世界はキラキラおもちゃ箱・第3館

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かえるの王さま・5

2015-11-19 03:40:14 | 夢幻詩語

 姫さまは泣きそうになりました。醜くて、ぬめぬめびちゃびちゃしているかえると一緒に寝るなんて、考えるだけでぞっとします。でも、おとうさまの言いつけは守らなくてはなりません。
 仕方なく、姫さまはかえるをつれて、自分の寝室に向かいました。姫さまが寝巻に着替えて、ベッドの横に座ると、かえるは嬉しそうにびよんびよんとはねました。
「これであなたとわたしは、ほんとうのともだちになれますね。そうしたら、きっといいことがありますよ」
「どんないいこと?」
「それは今は言えません。でもわたしは、あなたを悲しめるようなことはしませんから。少しの間でいい、辛抱して、わたしといっしょに寝てください」
 そう言ってかえるが姫さまの寝床に這い上がってきた時、お姫さまはもうぞっとして、怒りに体がふるえました。こんな醜いかえるふぜいが、何と偉そうなことを言うのでしょう。姫さまは、思わずかえるをつかみ取り、あっという間もなく、そのかえるを壁に向かって叩きつけてしまったのです。かえるはきゅうっと気を失って、ずるずると壁を滑って床に落ちてきました。
「あんたなんかだいきらい、そこに伸びて、一晩中眠っているがいいわ」
 するとそのとき、不思議なことが起こりました。床の上にのびたかえるの姿から、もくもくと煙のようなものが出て来たかと思うと、いつしかそこに、長い黒髪の美しい青年の姿があったのです。姫さまはびっくりして、まじまじと青年の顔を見ました。
「おやおや、なんてひどい姫君だろう。でもなんとか、呪いの魔法は解けたようだ」
 青年は頭をふりながら、ため息まじりに言ったのです。


  (つづく)




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