ゆっくりかえろう

散歩と料理

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夜は短し歩けよ乙女

2012-04-20 | 読書

 森見登美彦氏著
 面白く読ませていただきました
 作者の本を読んだのは2冊目
 前作とは随分違うタッチで 全く別の作者のよう

 でも舞台は前作「きつねのはなし」と全く同じ京都大学界隈と
 地図で見れば実に狭い範囲のなかでのお話ですがうまく完結しています

 のっけからその大時代な言い回しに 「あ、これ めんどくさそう」と思いながらも 
 だんだん物語りに引き込まれてゆきます
 作品はダブルキャストで  大学生である私(男性)と黒髪の乙女(後輩)の
 一人称同士の独白で進んでゆきます

 大学生である私は彼女に想いを伝えられず 延々と迷いに迷い
 毎日つけまわす示威行為におよび(普通こういうのはストーカー行為といいます)
 しかし彼女はそのことにはまったく気が回らず 「奇遇ですね」と毎日挨拶する始末

 かくして二人は想いを伝えられず空回りする「根性なし」の先輩と 超がつく鈍感な
 「黒髪の乙女」の延々とした楽しい追いかけっこの一年を綴ります

 それに関わる 大学関係の濃いメンバーがキャストとなり
 不思議なインナースペースになり
  狭い地域の広い世界が面白おかしく展開してゆきます

 近頃の大学生は揃いも揃ってなんでこんなに 精神年齢が低く うぶなんだろうと
 思いますが 考えれば彼らは 中学高校と受験に明け暮れ ろくに青春を味わえず
 大学生になってやっと開放され「モラトリアム」をしばし過ごすのです

 作者は登場人物にことのほか優しく 幾つものご都合主義という名の網の目を張り
 二人を結ぼうとするのですが 先輩は筋金入りの臆病者でオクテ 最後まで
 好きといえないのには さすがにじれてしまいます

 先輩のとことんネガティブな性格と 黒髪の乙女のどこまでもポジティブな
 性格の対比 超、運の悪い先輩に 超、運の良い黒髪の乙女と
 物事はものの見方考え次第で 良い方にも悪い方にも転がってしまうことに
 気づかされます

 めんどくさい文章に慣れてくると それもまた心地よく 上質のエンターティメント
 で有ることに気がつきます

 この本でご飯3杯はいけることうけあいです

 



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