日本名・小泉八雲の名で知られるラフカディオ・ハーンの足跡を辿る汽車の旅。
ラフカディオ・ハーンは、イギリス人の父とギリシア人の母を持ち、
幼少の頃はイギリスで育った。父は軍人で海外生活が長く、ほどなく離婚して
失踪する。母は彼をイギリスに残したまま故郷に帰り、彼は親戚に育てられる。
不遇の環境だったが、叔母の援助でなんとか学校を卒業しアメリカへ渡る。
アメリカではいくつかの街を放浪し、シンシナティで新聞記者となり、
遠い異国・日本に渡って、ここが自分の故郷となる。
この本では、アメリカを基点に大陸横断鉄道や日本の旧東海道線等を使って
ハーンの足跡を辿りながら、彼の人生の紹介と日本での生活を考察している。
また旅の途中で、著者の祖父とハーンが同じ世代で縁があったことを知り、
それがこの本を書くきっかけになったと云う。
文章が大変読みやすく、ハーンの人生と著者の行動を織り交ぜた構成や
背景知識なども豊富で、読んでみてとても楽しめた。
ハーンが日本に来た理由のひとつとして、パーシヴァル・ローエルの
「極東の魂」などの著作に触発されたのではないかと推測している。
ローエルは「火星の運河」の発見や冥王星の存在を予言した天文学者でもある。
ローエルも日本に魅せられた人物の一人だが、ハーンとは全く違うスタンスで
日本の風俗を見ていたという考察は面白かった。小泉八雲として帰化したが、
八雲というのはハーンの当て字「ハ・ウン」という説もあるが、これは俗説と
言われている。でもこの本で紹介しているハーンは、ジョーク好きであり、
この説も間違いではないようにも思える。
ある人物の足跡を辿る汽車の旅も面白そうだ。老後の楽しみとして、
このような旅を企画してみるのも悪くないと思う。
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