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共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

二大国宝56年振りの揃い踏み

2015年05月06日 23時05分57秒 | アート
今日はゴールデンウイーク最後の休日となりました。ダメ人間として何となく自堕落な連休を過ごしてしまいましたが、今日ばかりは美術観賞のハシゴをするというしっかりとした予定を立てて出かけることにしました。

先ず向かったのは表参道にある根津美術館です。ここでは今《燕子花と紅白梅》展が開かれています。今年は江戸時代中期に活躍した画師・尾形光琳の300年忌に当たるため、それを記念して、根津美術館所蔵の《燕子花(かきつばた)図屏風》と、静岡県熱海市にあるMOA美術館所蔵の《紅白梅図屏風》という光琳作の二つの国宝の屏風が、実に56年振りに一堂に会して公開されるという大変貴重な展覧会です。

《燕子花図屏風》は光琳円熟期の作で、伊勢物語の東下りの場面をモチーフに画かれたものと言われています。と言っても物語の登場人物等は一切画かれず、金地の画面には群青と緑青だけで簡潔に画かれた燕子花の花が咲き乱れているだけです。二双一対の屏風で、右隻は画面のほぼ中央を横切るように満開の燕子花が画かれ、左隻には画面の左上から右下に向かって斜めに燕子花が画かれ、右上の部分には余白が大胆に空けられています。

燕子花ではありませんが、オランダの画家フィンセント・ファン・ゴッホや、フランスの印象派絵画の巨匠クロード・モネをはじめとする画家達にもアイリスを描いた作品があります。モネのアイリスは静物画として周囲の調度品等も描かれていますが、ゴッホのアイリスは花瓶に活けられたアイリスの背景は、ただ鮮やかな黄色一色に塗られています。もしかしたらゴッホはパリ万国博覧会でこうした屏風画等を目にして、その大胆な構図に影響を受けたかも知れません。

因みにこの燕子花の花は、一説には型紙を用いて画かれているとも言われています。実際に見てみると同じパターンの花の固まりが何箇所かに見られ、それが画面に心地よい一定のリズム感をあたえています。

一方の《紅白梅図屏風》は光琳晩年の作とされています。金地の画面の二双一曲の屏風の右隻には勢いよく枝を天に向けて伸ばす紅梅の若木が、左隻にはゴツゴツと力強い幹から画面上に弧を描きながら地面スレスレに枝を伸ばした白梅の古木が、そしてその二本の梅の木の間にはSの字をいくつも並べたような『琳水(りんすい)』という独特の表現で水流を表した川が画かれています。

この屏風を生で観るのは今回が初めてでした。実際に観てみると、リアリティのある梅の木の幹や枝の表現に対して、まるでスタンプを押したかのように簡略化された梅の花との描き方の対比が実に特徴的でした。また屏風として立てることによって中央の琳水の川も両端の梅の木も想像以上の立体感になって、優美さだけでなく見る者に迫って来るような力強さも感じました。これは図録を見ただけでは分からないことでしたので、感動的な発見でした。

この二つの国宝が、いつまた同時公開されるか分かりませんので、この貴重な機会に是非足を運んで、天才画師光琳の息吹に触れてみて下さい。
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燕子花咲く庭

2015年05月06日 21時54分11秒 | 旅行
根津美術館には広い日本庭園が隣接していて、所々に茶亭が建てられています。ここでは実際に茶会も開かれていて、この庭園も茶会の客が楽しめる回遊式庭園となっています。

美術館の建物から庭園に出ると、池に向かって下る緩やかな階段があります。その階段を下りて池まで行くと、ほぼ池一杯に燕子花の花が咲いています。《燕子花図屏風》を所蔵する美術館としての、心憎い演出です。

ちょうど見頃を迎えていたようで、池のほとりまで下りて行ってみたら御覧のようにほぼ満開になっていました。新緑が目に涼しい庭園にはツツジやコデマリが咲き、対岸にはイロハモミジの赤い葉が新緑に映えていました。

訪れた人達は様々に撮影ポイントを求めて、あちこちから撮影していましたが、このポイントには何故か殆ど人がおらず、ゆっくりと撮影することができました。
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反対側からも

2015年05月06日 21時37分50秒 | 旅行
池の対岸に行けるようになっていたので、そちらにも向かってみました。先程の写真で遠くに写っていたイロハモミジのところから、先程の撮影ポイントの方角を逆撮影してみました。

イロハモミジの赤い葉の向こうに、紫色の燕子花の花が咲き誇る様は圧巻です。この展示期間中が見頃だということでした。
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思わぬところに!

2015年05月06日 21時31分04秒 | 旅行
お庭の散策を終えて、美術館の地下一階にある入口から講堂に入ったら、何とそこに原寸大の《燕子花図屏風》のレプリカが置かれていました。しかも撮影自由ということでしたので、お言葉に甘えて撮影させて頂きました。

撮影してから、パーティションの限界くらい、それこそ鼻息がかかるくらいまで近づいて細部までよくよく観賞してみました。花弁を近くで見てみると、ちょっと厚みを感じるくらいに群青が置かれているのに気づきます。一方で葉の部分の緑青は、ほぼ同じ筆致で一気に画かれたのが分かります。ガラスケースの向こう側の屏風では、さすがにここまでの細部は分かりません。

そういった細部の確認もできて、非常に有意義なレプリカでした。
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反対側からも

2015年05月06日 21時15分35秒 | 旅行
折角なので、左隻側からも撮影してみました。

これだけ横長の屏風絵を縦長の画面に収めるためには、どうしてもこうやって斜めに撮らざるを得ません。しかし、折り目の向こう側になった面の絵柄が見えていないにもかかわらず、絵として全体的なぎこちなさを殆ど感じないのがお分かり頂けますでしょうか。

光琳は、こうした様々な角度から屏風絵を観賞されることも計算の上で、画面上の燕子花を絶妙な箇所に配置しているのです。これも非常にデザイン的に簡略化された絵柄だからこそ成せる技と言えるでしょう。

こちらの講堂では、このレプリカの《燕子花図屏風》を観賞しながら、お抹茶とお菓子を¥1、000で楽しむことができます。フリーの休憩スペースもありますので、お時間のある方はこちらにも立ち寄ってみて下さい。
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こちらは生誕300年記念

2015年05月06日 20時48分35秒 | アート
根津美術館を出て、表参道駅まで戻ろう…としたのですが、ふとふりさけ見ればかなり間近に、次の目的地である東京ミッドタウンや六本木ヒルズがそびえ立っているのが見えました。

『そういえば、今から行こうとしている乃木坂駅は千代田線でここから一駅だけ隣なだけだし、目的地があんなに大きく見えてるんだから、歩いていけるんじゃない?』

と思い立った私は、特に地図を検索するでもなく、ただひたすら見えている東京ミッドタウンの方角に向かって歩き出し、20分も歩かないうちに無事に目的地に到着しました。東京の地下鉄の一駅分って、意外と近いものです。

次に来たのは、東京ミッドタウン内にあるサントリー美術館で開催されている《蕪村と若冲》展です。実は与謝蕪村と伊藤若冲という二人の天才画師は同じ1716年生まれで、今年が数えで生誕300年目に当たるのを記念して開かれた展覧会です。つまりこの二人は、先程観てきた尾形光琳の完全な次世代の画師達ということになります。

京都の大店の八百屋の長男に生まれた若冲と、大坂(大阪)の農家に生まれながら江戸に出て俳人として活躍した蕪村ですが、本格的に画師に専念したのは壮年期になってからと言われています。狩野派に学んだ若冲と文人画からスタートした蕪村ですが結構仲がよかったようで、蕪村が京都に移住した時には、若冲の家があった現在の京都市四条辺りに居を構えていたようです。また同時期に活躍していた池大雅や円山応挙といった画師達も共通の友人で、尚且つ彼等も同じ四条界隈に住んでいたようなので、割と頻繁に行き来があったのだそうです。

素朴で味わい深い作風の蕪村は、初期の作品は掛け軸も小品であったり、屏風も最小限の表現のものが目立ったりしますが、晩年にはかなり細密な山水画の大作を手掛けるまでになります。一方、《動植綵絵》に代表される超絶的とも言うべき写実が特徴の若冲ですが、晩年にはむしろ墨一色の大胆な筆致で対象を簡略かつ的確にとらえるという境地に至りました。この展覧会では、そんな彼等それぞれの特徴が表れた作品が並列的に展示されていて、非常に興味深いものでした。

この展覧会は今度の週末で終わってしまいますので、興味のある方はお急ぎ下さいませ。
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