珈琲一杯分の話

2018年2月26日スタートのただのボヤキカフェです。
毒とユーモアを楽しんで頂ければ幸いでございます。

素晴らしいモラル

2018-04-18 | 日記
数年前、斜め隣に家が建って、若い夫婦と、これから幼稚園に上がるくらいの女の子の3人家族が引っ越してきた。
ところが二か月くらいして旦那様に転勤辞令がきて、一家はかなり遠い地方にまた引っ越すことになった。
やっと荷物も片付いて落ち着いた矢先のこと。奥さんは話を聞いて半日寝込んだそうである。

さてその間に、新築の家は誰かに貸すことになって、入ってきたのがインド人の一家だった。
直接聞いたわけではないけど、旦那様はIT企業にお勤めで、奥様は教師らしかった。
そのご主人は結局見たことなかったけど、奥さんはサリーを着た、どこから見てもザ・インドという感じで、あと幼稚園くらいの男の子が一人いた。
そして、そののちの約3年間、私はあることに悩まされることになった。

台所の窓から流れるカレーの匂いが、うちのベランダの洗濯物を直撃した。
その匂いは日本のそれと違って、何を煮込んだらあの匂いになるんだろうか?どこか甘い、独特のものだった。(正直よい匂いではなかった)
それから月に数回パーティーが催されて、陽気な騒ぎ声が筒抜けに響いてきた。
何を言ってるのかわからないので聞き流せるんだけど、彼らには近所に配慮という観念がないことはわかった。

尊重とか異文化への理解というものが必要なら、私は少なくとも三年間はなんとかできたぞ(笑)
やがて元の家族が戻ってきた時、家に匂いは染みついていないのかだけが心配になったけど。

以来、夜は近隣に配慮するという当たり前と思っていた、何気ない日本人のモラルの高さを再確認した次第である。
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プロフェッショナル

2018-04-18 | 娘と夫の話
娘が小三の夏休みの時。
街の駅前で信号待ちをしていたら、ちょっと小ぎれいな恰好をしていたオバサンが娘のことをジッと見ているので何だろうと思ったら、名刺を渡されてこう言われた。
「私はこういうものですが、興味がありますか?この子の顔つき、人を魅く印象がありますので。興味があったら連絡ください」
そこにタレント事務所のような会社名が書かれていた。
よくあるインチキ商売なんだろうなと思って、適当に流して名刺だけ受け取って帰った。

帰ってから名刺に書かれている会社を検索してみたら、一応ちゃんとしたタレント事務所だということはわかった。
娘に訊いたら「やりたい」と言われて、夫に訊いたら「やめとけ」と言われた。

夫はテレビや映画関係の仕事をしているので、そういうことには精通している。
そういう仕事がどういうものかわかっている上で、彼は言った。
「一回だけいうけど俺は勧めない。だけど経験しないとわからないんだろうから好きにしたらいい」
 
迷った結果、私は娘と一緒にその事務所を訪ねてみた。
現れたのはチャラチャラした怪しげな人ではなくて、落ち着いた感じの常識的な年配のおじさんだった。
話している内容もしごくまもともであった。
偏見は取り外されたものの、返事は本人に任せるしかないかなあと娘に意志を訊いた。
「やりたい!」
と娘が言ったので、私はとりあえず一年間の契約をした。

以下、結論から言います。
それからひっきりなしのオーディションの連絡が頻繁にメールに入った。
私は月から土まで仕事をしているし、娘は夏休みが開けたら当然学校がある。
そんな中で貴重な時間や、やるべきことを割いて毎回つきっきりになる覚悟が本気であるのか?ってこと。

事務所に所属してわりとすぐに、
「禁煙CMの選考に書類審査が最終まで残りました。連絡をお待ちください」
などと素人をくすぐるメールがきて、
後に
「残念ながら今回は見送られました」
なんて言われる。
それから何日かして「選考されました」という連絡がきたのは、某学習教材のCMだった。
実際はエキストラにすぎないその他大勢のために、貴重な休みを朝4時起きして、まだ真っ暗な早朝に新宿に集合した。
美味しくない弁当を渡されて、千葉の海っぺらまで延々バスに乗せられるこ数時間。
一日かけて撮影が終わって、自宅に着いたのはとっぷり暮れた夜だった。

CMは「ちびまる子ちゃん」の放映中で流された。
そこに豆粒くらいに映っているくらいのものが何だっていうのか。
でもそんなこんなの端役の積み重ねをすることが、「仕事」というものである。

 仕事ってどこまでも本気じゃなきゃダメなんだ。
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