昨日のクリスマス・イヴは如何お過ごしでしたでしょうか。私は折り紙でサンタを作ったこと以外は一切特別なこともせず、普通の土曜日を謳歌しておりました。
ところで、昨日はクリスマス・イヴでしたが、クリスマス・キャロル《きよしこの夜》が初演された日でもあります。
ドイツ語原詞の《Stille Nacht》はヨゼフ・モール(1792〜1848)によって書かれ、
19世紀オーストリアの小学校教師・教会オルガン奏者のフランツ・クサーヴァー・グルーバー(1787〜1863)によって作曲されました。
《きよしこの夜》は1818年12月24日から25日にかけての夜に、オーストリアのオーベルンドルフの聖ニコラウス教会で初演されました。そして、この曲の成立にはひとつの逸話が残されています。
この年のクリスマス・イヴの前日に、教会のオルガンがネズミにやられたか何かの原因で音が出ない状態になってしまい、大事なクリスマスに歌う賛美歌の伴奏ができなくなってしまったのです。そこで急遽ヨゼフ・モールは《Stille Nacht》の詞を書き上げてグルーバーに渡し、
「この詞を使って、ギターで伴奏できる賛美歌を作曲してくれ。」
と依頼しました。
グルーバーは最初
「教会でギターを弾いても誰も気に入らないのではないか?」
と懸念していたようですが、ヨゼフの説得もあって詞に曲をつけることを了承しました。グルーバーは一晩中懸命に考え続け、教会でミサが始まるわずか数時間前になってこの曲を完成させた…といいます。
近年の研究では、ヨゼフは既に1816年には詩を完成させていたという説が有力です。それでも、グルーバーがかなりの短期間で作曲したというのは正しいと推測されています。
上の楽譜を見ると、《Stille nacht》の歌詞は6番まであることが分かります。ただ、現在日本で歌われている《きよしこの夜》は3番までが一般的です。
そんなわけで、クリスマスの今日は《きよしこの夜》の原曲《Stille nacht》をお聴きいただきたいと思います。突貫工事で作られたとは思えないくらいの名旋律を、聖トーマス教会少年合唱団の歌唱でお楽しみください。