田稚魚
★じゅず玉は今も星色農馬絶ゆ/北原志満子
★数珠玉や流れの速き濁り川/天野美登里
★数珠玉の数珠の数個をポケットに/山内四郎

数珠玉を見るようになったのは、愛媛に住むようになってからである。この、どこにでもある数珠玉を高校時代までは見たことがなかった。知らないかったと言えばそれまでだが、数珠玉があれば、子どもたちはそれを集めて糸を通して遊ぶはずだが、そんな遊びはしたことがなかった。秋の初め野川と呼ばれるような川縁にある。初めは緑で指で潰せば潰れそうな未熟な実も、熟れると、つやつやと固くなって黒っぽい灰色の独特の色になる。大人でも、数珠玉があれば、用もないのに採りたくなる。

★数珠玉よ川にも空が映るなり/高橋正子
★数珠玉を採ってしばらく手のうちに/〃

 ジュズダマ(数珠玉、Coix lacryma-jobi)は、水辺に生育する大型のイネ科植物である。インドなどの熱帯アジア原産で、日本へは古い時代に入ったものと思われる。一年草で、背丈は1m程になる。根元で枝分かれした多数の茎が束になり、茎の先の方まで葉をつける。葉は幅が広い線形で、トウモロコシなどに似ている。花は茎の先の方の葉の付け根にそれぞれ多数つく。葉鞘から顔を出した花茎の先端に丸い雌花がつき、その先から雄花の束がのびる。雌花は熟すると、表面が非常に固くなり、黒くなって表面につやがある。熟した実は、根元から外れてそのまま落ちる。なお、ハトムギ(C. lacryma-jobi var. ma-yuen)は本種の栽培種である。全体がやや大柄であること、花序が垂れ下がること、実がそれほど固くならないことが相違点である。
 脱落した実は、乾燥させれば長くその色と形を保つので、数珠を作るのに使われたことがある。中心に花軸が通る穴が空いているので、糸を通すのも簡単である。実際に仏事に用いる数珠として使われることはまずないが、子供のおもちゃのように扱われることは多い。古来より「じゅずだま」のほか「つしだま」とも呼ばれ、花環同様にネックレスや腕輪など簡易の装飾品として庶民の女の子の遊びの一環で作られてきた。秋から冬にかけて、水辺での自然観察や、子供の野外活動では、特に女の子に喜ばれる。
 イネ科植物の花は、花序が短縮して重なり合った鱗片の間に花が収まる小穂という形になる。その構造はイネ科に含まれる属によって様々であり、同じような鱗片の列に同型の花が入るような単純なものから、花数が減少したり、花が退化して鱗片だけが残ったり、まれに雄花と雌花が分化したりと多様なものがあるが、ジュズダマの花序は、中でも特に変わったもののひとつである。まず、穂の先端に雄花、基部に雌花があるが、このように雄花と雌花に分化するのは、イネ科では例が少ない。細かいところを見ると、さらに興味深い特徴がある。実は、先に“実”と標記したものは、正しくは果実ではない。黒くてつやのある楕円形のものの表面は、実は苞葉の鞘が変化したものである。つまり、花序の基部についた雌花(雌小穂)をその基部にある苞葉の鞘が包むようになり、さらにそれが硬化したものである。この苞葉鞘の先端には穴が開いており、雌花から伸び出したひも状の柱頭がそこから顔を出す。雌花は受粉して果実になると、苞葉鞘の内で成熟し、苞葉鞘ごと脱落する。一般にイネ科の果実は鱗片に包まれて脱落するが、ジュズダマの場合、鱗片に包まれた果実が、さらに苞葉鞘に包まれて脱落するわけである。実際にはこの苞葉鞘の中には1個の雌小穂のほかに、2つの棒状のものが含まれ、苞葉鞘の口からはそれら2つが頭を覗かせている。これらは退化して花をつけなくなった小穂である。したがって、包葉鞘の中には、花をつける小穂(登実小穂)1つと、その両側にある不実の小穂2つが包まれていることになる。これら雌小穂と不実の小穂の間から伸びた花軸の先には、偏平な小判型の雄小穂が数個つく。1つの雄小穂にはそれぞれに2つの花を含む。開花時には鱗片のすき間が開いて、黄色い葯が垂れ下がる。


◇生活する花たち「藻の花・萩・百日紅」(鎌倉・宝戒寺)

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9月14日(金)

2012-09-14 05:02:09 | Weblog
★青林檎ときに稲妻差しきたる  正子

○今日の俳句
薄の穂切りて野の風持ち帰る/黒谷光子
風に吹かれている野の薄の穂を切って持ち帰ると、さながら、野の風を持ち帰るようだ、という。穂芒の姿に野の風が見える。(高橋正子)

○唐辛子

[唐辛子/横浜日吉本町]

★唐辛子男児(おのこご)の傷結ひて放つ 草田男
男の児は、手足に傷などよく負うものだ。 膝でも擦りむいたのだろうか、包帯をして、また遊びに行かせた。唐辛子が熟れるころは、「天高し」ころ。気候もよく、男児はことに日暮れ際までよく遊ぶ。ぴりっとした唐辛子の可愛さは、また男児の元気な可愛さに通じる。(高橋正子)

★青くても有べき物を唐辛子 芭蕉
★鬼灯を妻にもちてや唐がらし 也有
★うつくしや野分のあとのとうがらし 蕪村
★寒いぞよ軒の蜩唐がらし 一茶
★雨風にますます赤し唐辛子 子規
★赤き物少しは参れ蕃椒 漱石
★一莚唐辛子干す戸口かな 碧梧桐
★辛辣の質にて好む唐辛子 虚子
★誰も来ないとうがらし赤うなる 山頭火
★唐がらし熟れにぞ熟れし畠かな 蛇笏
★秋晴れやむらさきしたる唐辛子 夜半
★戸袋の筋にかけあり唐辛 石鼎
★庭園に不向きな赤い唐辛子 鷹女
★唐辛子干して道塞く飛鳥びと 秋櫻子
★秋の日の弱りし壁に唐辛子 みどり女
★炎ゆる間がいのち女と唐辛子 鷹女
★てのひらに時は過ぎゆく唐辛子 不死男
★唐辛子わすれてゐたるひとつかな 楸邨

熟れた唐辛子は可愛い。店で唐辛子の実を束ねて売っているので、それを買い、しばらく台所に飾って楽しんでそれから使う。信之先生は、うどんには、七味唐辛子でなく、この赤い唐辛子を細く輪切りにしたのを入れるのが習慣だ。きんぴらには、辛いというくらい入れたい。すでに輪切りにした唐辛子を売っているが、それではなく、丸のままのを買って、鋏で丹念に切る。
農家には、どこの家の畑の隅に唐辛子を植えていた。熟れると茎ごと抜いて束ね。家の軒下など日陰に吊るして乾燥させた。沢山採れる家は、筵に広げて乾燥させたのだろうが、これは、見たことがない。父も、うどんにはこの唐辛子をたっぷりと入れて食べていた。七味ではない。
唐辛子のなかでも辛くない唐辛子がある。ピーマンも、ししとうも唐辛子の仲間である。父がまだ中年のころ、辛くない唐辛子といって、近所でははじめてピーマンを植えた。子どもにも食べれた。刻んで、油炒めで醤油の味付けだったと思う。唐辛子が食べれたと子どもながら自慢であった。そのせいか、いまでもシシトウや甘唐辛子が沢山手に入ると、油炒めで醤油、鰹節で佃煮のようにして食べる。これが、我が家では、娘にも人気でご飯がすすむ。

唐辛子のことで思い出したが、長野の小諸で花冠(水煙)大会をしたとき、伊那の河野斎さんが来られ、善光寺の名物の七味唐辛子をいただいた。そのとき、善光寺名物が七味唐辛子であることを知ったが、いい香りの七味唐辛子であった。河野さんは、伊那で歯科医院を営んでおられたが、偶然にも、三男のお嫁さんが、私の郷里の福山のご出身と聞いた。縁は異なもの不思議なもの、です。河野さんは急逝されたが、ご家族に林檎の木を残されて、その年の林檎の収穫のおすそわけをいただいた。お孫さんたちが俳句を作って花冠(水煙)に投句されていたので、お孫さんと、そのお母さんのお気持ちだと知った。唐辛子からひょんなところに話がずれたが、思い出したので、書き留めておいた。

★唐辛子真っ赤に熟れしをキッチンに/高橋正子
★唐辛子もう日暮だと子を呼びに/〃

 唐辛子(とうがらし、唐芥子、蕃椒)は、中南米を原産とする、ナス科トウガラシ属 (Capsicum) の果実から得られる辛味のある香辛料。栽培種だけでなく、野生種から作られることもある。トウガラシ属の代表的な種であるトウガラシにはさまざまな品種があり、ピーマン、シシトウガラシ(シシトウ)、パプリカなど辛味がないかほとんどない甘味種(甘唐辛子・あまとうがらし)も含まれる。トウガラシ属は中南米が原産地であり、メキシコでの歴史は紀元前6000年に遡るほど非常に古い。しかし、世界各国へ広がるのは15世紀になってからである。
 唐辛子が日本へ伝わったのは、16世紀後半のことで、南蛮船が運んで来たと言う説から南蛮胡椒、略して南蛮または胡椒とも言う。コロンブスは、唐辛子を胡椒と勘違いしたままだったので、これが後々まで、世界中で唐辛子(red pepper)と胡椒(pepper)の名称を混乱させる要因となった。現在世界中の国で多く使われているが、アメリカ大陸以外においては歴史的に新しい物である。クリストファー・コロンブスが1493年にスペインへ最初の唐辛子を持ち帰ったが忘れられ、ブラジルで再発見をしたポルトガル人によって伝播され、各地の食文化に大きな影響を与えた。ヨーロッパでは、純輸入品の胡椒に代わる自給可能な香辛料として南欧を中心に広まった。16世紀にはインドにも伝来し、様々な料理に香辛料として用いられるようになった。バルカン半島周辺やハンガリーには、オスマン帝国を経由して16世紀に伝播した。
 日本で栽培されているのは主にトウガラシだが、沖縄や伊豆諸島ではキダチトウガラシの品種の島唐辛子が栽培されている。トウガラシ属が自生している南米では、ウルピカなどの野生種も香辛料として使われる。「唐辛子」の漢字は、「唐から伝わった辛子」の意味であるが、歴史的に、この「唐」は漠然と「外国」を指す語とされる。英語では「チリ(chili)」または「チリ・ペッパー (chili pepper)」と言う。胡椒とは関係が無いにも関わらず「ペッパー」と呼ばれている理由は、ヨーロッパに唐辛子を伝来させたクリストファー・コロンブスがインドと勘違いしてアメリカ大陸に到達した際、唐辛子をインドで栽培されている胡椒の一種と見なしたためである。それ以来、トウガラシ属の実は全て「ペッパー」と呼ばれるようになった。沖縄県では島唐辛子や、それを用いた調味料をコーレーグス(コーレーグース)と呼ぶが、これは高麗胡椒の沖縄方言読みとも、「高麗薬(コーレーグスイ)」が訛ったものだともされる。唐辛子の総称として鷹の爪を使う者もいるが、「鷹の爪」はトウガラシ種の1品種である。


◇生活する花たち「チカラシバ・溝蕎麦・水引の花」(横浜下田町・松の川緑道)
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9月13日(木)

2012-09-13 03:17:50 | Weblog
★水澄むこと今朝より池に始まれる  正子
秋はものみな澄みわたる季節であり、池の水川の水も美しく澄んで来るのが秋です。朝起きて庭の池をふと覗かれた作者の感動が、力強く表現されています。すっきりとした季節感が伝わってきます。(河野啓一)

○今日の俳句
海見ゆる牧に草食む秋の馬/河野啓一
海の見える牧場。ゆったりとして草を食む馬との取り合わせに、新鮮味がある。(高橋正子)


○瓢箪

[瓢箪/東京・向島百花園]

★ありやうにすはりて青き瓢かな 涼菟
★花や葉に恥しいほど長瓢 千代女
★人の世に尻を居へたるふくべ哉 蕪村
★ひとりはえてひとつなりたる瓢かな 几董
★老たりな瓢と我影法師 一茶
★取付て松にも一つふくべかな 子規
★風ふけば糸瓜をなぐるふくべ哉 漱石
★吐せども酒まだ濁る瓢かな 碧梧桐
★露の蟻瓢の肩をのぼりけり 青畝
★あをあをとかたちきびしき瓢かな 蛇笏
★台風に傾くままや瓢垣 久女

私には弟がいて、男の子が喜ぶようなものとして、父が瓢箪と糸瓜を植えたことがあった。小型の瓢箪が沢山出来た。瓢箪の実から種を出さなければいけない。この種は水に瓢箪を付けて腐らせて出すのだと聞いたことがある。父がどのようにして種を抜いたか知らないが、いつの間にか、軽くなった瓢箪が家に転がっていた。おもちゃにした記憶はないが、なにかしら好ましい形で、我が家の瓢箪という感じだった。瓢箪は中にお酒を入れると艶よくなるそうである。瓢箪の好きなどこそこのご隠居さんは、お酒を含ませた布で毎日熱心に磨いているそうだと祖母が話していたこともある。最近は瓢箪集めという趣味も無くなってなっているのかもしれない、と思うと同時に、子供のころとは世の中が随分変わって来たのだと思う。昨年向島百花園に行ったときは、棚にうすみどり色のいい形の瓢箪が生っていた。

★瓢箪のさみどり色や向島/高橋正子

ヒョウタン(瓢箪、瓢簞、学名:Lagenaria siceraria var. gourda)は、ウリ科の植物。葫蘆(ころ)とも呼ぶ。なお、植物のヒョウタンの実を加工して作られる容器も「ひょうたん」と呼ばれる。最古の栽培植物のひとつで、原産地のアフリカから食用や加工材料として全世界に広まったと考えられている。乾燥した種子は耐久性が強く、海水にさらされた場合なども高い発芽率を示す。日本では、『日本書紀』(仁徳天皇11年=323年)の記述の中で瓢(ひさご)としてはじめて公式文書に登場する。茨田堤を築く際、水神へ人身御供として捧げられそうになった男が、ヒョウタンを使った頓智で難を逃れたという。狭義には上下が丸く真ん中がくびれた形の品種を呼ぶが、球状から楕円形、棒状や下端の膨らんだ形など品種によってさまざまな実の形がある。かつては、実を乾かして水筒や酒の貯蔵に利用されていた(微細な穴があるために水蒸気が漏れ出し、気化熱が奪われるため中身が気温より低く保たれる)。利便性の高さからか、縁起物とされ羽柴秀吉の千成瓢箪に代表されるように多くの武将の旗印や馬印などの意匠として用いられた。瓢箪は、三つで三拍(三瓢)子揃って縁起が良い、六つで無病(六瓢)息災などといわれ、掛け軸や器、染め物などにも多く見られる。ちなみに大阪府の府章は、千成瓢箪をイメージしている。
ヒョウタンは水筒、酒器、調味料入れなどの容器に加工されることが多い。乾燥したヒョウタンは、表面に柿渋やベンガラ、ニスを塗って仕上げる。水筒や食器など、飲食関係の容器に用いる場合は、酒や番茶を内部に満たして臭みを抜く。軽くて丈夫なヒョウタンは、世界各国でさまざまな用途に用いられてきた。朝鮮半島ではヒョウタンをふたつ割りにして作った柄杓(ひしゃく)や食器を「パガチ」と呼び、庶民の間で広く用いられてきた。また、アメリカインディアンはタバコのパイプに、南米のアルゼンチン、ウルグアイ、ブラジルではマテ茶の茶器、またインドネシア・イリアンジャヤやパプアニューギニアなどでは先住民によってペニスケースとして使われている。ヒョウタンには大小さまざまな品種があり、長さが5センチくらいの極小千成から、2メートルを越える大長、また胴回りが1メートルを超えるジャンボひょうたんなどがある。ヒョウタンと同種のユウガオは、苦みがなく実が食用になり、干瓢の原料となる。農産物としても重要であり、近年は中国からの加工品輸入も増加している。主として生または乾物を煮て食べる。また、強壮な草勢からスイカやカボチャの台木としても利用される。


◇生活する花たち「酔芙蓉・萩・女郎花」(横浜四季の森公園)

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9月12日(水)

2012-09-12 04:43:40 | Weblog
  尾瀬
★山小屋の湯にいて秋の笹の音  正子
旅に出て湯に入るというのはいろいろな思いがあります。むろん旅の疲れを癒すということもありますが、普段とは違う景色の中で、家では聞くことのできない小さな音を楽しむこともできます。尾瀬というのですから、これは下生えの背の低い、葉の大きな笹なのでしょう。澄んだ静かな秋の囁きです。 (小西 宏)

○今日の俳句
風入れる窓に虫の音混じり来る/小西 宏
窓の風に混じって聞こえる虫の声は、心地よく聞こえる。しかし、聞いているとどこか淋しい気持ちが湧く。秋という季節のせいだろうか。(高橋正子)

○黄花コスモス

[黄花コスモス/横浜日吉本町]

★街角を曲がれば黄花コスモスに/山元重男
★茎細きキバナコスモス気は強し/稲森如風
★揺れ動く黄花コスモス風に色 芳吟

黄花コスモスを、初めは河原で見かけていた。当時住んでいた愛媛の松山平野を流れる重信川の河川敷。重信川は一級河川で河原もそこそこ広い。最近では、ちょっとした空き地や畑の隅でも見かける。好きかと問われれば、だれもそんな質問をした人はいないが、好きではないと答えるだろう。一般的なコスモスに似ているが、違うところがあまり好きではない理由かもしれない。花の形は可愛いのに、オレンジや黄色の花の色が強すぎて透明感に欠ける。葉が丈夫そうな切れ込み方で、緑色が暑苦しい。しかし、これは、近くから見ての話。河原が殺風景であれば、キバナコスモスも絵になる。広い空が見えて、風が渡り、雲が流れるところに置いて楽しみたい花だ。明るい野原が似合う花だ。

★銀輪を止めありキバナコスモスに/高橋正子

やキバナコスモス(黄花コスモス、学名:Cosmos sulphureus)は、キク科コスモス属の多年草または一年草。コスモスの名を冠するが、オオハルシャギクとは同属別種にあたり互いを交配する事は出来ない。現在では日本で広く園芸品種のひとつとして栽培されているが、一部は逸出して野生化している。原産地はメキシコで、標高1600m以下の地域に自生する。18世紀末にスペイン・マドリードの植物園に送られ、ヨーロッパに渡来した。日本には大正時代の初めに輸入された記録が残っている。高さは約30〜100cm。概ね60cm程度に成長するが、鉢植えやプランター向けの20cm程度に留まる矮性種も出回っている。オオハルシャギクと比べて葉が幅広く、切れ込みが深い。また夏場の暑さに強いため、オオハルシャギクよりも早い時期に花を咲かせる傾向にある。またオオハルシャギクよりも繁殖力が旺盛である為、こぼれ種で栽培していると数年後にはオオハルシャギクを席巻してしまう。花期は比較的長く、6月から11月にかけて直径3〜5cm程度の黄色、またはオレンジの花を咲かせる。改良種として濃い赤色の品種も作られている。花は一重咲きと八重咲きがあるが、園芸品種として市場に出回っているもののほとんどは八重咲き。病害虫による大きな被害を受けることは少なく、初夏から夏にかけて新芽の付近にアブラムシがつく程度である。痩せた土壌でも適度の水を与えていれば問題無く成長するため、頑強で育て易い植物といえる。ただし日陰での栽培には向かず、充分な日照が無い環境では葉などの形が崩れる場合があるため注意が必要。成長に伴って良く分岐する特性があり、咲き終えた花がらの摘み取りや、夏場に一旦切り戻しを行うなどの手入れを施すと長い期間花を楽しむ事が出来る。前述の通りオオハルシャギクとは交配出来ないが、チョコレートコスモスとは交配可能。このキバナコスモスとチョコレートコスモスの交配種は「ストロベリーチョコレート」と呼ばれる。

○オオハルシャギク Cosmos bipinnatus Cav. 一般的なコスモスといえばこれを指す。高さ1 - 2m、茎は太く、葉は細かく切れ込む。
○キバナコスモス Cosmos sulphureus Cav. 大正時代に渡来。オオハルシャギクに比べて暑さに強い。花は黄色・オレンジが中心。
○チョコレートコスモス Cosmos atrosanguineus (Hook.) Voss 大正時代に渡来。黒紫色の花を付け、チョコレートの香りがする。多年草で、耐寒性がある。


◇生活する花たち「芙蓉・蓮の花・藪蘭」(鎌倉・宝戒寺)
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9月11日(火)

2012-09-11 03:08:34 | Weblog
★さわやかに行きし燕の戻り来る  正子
秋気清く澄明で快適な9月~10月にかけて、南方へと渡る燕の中にも戻って来る燕。残る燕も居りますね。見送る気持ちと戻って来る嬉しさの気持ちが交差した素敵な景ですね。 (小口泰與)

○今日の俳句
鶏頭へ堅き日矢射し空深し/小口泰與
「鶏頭」に対して「堅き日矢」の表現は、秀逸。鶏頭の咲くころの日のあり具合が実感できる。(高橋正子)

○露草

[露草/横浜日吉本町]             [露草/ネットより]

★露草や飯噴くまでの門歩き 久女
ご飯が噴くまで家の庭を少し歩く。見れば露草がみずみずしく咲き、早朝の涼しい時間が心地よい。(高橋正子)

★月草の花に離れてうてなかな 虚子
★露草の花みづみづし野分晴 泊雲
★つゆけくも露草の花の 山頭火
★一叢の露草映すや小矢部川 普羅
★千万の露草の眼の礼をうく 風生
★ことごとくつゆくさ咲きてきつねあめ 蛇笏
★露草に祭の玩具落しけり かな女
★朝の日の母を訪はばや蛍草 耕衣
★露草や室の海路を一望に 汀女
★蝶とりし網を伏せおく蛍草 立子

春はおおいぬのふぐり、秋は露草。どちらも小さい青い花だ。野辺に咲くと、春が来たと思い、秋が来たと思う。そして、野辺にごとごとく咲く。露草の青い花が露を宿していると、涼しさそのものに思える。摘み取って花瓶に活けてもほんの朝のうち。俳句の話などで、朝の来客のみを喜ばせた。昼過ぎ、あの青い花はどこへ行ったか。凋んだといっても凋んだ花を見たことがない。耳学問によると、あおの青い花は、昼には苞の中に溶けてしまうのだと。ありそうなことである。

 ツユクサ(露草、Commelina communis)は、ツユクサ科ツユクサ属の一年生植物。日本全土、アジア全域、アメリカ東北部など世界中に広く分布する、畑の隅や道端で見かけることの多い雑草である。高さは15~50cmで直立することはなく、茎は地面を這う。6~9月にかけて1.5~2cmほどの青い花をつける。花弁は3枚あり、上部の2枚は特徴的で青く大きいが、下部の1枚は白くて小さく目立たない。雌しべが1本、雄しべが6本で成り立っている。アサガオなどと同様、早朝に咲いた花は午後にはしぼんでしまう。朝咲いた花が昼しぼむことが朝露を連想させることから「露草」と名付けられたという説がある。英名のDayflowerも「その日のうちにしぼむ花」という意味を持つ。また「鴨跖草(つゆくさ、おうせきそう)」の字があてられることもある。ツユクサは古くはつきくさと呼ばれており、上述した説以外に、この「つきくさ」が転じてツユクサになったという説もある。「つきくさ」は月草とも着草とも表され、元々は花弁の青い色が「着」きやすいことから「着き草」と呼ばれていたものと言われているが、万葉集などの和歌集では「月草」の表記が多い。この他、その特徴的な花の形から、蛍草(ほたるぐさ)や帽子花(ぼうしばな)、花の鮮やかな青色から青花(あおばな)などの別名がある。 また鴨跖草(おうせきそう)という生薬名でも呼ばれる。花の青い色素はアントシアニン系の化合物で、着いても容易に退色するという性質を持つ。この性質を利用して、染め物の下絵を描くための絵具として用いられた。ただしツユクサの花は小さいため、この用途には栽培変種である大型のオオボウシバナ(アオバナ)が用いられた。オオボウシバナは観賞用としても栽培されることがある。花の季節に全草を採って乾燥させたものは鴨跖草(おうせきそう)と呼ばれ、下痢止め、解熱などに用いる。
 万葉集には月草(ツユクサの別名)を詠ったものが9種存在し、古くから日本人に親しまれていた花の一つであると言える。朝咲いた花が昼しぼむことから、儚さの象徴として詠まれたものも多い。また俳句においては、露草、月草、蛍草などの名で、秋の季語とされる。

◇生活する花たち「黄花コスモス・韮の花・芒」(横浜日吉本町)
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9月10日(月)

2012-09-10 06:28:07 | Weblog
★赤とんぼいくらでもくる高さなり  正子
昔、赤とんぼが群れ飛ぶ光景をよく見ました。人なつっこく近づいてきて、目の高さぐらいを飛んでいました。近頃は、数が少なくなってきたように思います。秋空の下、田園風景の広がる田舎の道に、赤とんぼがつぎつぎ飛んでくる景を、懐かしく思い出させていただきました。(藤田裕子)

○今日の俳句
ちちろ鳴く裏庭の夜の澄みてきし/藤田裕子
静かな裏庭にちちろが鳴くと、夜が澄んでくる感じがする。夜が澄んでくると、ちちろがいっそう声高く鳴く。研ぎ澄まされてゆく秋の夜である。(高橋正子)

○第16回(結婚祝い)フェイスブック句会
▼2012年9月9日入賞発表!
【金賞】
★朝の田に光こぼしつ赤とんぼ/柳原美知子
朝の赤とんぼは、ことにきらきらと輝いている。「光こぼし」は的確な描写。朝の田の清々しさと、生き生きと飛ぶ赤とんぼが目に明らかだ。(高橋正子)

▼その他の入賞作品は、
http://blog.goo.ne.jp/kakan02d
▼句会場のfacebookページ「インターネット俳句センター」は、
http://www.facebook.com/kakan02

○虎杖の花

[虎杖の花/東京・向島百花園]

★虎杖の花昼の月ありやなしや/高浜虚子
虎杖の花が咲いている。空を見上げると、昼の月がうっすらと、あるかないかのように懸っている。春の虎杖、夜の月に比べ、夏の虎杖の花、昼の月はともに存在が似て、通じ合っている。(高橋正子)

虎杖の花は、初夏からところによって初秋まで咲いている。春の虎杖は茎に紅色の斑があり、食べることもでき、折るとポキッと音がする。俳句や絵の材料として取り上げられることも多いが、夏旺盛に葉が茂るものの、花は目立たない。しかし、なんとなく、春の赤い斑のある茎を思い出して、句に詠んでみたくなる。

 イタドリ(虎杖、痛取、Fallopia japonica)とは、タデ科の多年生植物。別名は、スカンポ、イタンポ、ドングイ。ただし、茎を折るとポコッと音が鳴り、食べると酸味があることから、スイバをスカンポと呼ぶ地方もある。茎は中空で多数の節があり、その構造はやや竹に似ている。三角状の葉を交互につけ、特に若いうちは葉に赤い斑紋が出る。雌雄異株で、雄花はおしべが花弁の間から飛び出すように長く発達しており、雌花はめしべよりも花弁の方が大きい。夏には、白か赤みを帯びた小さな花を多数着けた花序を出す。花の色が特に赤みを帯びたものは、ベニイタドリ(メイゲツソウ)と呼ばれ、本種の亜種として扱われる。秋に熟す種子には3枚の翼があり、風によって散布される。そして春に芽吹いた種子は地下茎を伸ばし、群落を形成して一気に生長する。路傍や荒地までさまざまな場所に生育でき、肥沃な土地では高さ2メートルほどまでになる。やや湿ったところを好み、また、攪乱を受けた場所によく出現する先駆植物である。谷間の崖崩れ跡などはよく集まって繁茂している。これは太く強靭で、生長の早い地下茎によるところが大きい。
 北海道西部以南の日本、台湾、朝鮮半島、中国に分布する東アジア原産種。世界の侵略的外来種ワースト100 (IUCN, 2000) 選定種の一つである。19世紀に観賞用としてイギリスに輸出され、旺盛な繁殖力から在来種の植生を脅かす外来種となり、コンクリートやアスファルトを突き破るなどの被害が出ている。2010年3月、イギリス政府はイタドリの駆除のために、天敵の「イタドリマダラキジラミ」を輸入することを決める。
 若い茎は柔らかく、山菜として食べられる。茎や葉が分かれる前の、タケノコのような姿のものを折って採取し、皮をむいて使用する。生でも食べられ、かつては子供が道草途中に囓っていた。有機酸を多く含むため酸味があるが、その中にはシュウ酸も含まれるため、多少のえぐみもあり、そのまま大量摂取すると健康への悪影響も考えられる。そのため、山菜として本格的に利用するときには茹でて水にさらし、あく抜きするが、そうするとさわやかな酸味も失われてしまう。高知県では、苦汁や苦汁成分を含んだあら塩でもみ、こうすると、苦汁に含まれるマグネシウムイオンとシュウ酸イオンが結合し、不溶性のシュウ酸マグネシウムとなる。その結果、シュウ酸以外の有機酸は残したままシュウ酸だけ除去することができる。春頃の新芽は食用になる。皮を剥ぎ、塩もみをして炒め、砂糖、醤油、酒、みりん、ごま油等で味付けし、鰹節を振りかける。主に食用にしているのは高知県であるが、和歌山県や三重県南部でも「ゴンパチ」と称して、兵庫県南但では「だんじ」と称して食用する。新芽を湯がいて冷水に晒し、麺つゆと一味唐辛子の出汁に半日ほど漬ける。ジュンサイのようなツルツルとした食感がある。秋田県では「さしぼ」と呼び水煮にして味噌汁の具に使ったりする。 岡山県では「さいじんこ」、「しゃじなっぽ」などと呼ぶ。

 昔の子供の遊びとして、イタドリ水車がある。切り取った茎の両端に切り込みを入れてしばらく水に晒しておくとたこさんウィンナーのように外側に反る。中空の茎に木の枝や割り箸を入れて流水に置くと、水車のようにくるくる回る。一面に花が咲いていると、多くの昆虫が集まる。秋に昆虫が集まる花の代表的なものである。また、冬には枯れた茎の中の空洞をアリなどが冬眠用の部屋として利用しているのが見られる。イタドリハムシは、成虫も幼虫もイタドリの葉を食べる。


◇生活する花たち「藻の花・萩・百日紅」(鎌倉・宝戒寺)

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9月9日(日)

2012-09-09 06:26:58 | Weblog
★つまみ菜を洗えば濁る水の色  正子
大根や蕪、貝割菜など、秋に種を蒔き間もなくして密生して芽を出すので、間引いて味噌汁の実にしたりみどり鮮やかな新芽をサラダやトッピングにもして、つまみ菜は食卓を楽しませてくれます。殆ど土が付いたり汚れは少ないつまみ菜ですが洗えば多少の汚れが落ちたり菜が広がったりと水が濁ります。しかし、この濁りもみどり色で有ったり爽やかな色に濁り、つまみ菜は大地からの恵みで有ること、そして又、澄む秋の水の色をも実感していらっしゃる様に思えます。(佃 康水)

○今日の俳句
せせらぎの岩すべり来る秋の水/佃 康水
「岩すべり来る」が澄んで滑らかな秋の水の感じをよく出している。(高橋正子)

○未草(ひつじぐさ)

[未草/国立公園尾瀬]             [未草/ネットより]

★漣の吸ひ込まれゆく未草/西村和子

高校生のころだったろうか、睡蓮のことを、または未草というと思うようになっていた。そして、いつのころか、未草と睡蓮は違うものだと知った。未草は白い花で、睡蓮より花が小さく花の咲く時間も未の刻を中心に咲く。名前だけ知って実際に花を見たことはなかったが、一昨年8月27日と28日に尾瀬に行ったとき、池塘に未草が咲いていた。これは感激であったが、尾瀬に入ってビジターセンターや国民宿舎のある山の鼻から木道を歩いて行くと、ちょうど2時ごろであったので、未草の花を見ることができた。実際は午前11時ごろから午後4時ごろまで咲くそうだが、未の刻に合わせて咲いているようにしか思えなかった。

★湿原の日はやわらかし未草/高橋正子


 未草(ヒツジグサ)は、スイレン科スイレン属の水生多年草で、学名は Nymphaea tetragona(Nymphae:スイレン属、tetragona:四角の)。Nymphaea は、水の女神であるところの「Nympha(ニンファー)」と命名された、古い植物名に由来するもの。夏、地下茎から茎を伸ばし、池や沼で水面スレスレに白い清楚な花を咲かせる。花の大きさは3~4cm、萼片が4枚、花弁が10枚ほど。花期は6月~11月。昔の時刻の数え方のひとつである、「未(ひつじ)の刻(14:00)」の頃に花が開くことからこの名前になった。実際には午前11時頃から咲き始め、夕方4時頃しぼんでいく。一つの花は3日、3回咲いたあと、水中に沈んで実をつける。未草はスイレンの原種の一つであり、日本唯一の在来種(尾瀬の未草が有名)で、日本全国の池や沼に広く分布している。寒さに強く、山地の沼や亜高山帯の高層湿原にも生えている。日本以外ではシベリア、欧州、中国及び朝鮮半島、インド北部、北アメリカに分布している。


◇生活する花たち「萩・からいとそう・瓢箪」(東京・向島百花園)


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9月8日(土)

2012-09-08 05:19:13 | Weblog
★虫籠に風入らせて子ら駈ける  正子
虫かごに入っているのは、バッタなのか、トンボなのか、いずれにせよ、虫取りは子どもにとって心躍るものです。「風入らせて」に子どもたちのその様子が反映されています。(多田有花)

○今日の俳句
はや桜紅葉始まる明るき午後/多田有花
「明るき午後」が魅力。暑さがようやく落ち着いたかと思うと、はやくも、桜は紅葉しはじめる。真夏の眩しさがぬけて、しずかな明るさに変わるころ。(高橋正子)

○向島百花園
 昨年の9月8日、墨田区の向島百花園へ花の写真を撮りに出掛ける。園内は、萩、女郎花、藤袴、葛など秋の七草の盛りであったが、樹が茂って、写真撮影には、光が不足していた。 園内には、庭造りに力を合わせた文人墨客たちの足跡もたくさんあり、芭蕉の句碑を含め、合計29の句碑が随所に立っていた。江戸の町人文化が花開いた文化・文政期に造られた百花園は、花の咲く草花鑑賞を中心とした「民営の花園」であった。当時の一流文化人達の手で造られ、庶民的で、文人趣味豊かな庭として、小石川後楽園や六義園などの大名庭園とは異なった美しさをもっていた。民営としての百花園の歴史は昭和13年まで続いたが、東京市に寄付された。昭和53年10月に文化財保護法により国の名勝及び史跡の指定を受けた。
 百花園の九月の花といえば、まずは萩の花だろう。もちろん、女郎花、藤袴、芒、なでしこ、桔梗、葛棚に葛が咲いているが、園内の至るところに咲く萩が見もの。萩は丸葉萩だろうか。この日に訪ねたときは、咲き始めたばかりのようで、たまに見ごろの萩があった。十日からの萩祭りには、もう少し紅色が増えるだろう。萩のトンネルは、竹を組んで作られて、三十メートルばかりある。「花を潜る」はちょっとうれしいことだが、この季節のよい趣向だ。
 向島百花園には百花はあるけれど、どれもたくさん咲いているわけではない。桔梗は花が一つ残り、なでしこは2,3本あったのが、すっかり枯れていた。偶然にも。れんげしょうまが一本、唐糸草がもう終わりかけて、やっとその色と形が残る程度のが二つあった。唐糸草は初めて見たが、山野草の部類に入る。えのころ草の穂よりも少し大きいが、紅色の雄しべが日に透けると大変美しいということである。ちょっと粋な長い紅色の雄しべは雨に濡れると、猫が雨に濡れたようになるそうだ。撮ってきた写真を見ながら「唐糸」はいかにも江戸好みらしいと思う。終わりかけの花のみすぼらしさの中にも、きれいな紅色が想像できるから不思議だ。大いにその名前「唐糸」のお蔭であろう。園内にいる間は、なんと花に勢いのないこと、と思っていたが、写真を見ると、一つの情緒がある。文人好みの庭に造られたせいでもあろう。虫の声を聞く会、月見の会も催されるようだから、暮らしの中の花として、少しを植えて楽しむのもささやかながら、都会人のよい楽しみであろう。

★藤袴スカイツリーのいや真直ぐ  正子

○曙草

[曙草/国立公園尾瀬]       [曙草/ネットより]

★曙草日差せば水のほの匂ふ/小松崎爽
★曙草晩秋の虚追憶す/荒川じんぺい

一昨年8月27日と28日尾瀬に出かけた。暑い日差しにも関わらず、尾瀬は初秋を迎えていた。水芭蕉やゆうすげの季節は過ぎていたが、今思い返すと、咲き残る夏の花や初秋のさわやかな花々に多く出会えたのは随分幸運だった。曙草は、星形の五弁の白い2センチほどの花に、紫いろの斑点と黄緑色の丸い点がある。そういうのが曙草と知っていればすぐに見分けがつく。ところが私が見たのは、花弁が6弁。そのほかは曙草の特徴を持つ。これも、山小屋にある尾瀬の植物図鑑で調べたが、6弁あるものについては記述を見つけることができなかった。曙草の花は白とは言うが、丸い点のせいで、黄緑がかって見える。これを夜明けの星空と見たようだ。曙草は尾瀬ヶ原でも奥のほうにある赤代田へ辿る木道の脇で見つけた。夕方4時までには山小屋に着きたい一心で歩いていたのだが、「私はここよ」という感じで、足を引き留められ写真を撮った。山小屋で寝ながら思った。山の出立は早い。早朝4時に出発する人たちも中にはいる。そんな人たちは夜明けの星空を見るのだが、曙草はその人たちが名づけた名前かもしれないと。

★尾瀬に泊(は)つ曙草を見し日には/高橋正子
★目を落とす湿原帯の曙草/〃

アケボノソウ(曙草、Swertia bimaculata)は、リンドウ科センブリ属の多年草。北海道から九州の、比較的湿潤な山地に生育する。花期は9-10月。湿地や林床などの、比較的湿った場所に生える。2年草であり、発芽後1年目はロゼットのまま過ごす。2年目に抽苔し、高さ80cm程度まで茎を伸ばす。茎の断面は四角形で、葉は10cm程度の卵状で互生する。ロゼットの根生葉は柄があるが、茎生葉は柄がないことが特徴的である。9-10月の花期、分枝した茎の先端に径2cm程度の白い花をつける。花は5弁で星型。花弁には紫色の点と、黄緑色の特徴的な丸い模様がつく。和名アケボノソウの名前は、この模様を夜明けの星空に見立てた名前。別名キツネノササゲ。


◇生活する花たち「白むくげ・ひおうぎ・女郎花」(東京・向島百花園)

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9月7日(金)

2012-09-07 23:24:45 | Weblog
★たっぷりと雲湧く台風過ぎしより  正子
台風が去り、空に「たっぷりと」雲の湧く爽涼さ。台風あとの安堵感とともに、過ぎ去った台風の大きさも推測されます。台風一過、空は澄み高く、生まれる白雲の雄大さに、清々しく豊かな秋の到来を感じさせていただきました。(藤田洋子)

○今日の俳句
皿洗う秋夜の白と白重ね/藤田洋子
家族の明るい生活から生まれた佳句が多い。日々の生活に詩を見つけ、それを句にしている。(高橋正子)

○梅鉢草(うめばちそう)

[梅鉢草/ネットより]            [梅鉢草/国立公園尾瀬2010/08/28]

★山の日のゆたかにとどき梅鉢草/中岡昌太
梅鉢草に「山の日」はふさわしい。あたり何もないので、直接山の日が梅鉢草に注ぐ。注目は「山の日」。梅鉢草が咲くころの「山の日」は、夏の日が衰え、日差しに涼しさが見える。夏の終わりから秋の初めの繊細な趣の日差し。それに似合う花である。(高橋正子)

★膝折って額白牛やうめばち草/杉山額陽

梅鉢草を初めて見たのは尾瀬であった。銀杯草という花がある。8月ごろ咲く丈の低い白い可憐な花で、グランドカバーにもされる。どこの家を訪ねたときか覚えていないが、玄関前にあってよくよく見せてもらった。その花のイメージと重なって、尾瀬で梅鉢草に出会った時は即座に梅鉢草と断定できなかった。まず写真を撮り、夜、山小屋にあった「尾瀬の植物」という図鑑と、昼間ビジターセンターでもらったパンフレットをよくよく見て梅鉢草と決めた。尾瀬では、持って行ったデジタルカメラが、2,3枚撮ったところで壊れてしまって、携帯で写すはめになったが、青白く梅鉢草が写っている。非常に残念だったが「尾瀬の梅鉢草」として私の大事な写真になった。

★山小屋に梅鉢草の咲く写真/高橋正子
★草の間の梅鉢草の花に向き/正子

 ウメバチソウ(梅鉢草、学名:Parnassia palustris)は、ユキノシタ科ウメバチソウ属の多年草。花が梅の花を思わせる。根出葉は柄があってハート形。高さは10-40cmで、花茎には葉が1枚と花を1個つける。葉は、茎を抱いている。花期は8-10月で2cmほどの白色の花を咲かせる。北半球に広く見られ、日本では北海道から九州に分布する。山地帯から亜高山帯下部の日の当たりの良い湿った草地に生え、地域によっては水田のあぜにも見られる。ウメバチソウ属は、北半球の温帯から寒帯にかけての山地に50種ほどがある。「梅鉢」とは、紋所(家紋)のひとつで、変形に、中心部がおしべの形ではなく、ただの丸になっている「星梅鉢」がある。菅原道真や前田利家の家紋として有名で、湯島天神など天神社でよく見かける。家紋に由来する植物名には、ほかにハナビシソウ(花菱草)などがある。

○尾瀬初秋
 一昨年8月27日、娘と尾瀬へ。上毛高原駅で上越新幹線を下車。駅前から片品村戸倉行きのバスに乗る。バスはさらに峠へと2時間半走り、片品村の一番奥の戸倉に着く。戸倉より、マイクロバスのようなタクシーに乗って、鳩待峠へ向かうこと30分。このあたりは芒の穂が開いたばかり。11時50分に峠に到着。鳩待峠は、尾瀬に入る最もポピュラーなところで、半分くらいの登山者がここから入るようだ。尾瀬ヶ原の入り口の山の鼻へ向けて3,3キロの道を下る。はじめは石畳の階段、そのあと、木の階段、木道となる。1キロほど下ると、ブナ林に小鳥の声が響く。あまりに響くので、鳴き声がはっきりと聞き取れない。ブナの葉を騒がすような鳥の声に涼しさが湧く。木道がやや緩やかになると、左手に川上川の流れが見える。それからは水芭蕉の大きくなった葉を見ながら、今を盛りのハンゴンソウの黄色い花に目をやりながら、どんどんと下る。登ってくる人たちは息を弾ませている。登りは覚悟せねばなるまい。木道に沿って草を刈る人や歩荷(ぼっか)さんが、休憩場所の材木ベンチで休んだり、弁当を広げたりしている。歩荷さんとは、山小屋や売店にビールや飲み物、食べ物を背負子で運ぶ人。ツキノワグマがいるので、鐘が取り付けてあって、それを鳴らして熊に人間が通ることを知らせる。沢をいくつか見て山の鼻に着く。ここには、ビジターセンター、山小屋、売店、キャンプ場がある。予定通り、1時間で下った。木陰で休む。山鳩が近くに寄って来て逃げもしない、昼食はバスでおにぎりを食べて済ませていたので、飲み物とおやつを採る。トイレは寄付金100円を投入して使用するようになっている。手洗いの水道水の冷たいこと。
 20分ほど休憩のあと、平坦な木道を歩き出しだ。延々と続く木道が見える。尾瀬といえば、水芭蕉、ゆうすげ。その花も終わってしまった今、尾瀬になにがあるだろうかとの思いをよそに、高層湿原は、初秋の色に染まり、可憐な花や草がそよいでいた。空はやや曇り。歩くのにはほどよい。ウィークデイなので、人も多くない。洒落たハイキングウェアーの若い娘達が目立つ。木道を歩く足元には、黄色い小さな花が立ちのぼって咲くミヤマアキノキリンソウ、紫の小さな花が十花ほど咲きのぼるサワギキョウ、紅色もやさしいミヤマワレモコウ。湿原一帯には白い小さい花をのばしたイワショウブの花が今を盛りに咲いている。それに、オゼヌマアザミ。これらの花は、木道のいたるところに、アブラガヤの枯れた穂の色をアクセントに咲いている。しばらく歩いたので後を振り返ると、日本百名山の一つ至仏山が見える。湿原には「池とう」と呼ばれる、小さい池のようなのがたくさんある。幸いなことに、地とうには未草(ヒツジグザ)の花が咲いている。ちょうど未の刻(午後2時)に近い。スイレン科であるが、スイレンよりずっとずっと小さい。木道の間の池水にも咲いているのが見える。別の池とうには、ハヤのような魚がすばしこく泳いでいる。どうしてここに魚がいるのかも不思議だ。水芭蕉やゆうすげの群落のきらめくような季節は去ったが、初秋の尾瀬の細やかな花や草々の表情を満喫しつつ歩いた。サワギキョウ、ワレモコウの多いこと。ワレモコウに赤とんぼが止まる。水色の蜻蛉のつがい。ときに青紫のトリカブトもある。牛首分岐というあたりに来ると、至仏山とは反対側に、つまり行く手に燧ヶ岳の姿が素晴らしく思えるようになる。ここで休憩を入れ、竜宮というところまで歩く。この木道は尾瀬ヶ原のメインとなる道。ところどころに、タケカンバが育っている。遠くにもタケカンバの白い幹が画にみるように並んでいる。ナナカマドが紅葉し始めている。あとしばらくで、草紅葉の景色に変わるであろう。
 今夜の泊まりは、尾瀬ヶ原でも奥のほうにある赤田代の「温泉小屋」。鳩待峠から4時間、約10、8キロとある。左手は葦が茂っているが、丈も1メートルほどと低く、紅むらさきの花もいい風情だ。ゴマナの白い花に混じり、トリカブトの紫の花が一叢。ブナには蔓紫陽花がからむ。40分ほど歩いて温泉小屋に到着。午後4時。

★木道に沿えば風吹き吾亦紅
★湿原に日はかたむかず未草
★山小屋の湯にいて秋の笹の音


◇生活する花たち「チカラシバ・吾亦紅・水引の花」(横浜下田町・松の川緑道)
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9月6日(木)

2012-09-06 09:08:05 | Weblog
★揺れもせず夕日当れる青稲穂  正子
稲の穂は青い葉のまま、稔って行きます。夕日の当る穏やかな田園に稲穂の香りが漂い、豊かな稔りが「揺れもせず」との措辞により約束され、ここには豊穣の喜びが溢れています。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
新駅の高架工事や稲の花/桑本栄太郎
新駅は田園の中に建てられ、高架工事が進んでいる。おりしも田んぼには稲の花が咲き、暑さのなかにも秋の気配が漂う。開発が自然を押しやって進んでいるのも現代の景色だ。(高橋正子)

○烏瓜の花

[烏瓜の凋んだ花/横浜日吉本町]      [烏瓜の花/ネットより]

★ふはふはと泡かと咲けり烏瓜/松本たかし
★烏瓜咲く一穢なき妖しさに/水原春郎
★烏瓜の花におどろく通夜帰り/松崎鉄之介
★烏瓜の花に逢はせむ話など/宮津昭彦
★去るものは去らして烏瓜の花/神蔵器
★雨音の明るし烏瓜の花/下田恭子
★青々と暮れて烏瓜の花/北畠明子
★烏瓜の花咲き誰もゐない駅/藤井英子
★夜の闇の深くてからすうりの花/中村洋子

★蔓切れてはね上りたる烏瓜/高浜虚子
烏瓜の朱色の実を見つけると、手繰り寄せて採りたくなる。蔓は雑木などに絡まっているので、蔓をひっぱっても、易々と手元には来ない。蔓が切れて、引っ張った力の反動で「はね上がる」。「はね上がる」が面白い。はね上がった実が揺れ、悔しがるものが居る。(高橋正子)

★烏瓜映る水あり藪の中/松本たかし
★をどりつつたぐられて来る烏瓜/下村梅子

烏瓜の花はレースのようであるとは、知っていた。朱色の実が思わぬところに熟れているのをよく見けるが、実の生る前に花があることを思うことはなかった。ところが、8月の終わりだったか、信之先生が早朝の散歩で、烏瓜の花の凋んだところを写真に撮ってきた。烏瓜の花とは思うが、確かとは言えないので、ネットで烏瓜の花の写真をいろいろと見て、間違いないだろうと結論づけた。烏瓜の花は夕方6時半ごろから2時間ほどかけて完全に咲くので、咲いたところを見たくなった。レースのような花なので見たくてたまらない。夜なので、一人は危ない。また危ないところに烏瓜がある。翌晩にでも行きたかったが、いろいろ用事があってすぐ行けない。5日ほどたって花があった場所に二人で懐中電灯をもって出かけた。それらしきを写したが、どうも新しい葉のようだった。昼間蕾を確かめておかねばならなかった。ここ日吉本町辺りは、今年は花の時期は過ぎたかもしれない。

★闇暑し烏瓜の花はどこ/高橋正子
★烏瓜の花の凋みしは悔し/〃

 カラスウリ(烏瓜、Trichosanthes cucumeroides)はウリ科の植物で、つる性の多年草。朱色の果実と、夜間だけ開く花で知られる。 地下には塊根を有する。原産地は中国・日本で、日本では本州・四国・九州に自生する。林や藪の草木にからみついて成長する。葉はハート型で表面は短い毛で覆われる。雌雄異株で、ひとつの株には雄花か雌花かのいずれかのみがつく。別名:玉章(たまずさ)・ツチウリ・キツネノマクラ・ヤマウリ。
 4月~6月にかけて塊根から発芽、あるいは実生する。花期は夏で、7月~9月にかけての日没後から開花する。雄花の花芽は一ヶ所から複数つき、数日間連続して開花する。対して雌花の花芽は、おおむね単独でつくが、固体によっては複数つく場合もある。花弁は白色で主に5弁(4弁、6弁もある)で、やや後部に反り返り、縁部が無数の白く細いひも状になって伸び、直径7~10cm程度の網あるいはレース状に広がる。花は翌朝、日の出前には萎む。 こうした目立つ花になった理由は、受粉のため夜行性のガを引き寄せるためであると考えられており、ポリネーターは大型のスズメガである。カラスウリの花筒は非常に長く、スズメガ級の長い口吻を持ったガでなければ花の奥の蜜には到達することはできず、結果として送粉できないためである。雌花の咲く雌株にのみ果実をつける。
 果実は直径5~7cmの卵型形状で、形状は楕円形や丸いものなど様々。熟する前は縦の線が通った緑色をしており光沢がある。10月から11月末に熟し、オレンジ色ないし朱色になり、冬に枯れたつるにぶらさがった姿がポツンと目立つ。鮮やかな色の薄い果皮を破ると、内部には胎座由来の黄色の果肉にくるまれた、カマキリの頭部に似た特異な形状をした黒褐色の種子がある。この果肉はヒトの舌には舐めると一瞬甘みを感じるものの非常に苦く、人間の食用には適さない。鳥がこの果肉を摂食し、同時に種子を飲み込んで運ぶ場合もある。しかし名前と異なり、特にカラスの好物という観察例はほとんどない。地下にはデンプンやタンパク質をふんだんに含んだ芋状の塊根が発達しており、これで越冬する。夏の間に延びた地上の蔓は、秋になると地面に向かって延び、先端が地表に触れるとそこから根を出し、ここにも新しい塊根を形成して栄養繁殖を行う。
 開花後落花した雄花にはミバエ科のハエであるミスジミバエ Zeugodacus scutellatus (Hendel, 1912) の雌が飛来し、産卵する。落花した雄花はミバエの幼虫1個体を養うだけの食物量でしかないが、ミスジミバエの1齢幼虫の口鉤(こうこう:ハエの幼虫独特の口器で、大顎の変化した1対の鉤状の器官)は非常に鋭く発達しており、他の雌が産みつけた卵から孵化した1齢幼虫と争って口鉤で刺し殺し、餌を独占する。
 種子はその形から打ち出の小槌にも喩えられる。そのため財布に入れて携帯すると富みに通じる縁起物として扱われることもある。かつては、しもやけの薬として実から取れるエキスが使用された。 若い実は漬物にするほか、中身を取り出し穴をあけてランタンにする遊びに使われる。近年ではインテリアなどの用途として栽培もされており、一部ではカラスウリの雌雄両株を出荷する農園も存在する。


◇生活する花たち「芙蓉・蓮の花・藪蘭」(鎌倉・宝戒寺)
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9月5日(水)

2012-09-05 15:31:07 | Weblog
★娘の秋扇たたまれ青き色の見ゆ  正子
句会などで机の上の手許に置かれた扇でしょうか。「娘の秋扇」に若々しい感じが最初に伝わります。丁寧にたたまれた扇には、絵柄の「青き色」が凝縮して見え、涼しげです。(小川和子)

○今日の俳句
機関車の蒸気噴きゆく秋風よ/小川和子
「蒸気噴きゆく」に機関車の生きいきとした走りを見る。冷涼な秋風となってゆく蒸気に、秋の季をとらえた。(高橋正子)

○新聞を読む
「日経」朝刊の「経済教室」を読む。私たちの俳句雑誌「花冠」のモットー「細く長く」が日本の経済界を含め、日本の社会・文化のすべてに重要な課題であることを知った。「花冠」は、創刊29周年が過ぎ、来年9月には、創刊30周年を迎える。「細く長く」を30年間一貫して続けて来れたことを嬉しく思った。

「日本経済新聞」2012年9月5日朝刊「経済教室」
(逆風下の企業経営)(下)中長期戦略、着実に実行を
  伊藤邦雄 一橋大学教授

情報開示と整合的に 価値創造への具体策描け

<ポイント>
○企業価値の長期低落の一因は経営能力低下
○資本市場からの信頼感低下も価値低落招く
○日本企業では中期経営計画の未達が恒例化

http://kakan.info/memo/nikkei.pdf

○射干、檜扇(ヒオウギ)

[射干(ヒオウギ)/東京・向島百花園]

★射干のまはりびつしより水打つて/波多野爽波
★水打つて射干の起ち上がるあり/波多野爽波
★射干の前をときどき笑ひ過ぐ/岡井省二
★射干の咲く川岸に風立ちぬ/當麻幸子
★射干や海に出る道石多し/鈴木多枝子
★満願の朝や射干実をはじく/飯田はるみ
★仏谷出て射干の朱にまみゆ/淵脇護
★射干や人欺かず蔑まず/小澤克己
★射干や薪積む軒の深庇/生田喬也

檜扇の花の印象はとてもクラッシックだということ。朱色の花は貴族階級の女の子のような雰囲気だ。栽培しているものも最近ではめったに見ることがなくなった。向島百花園でかろうじて咲き残るのを見たくらいだ。昭和30年ぐらいまでだろうか。夏休みの八月の庭に植えてあるのを見たことがある。そのずっと後、生け花に活けたのを床の間で拝見することもあった。葉が檜扇のようなのでこの名前がついているのだが、檜扇の連想からいつも古典的な花と思う。手書きの生花の本のような。

★檜扇を活けし鋏がまだそこに/高橋正子
★檜扇の花を揚羽が飛びゆけり/高橋正子

ヒオウギ(檜扇、学名:Iris domestica)はアヤメ科アヤメ属の多年草である。従来はヒオウギ属(Belamcanda)に属するとされ、B. chinensisの学名を与えられていたが、2005年になって分子生物学によるDNA解析の結果からアヤメ属に編入され、現在の学名となった。ヒオウギは山野の草地や海岸に自生する多年草である。高さ60 - 120センチ・メートル程度。名前が示すように葉は長く扇状に広がる。花は8月ごろ咲き、直径5 - 6センチ・メートル程度。花被片はオレンジ色で赤い斑点があり放射状に開く。午前中に咲き夕方にはしぼむ一日花である。種子は5ミリ・メートル程度で黒く艶がある。本州・四国・九州に分布する。花が美しいためしばしば栽培され、生花店でも販売される。特に京都では祇園祭に欠かせない花として愛好されている。黒い種子は俗に「ぬば玉」と呼ばれ、和歌では「黒」や「夜」にかかる枕詞としても知られる。

◇生活する花たち「黄花コスモス・白木槿・コムラサキ」(横浜日吉本町)

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9月4日(火)

2012-09-04 09:28:39 | Weblog
★朝は深し露草の青が育ち  正子
露草は半日陰のようなところに群れて咲いています。まだ日中は暑さの厳しい頃、あの露草の青さには清涼剤のような清々しさがあります。「朝は深し」がその青さにぴったりです。 (多田有花)

○今日の俳句
日々すべきことをなしつつ新涼に/多田有花
作者が、モンブランへ発つ直前の句であるから、その準備のための、「日々すべきこと」であろう。用意周到な計画と準備があって、初めて登頂は成功する。日々成し終えていく内に、季節も新涼へと移り変わっていった感慨がおおきい。(高橋正子)

○コムラサキ

[コムラサキ/横浜日吉本町]

砥部の庭にコムラサキがあった。隣家との境のブロック塀を隠すようにフランスヒイラギの隣に植えていた。2メートルぐらいに大きく育って、実もよくつけた。ちょうど、リビングから眺められる。リビングからはこの庭に自由に出入りでき、子供たちは学校や外遊びからは玄関ではなく、直接リビングへ帰って来ることが多かった。リビングから見える庭は実のなる木があるので小鳥がいつも来ていた。チャボやウサギも飼っていたし、子供たちには楽しい庭だったと思う。我が家にあったのは園芸種のコムラサキだが、それが紫式部が違う木であるとは、最近まで知らなかった。小さい実を爪で割ってみると、棗のような実である。道理で小鳥が好む分けだ。

★小紫揺れてばかりよ鳥が来て/高橋正子
★子がすり抜けコムラサキの実が落ちる/〃


 コムラサキ(小紫)は、クマツヅラ科ムラサキシキブ属の落葉低木。学名:Callicarpa dichotoma、別名:コシキブ(小式部)、分布:日本、朝鮮半島、中国。 樹高は200~300cmで、開花期は6~8月、成実期:9~12月。初夏に薄紫色の花を咲かせ、秋に垂れた枝に紫色の小球形の果実を多数付ける。幹に近いところから枝先に向かって色付く果実は、鳥の好物。緑色の葉は上半分に鋸歯が見られ、葉は対生に付く。 コムラサキと似た花に、同科同属の ムラサキシキブ(紫式部)があるが、通常、家庭の庭で見られムラサキシキブと呼ばれるものは、実際には、コムラサキであることが多い。コムラサキの白色品種に、シロシキブ(白式部)がある。
 コムラサキとムラサキシキブの違いは、果実の付き方では、ムラサキシキブは比較的疎らに付くが、コムラサキは果実が固まって付く。葉柄と花柄の付く位置では、ムラサキシキブは近接しているが、コムラサキは少し離れて出る。葉の鋸歯は、ムラサキシキブでは全葉にあるが、コムラサキには上半分にしかない。樹高は、ムラサキシキブの方が高く(3~4m)、コムラサキの方が低い(2~3m)。枝垂れでは、ムラサキシキブは枝垂れるが、コムラサキは枝垂れない。 分布では、ムラサキシキブは山野の林に自生し、コムラサキは家庭の庭先に植栽されている。


◇生活する花たち「木槿・韮の花・小紫」(横浜日吉本町)
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9月3日(月)

2012-09-03 06:43:50 | Weblog
★草は花を娘の誕生日の空の下  正子
秋の野には広い青空の下さまざまな草が可憐な花を咲かせます。お子さんの誕生日に託して爽やかなこの季節を詠まれた御句かと存じます。そこはかとなき詩情を感じる「草の花」です。(河野啓一)

○今日の俳句
草茂る起伏一望秋吉台/河野啓一
秋吉台は、カルスト台地と規模の大きさもさることながら、やはり季節ごとに折なすその眺望はすばらしい。カルスト台地なので、草も平地のように荒く茂るのではなく、菊起伏のある高原にやさしさがある。(高橋正子)

○秋桜(コスモス)

[秋桜/横浜・四季の森公園]

★コスモスの花に蚊帳乾す田家かな 鬼城
★日曜の空とコスモスと晴れにけり 万太郎
★コスモスの相搏つ影や壁の午後 泊雲
★コスモスや二戸相倚れる柿葺 青畝
★コスモスの花咲きしなひ立もどり 虚子
★コスモスや墓名に彫りし愛の文字 風生
★コスモスを離れし蝶に谿深し 秋櫻子
★コスモスの乱れふし居り月の下 石鼎
★コスモスにみんな薄翅を立てし虫 かな女
★コスモスをうまごに折りて我も愉し 亞浪
★コスモスくらし雲の中ゆく月の暈 久女
★コスモスの月夜月光に消ゆる花も 青邨
★コスモスの花のとびとび葭の中 素十
★コスモスに藍濃き衣を好み著る 鷹女
★コスモスや鐵條網に雨が降る 汀女
★望郷や土塀コスモス咲き乱れ 立子

★満月光地上に高きコスモスに/高橋正子
★裏庭にコスモス咲かす自由さあり/〃

 コスモス(英語: Cosmos、学名:Cosmos)は、キク科コスモス属の総称。また、種としてのオオハルシャギク Cosmos bipinnatus を指す場合もある。アキザクラ(秋桜)とも言う。秋に桃色・白・赤などの花を咲かせる。花は本来一重咲きだが、舌状花が丸まったものや、八重咲きなどの品種が作り出されている。本来は短日植物だが、6月から咲く早生品種もある。原産地はメキシコの高原地帯。18世紀末にスペインマドリードの植物園に送られ、コスモスと名づけられた。日本には明治20年頃に渡来したと言われる。秋の季語としても用いられる。日当たりと水はけが良ければ、やせた土地でもよく生育する。景観植物としての利用例が多く、河原や休耕田、スキー場などに植えられたコスモスの花畑が観光資源として活用されている。ただし、河川敷の様な野外へ外来種を植栽するのは在来の自然植生の攪乱であり、一種の自然破壊であるとの批判がある。
 オオハルシャギク Cosmos bipinnatus Cav. 一般的なコスモスといえばこれを指す。高さ1 - 2m、茎は太く、葉は細かく切れ込む。 キバナコスモス Cosmos sulphureus Cav. 大正時代に渡来。オオハルシャギクに比べて暑さに強い。花は黄色・オレンジが中心。 チョコレートコスモス Cosmos atrosanguineus (Hook.) Voss 大正時代に渡来。黒紫色の花を付け、チョコレートの香りがする。多年草で、耐寒性がある。花言葉は少女の純真、真心。「コスモス」とはラテン語で星座の世界=秩序をもつ完結した世界体系としての宇宙の事である。

◇生活する花たち「白芙蓉・酔芙蓉・えのころ草とめひしば」(横浜日吉本町)

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9月2日(日)

2012-09-02 09:37:04 | Weblog
★しろじろと穂芒空にそよぐなり  正子
芒の穂は作者の目線よりほんの少し上にあるようです。登山かハイキングの道すがらでしょうか。青く広がる空に芒の穂が靡いています。空の青のせいか澄んだ光のせいか、穂は「しろじろと」揺れています。行く手の、秋の山々の清清しい景色も眼に見えるようです。(小西 宏)

○今日の俳句
露ころぶキャベツ外葉の濃き緑/小西 宏
キャベツの濃い緑の外葉にころがる露に、力がある。丸く、収れんした露の力と輝きは秋の朝のすがすがしさ。(高橋正子)

○秋海棠

[秋海棠/ネットより][秋海棠/横浜日吉本町]

★秋海棠西瓜の色に咲にけり 芭蕉
★手拭に紅のつきてや秋海棠 支考
★画き習ふ秋海棠の絵具哉 子規
★北に向いて書院椽あり秋海棠 漱石
★節々に秋海棠の紅にじみ 虚子
★石灰を秋海棠にかくるなよ 鬼城
★秋海棠にそゝぐはげしや軒の雨 淡路女
★美しく乏しき暮し秋海棠 風生
★病める手の爪美くしや秋海棠 久女
★書を愛し秋海棠を愛すかな 青邨
★秋海棠母を大事の家のさま 汀女
★雲に濡れ秋海棠の茎の紅 悌二郎

愛媛の焼き物の町、砥部町に住んでいた。砥部の家は和風の平屋で、小住宅ながら土地が百坪あまりあって、椿をはじめ、いろんな植物を植えていた。秋の初めになると秋海棠の花が咲いた。北向きの玄関脇は朝日が斜めに当たったあとは日陰になる。そこにピンク色の秋海棠がほろほろと幾分大きめの葉から覗くように咲いて玄関の彩となった。そしてもう一か所、あとで取り付けた小さな濡れ縁の下にいつの間にか秋海棠が咲くようになった。節のある紅色の茎は水を含んでいた。ベゴニアに似ている。ベゴニア科なので言う間でもないが、秋海棠のほうがよどほ日本の家屋に馴染んで似合っている。砥部の家は、住み変わっているが、庭はそのままで楽しんでくれているらしい。そうならば、今も秋海棠が咲いているだろう。子どもたち二人もこの家が気に入っていたので、幼い時の子供たちのことも一緒に思い出す。

★一段と空澄み咲きつぐ秋海棠/高橋正子
★秋海棠の紅の茎また紅の花/〃
★縁に掛け足に触れたる秋海棠/〃
 伊予双海の寺
★伊予灘の波の反射に秋海棠/〃

シュウカイドウ(秋海棠、学名:Begonia grandis)は、シュウカイドウ科シュウカイドウ属(ベゴニア属)に分類される多年生草本球根植物である。和名は中国名「秋海棠」の音読み。ヨウラクソウ(瓔珞草)とも呼ばれる。英名 hardy begonia。高さ約60センチ。秋、紅色の花が下垂して咲く。葉の付け根に小さいむかごをつけて増える。東南アジア原産で、日本へは寛永年間(一六二四〜四四)に渡来したといわれ、観賞用に庭園に栽培される。


◇生活する花たち「槿(むくげ)・女郎花・藪茗荷」(東京・新宿御苑)

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9月1日(土)

2012-09-01 14:14:08 | Weblog
★水に触れ水に映りて蜻蛉飛ぶ  正子
川の流れすれすれに水に触れながら、また影を水に映しながら飛ぶ蜻蛉、おだやかな初秋の情景です。門の前を川が流れていますので、とても身近に感じ親しく読ませていただきました。(黒谷光子)

○今日の俳句
さみどりの稲穂のそよぎ湖近し/黒谷光子
ゆたかな湖をそばに、さみどりの稲穂のそよぎがやさしい。広くゆったりと、そしてこまやかなな詠みに、句が美しく仕上がった。(高橋正子)

○韮の花

[韮の花/ネットより]              [韮の花/横浜日吉本町]

★韮の花坂としもなく息あへぐ/石田波郷
★足許にゆふぐれながき韮の花/大野林火
★おもてより裏口親し韮の花/水野節子
★天日を豊かに受けて韮の花/久我達子
★韮の花秩父は土の匂いして/城内明子
★一面に韮の花咲く里暮れし/阿部スミエ

 昨日、ある家によく咲いていた酔芙蓉も今日は、ちっとも咲いていない。かわりに隣の家の酔芙蓉が咲いていた。花は全く一期一会。歩いていると、なんらかの花に偶然に出会う。一日が言えないし、一時間が言えない。今日は、韮の花がちょうど盛り。韮の花には小さな蝶がいつもせせり寄って蜜を吸っている。球形に小さな花が集まる花は良く見ればかわいらしい。ネットで「韮の花」を検索すると、春に咲く薄紫の「花韮」の画像が混じっている。ネットで気をつけないといけないところである。「花韮」は食用にしないし、咲く季節が違う。
 生家の庭先の畑の端に石組みに沿って一列に韮が植えてあった。韮は冬から春がおいしかった。味噌汁に入れるのに、「ちょっと、韮を刈ってきて。」と言われることもあった。春を過ぎると葉が硬くなる。韮の花は、二学期がはじまるころに咲く。韮の花と言えば、「二学期が始まる暑さ」と、体に染みている。二学期が始まると、運動会の練習が始まる。日暮れがだんだん淋しくなり、昼間は汗をかいた簡単服(簡単なワンピース)では涼しすぎるようになる。韮の花が咲くと、九月特有の暑さを思い出す。

★いつ見ても韮の花に蝶せせり/高橋正子

 ニラ(韮)は、百合(ゆり)科ネギ属の多年草緑黄色野菜である。学名はAllium tuberosum。Allium:ネギ属、tuberosum:塊茎のある、塊茎状の。Allium(アリウム)は「ニンニク」の古いラテン名で、「匂い」という意味が語源。夏には葉の間から30 - 40cmほどの花茎を伸ばす。花期は8 - 10月頃。花は半球形の散形花序で白い小さな花を20 - 40個もつける。花弁は3枚だが、苞が3枚あり、花弁が6枚あるように見える。雄蕊(おしべ)は6本、子房は3室になっている。子房は熟すると割れて黒色の小さな種を散布する。中国西部が原産。日本では本州から九州に野生し、これを自生とする向きもあるが、疑わしい。株分けまたは種によって増やす。独特の臭気があることから「においきらう」(香嫌)、これが「にら」に変化したともいわれ、また、美味であることから「みら」(美辣)が「にら」に変化したともいわれる。この匂いのため、禅宗などの精進料理では五葷の一つとして忌避される。匂いの原因物質は硫化アリル(アリシン)などの硫黄化合物である。


生活する花たち「白むくげ・溝萩・瓢箪」(東京・向島百花園)

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