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湿りついた塩のような心を
胸に重くまさぐりながら
森の中を歩いていました
木漏れ日の明るい山道のすみには
端正な形をした青いその花が
小さな星のように散らばっていました
わたしは地に手をついて
花の上に顔をかぶせながら
思わず声をあげて泣いていました
感情に素直になることが
なかなかできない年になりましたから
子供のように泣いてしまったのは
ずいぶんと久しぶりでした
悲しみは どんな悲しみも
たいていは自己の付属物ですから
それを誰かと分かち合うことが
いかに難しいことかを
もう
知っているはずなのですが
涙が とまりません
どうしても とまりません
ああ 神様
私はなんて弱いんでしょう
風がおろおろと
木の葉を散らしました
春を過ぎて
初夏にさしかかる光が
森の上に満ちようとしていました
(花詩集・35、2006年4月)