俳句日記/高橋正子

俳句雑誌「花冠」代表

11月15日(日)

2020-11-15 12:03:03 | 日記
晴れ

●英国アムネスティのクリスマスカードと来年のぐりとぐらのカレンダーを注文。

●「俳壇12月号」来る。
林望先生の「いざ往かな、独吟行へ」を読む。林望先生の肩書は作家となっているが、書誌学者なのではないだろうかと思う。普段リンボー先生と呼んでいる。
「笈の小文」に及ぶ話と、川瀬巴水の話がある。

木版画家の巴水のことを先に言うと、リンボー先生によれば、「巴水も芭蕉と同じく、旅の詩人であった。日本中を隈なく歩き回って、そのどこかに眠っている無名の美景を発見し、描くことに生涯をかけたのである。」。巴水の版画に私が良くよく知っているところはないかとネットで探すと、ある。日本中隈なく歩いた証拠であろう。生家から1キロほどの岬の「備後・阿伏兎観音」(昭和14年)。これには帆掛け船が描かれている。戦後10年くらいまで、瀬戸内海の沖には帆掛け船が浮かんでいた記憶がある。そして「松山城名月」(昭和28年)。城門から東の月を見たもの。これらが、無名の美景ということになる。値段にして前者が、ほぼ45万円、後者が、ほぼ30万円。リンボー先生はこの巴水がお好きらしい。「笈の小文」の「見る處花にあらずといふ事なし」の絵画版であろう。前にリンボー先生のエッセイに川本臥風先生の「蕗のとう刻まれ俎板にちりぢりに」(正確な記憶ではないが)を挙げておられた。なんでもないところの美は、肩が凝らなく、身に馴染んで、作者の精神の有り様が見えて面白いのだと思う。
●巴水の「阿伏兎観音」を描いた位置は、ほぼ分かる。観音さんの石段を下りて足場の不安定な細い道を進み、岩場に突き当たる。その岩場に腰かけて描いたと思われる。岩場の裾は急に深くなって、水が青く寄せて来ている。そこから竜宮へでも行けそうな雰囲気である。「崖の上のポニョ」のポニョが泳いでくる場所である。
●巴水の「松山城名月」は、城門を潜り抜けると東側が広く見える広場がある。2、3月なら梅が匂うだろう。石段を上り、城門をくぐりほっとしたところの眺め。そこに城の下の方から、東の空から月が浮いて来るように上る。二人の人が描かれている。抒情的という。
コメント
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