にのじ@ばよりん的日常

バイオリン弾きにのじの日常生活!
仕事や遊び、色々書き込んでます。お気軽にコメントを書いて下さいね!

奇跡の夜

2011-02-19 00:57:18 | オーケストラ
夕べのオペラシティ・コンサートホールにはきっと神が居たのだと。
シェエラザードはまさにその神の創造、ここまでの高みに上り詰める演奏などそうそうお目にはかかれない。
演奏しながらホールの空間に音楽が満ち満ちて、聴衆の心に響いていくのがわかる。
不思議な情熱に突き動かされながらの演奏、どの一瞬も輝いていて。
内から湧き出るエネルギーは留まる所を知らず。
物語の全てを最上の形で表現し尽くす。

昨日のオペラシティ定期、フェドセーエフさんの指揮でシェエラザード。
ゲネプロの時から予感はしていたのですが。
本番は本当にこれ以上の演奏は無いと言っても過言では無い程の輝かしさ。
演奏していても全てが手に取るように感じられるのです。
すべてのパートの音が聞こえていて、お互いが何をやるのか。
何をこれからやろうといているのか、全てが解る。
いつかチョンさんとのマーラー5番(アジアフィル)で演奏中に感じたことが再現されたのです。
素晴らしい夜でした。

何も付け足すことはありません。
ただただ素晴らしい夜でした。


付け加えるならば、荒井さんのソロ。
考え抜かれて美しすぎるソロでした。
ですが前半のチャイコフスキーの演奏中にD線が切れてしまったのです。
休憩時間内に急いで新しい弦と交換はしましたが。
新しい弦はどんどん伸びて音程が下がって行ってしまう。
音色も微妙に他の弦と違ってバランスも悪い。
我々ならば不安感が先に立って失敗も。
ですがそんな事は微塵も感じさせない見事なソロでした。
最初から最後まで揺るぎない自信に満ちた音でその場にいた全員を魅了してしまいました。
流石としか言いようがありません。
素晴らしかったです。

偉大なるマンネリズム

2011-01-05 02:13:24 | オーケストラ
昨日はNHKの新春恒例「ニューイヤーオペラコンサート」の本番をNHKホールで。
年末の紅白に匹敵する歴史を誇る長寿コンサートです。

私が東フィルに入った頃、既に伝統が出来上がっていたコンサートです。
その頃は戦後のクラシック界を背負って来た大御所達が最後の輝きを放っていたのです。
そこへ佐藤しのぶさんや市原多郎さんら新世代の歌手が登場して来て世代交代の息吹が見られたちょうど曲がり角。
そんな古き良き時代と来たるべき21世紀がせめぎ合って、でも共存していたのです。

一人の歌手がアリアを思い切り歌う。
そして短くはあるけれどオペラの一場面を切り取るようなアンサンブルもあり。
そんなスタイルは昔と少しも変わっておりません。
特に今年は原点に帰ったようなスタイルでした。

時折ですがそこから敢えて逸脱しようという意図の演出の年もありました。
オケがステージ上に上がってみたり。
去年のように全体を一つのコンセプトで塗り潰したような時も。

元来歌を聞かせる番組ですから余計な事はしなくて良いと思う人もいるだろうし。
いやいや時には変化があっても良いだろうと言う人もいるだろうし。
今年の様なオーソドックスな年が何回か続いた後。
ちょっとひねった年がある。
そんな事を繰り返しながら続いて行くのではないでしょうか。

それから気になる事が。
それはこのホールのピットの構造。
元々ピットと客席を隔てる壁がきちんとした構造物ではありません。
枠に布が貼ってある様な、そんな簡単な構造なのです。
ですから客席の声や物音が全部ピットにそのまま侵入してきてしまう。
昨日も最前列の女性客の話し声がずっと聞こえていました。
歌手が歌っている最中もずっと聞こえていましたから、周囲のお客さんも迷惑だったのではと。
そんな材質のピットに、更に赤く分厚い布が張り巡らしてありまして。
どう考えても音を吸収してしまうのです。
まあ放送用の多目的ホールですから仕方は無いのかもしれませんけど。
新国の広く、ピット内の音を少しも漏らさず客席に届けようという構造のピットになれてしまうと。
狭く音の飛ばないピットは苦労の連続。
薔薇の騎士をあんな少人数で演奏しなければいけないなんて。
とは言えピットを大きくするなんて事は出来ませんので仕方が無いのですが。
数年前、ピットの側面と後ろの壁を全て取っ払って広げた事がありましたが。
結果は・・・・・。

昨日も生放送、
大晦日のカウントダウンも時間との戦いでしたが。
昨日も時間の枠にきちんと最後まで収めるのが大変。
最後の曲が終わってからは放送終了までの時間が短かったですね。
オプションとして最後の乾杯の歌の繰り返しを一回省くという奥の手もあったのです。
が、昨日は何とかなりそうだと言うのでオリジナルの3コーラスで。
なかなかスリリング!

今年もあとわずか

2010-12-27 01:04:13 | オーケストラ
昨日は雪の降りしきる盛岡で第九を地元の合唱団と演奏して来ました。
新幹線で北上、郡山付近で雪になり福島では小降りに。
仙台あたりはあまり雪が見えないのに岩手県に入る頃から大雪に。
真冬日の盛岡ではありましたが関東地方の乾燥し切った空気とはやはり違いますね。
気温は低くとも優しい空気なので外にいても大丈夫。
もっともホールは駅前なのでそんなに外を歩く事もありませんでしたが。

共演した地元の合唱団の出来が本当に見事でした。
今まで様々なアマチュアの合唱団と第九をやってきましたが、今回の盛岡の合唱団はその中でもベストとも言える見事さ。
声がきちんと出来ている事、音程がしっかり取れている事。
表現の自由さがある事。
本当に素晴らしい合唱でした。
しかも、メンバーには制服姿の小学生や中学生も入っているのです。
学生服姿の男子中学生が楽しそうに第九を歌っているんです。
小さな女の子も一生懸命に歌っていて。
それが大人たちにピッタリとはまっている。
驚きました。
みんな良い表情で歌っていました。
こちらも共演していて楽しくて。
またいつか盛岡で共演出来たらと思いました。

そして今日はオペラシティで第九の最終日。
合唱は東京オペラシンガーズに戻っての最終決戦。
流石の合唱ですね。
今回はソロも含めて声が素晴らしい第九でした。

で、今年の分のお仕事はこれでおしまい。
明日からは来年早々のNHKニューイヤーオペラのリハーサルになります。
2日間のリハーサルの後はいよいよジルベスターコンサートが待ち受けております。
この仕事がある事に依って東フィルには仕事納めと仕事始めの境目が無くなっていますので。
今年の仕事とも来年の仕事とも言える不思議なコンサートなのですが。
とにかくマーラーの復活が今年最後の曲となる事だけは確か。
本当に今年もあとちょっとですね。

さて頭の事ですが。
強打した脳天付近、まだ痛みが残ってはおります。
しかしその他の症状は全く出て入りませんので暫くはこのまま痛みに耐えつつ様子を見てみようと思っています。
皆様からの暖かいお言葉やアドバイスを多数いただきまして本当にありがたく思っています。
今日は演奏中、頭を振ってみても痛みが酷くなる事もありませんでした。
このまま仕事を続けられそうです。
ご心配をおかけしてしまい申し訳ありませんでした。

まずは一回戦

2010-12-21 00:19:47 | オーケストラ
昨日は所沢ミューズで今年の第九の一回目の本番でした。
プログラムは第九のみ。
東京での3公演は前にモーツァルトが演奏されますが所沢と盛岡は第九のみ。
なので短い時間の公演ではあるのですが、かといって相手はベートーベンですから中身はたっぷり。
決して侮ってはいけない曲なのです。

年末の恒例となっている第九。
他のオケでは二桁の公演を行う所もあるようですね。
私の記録としては12月に13回というのがありますが。
その年は東フィルとしては異例中の異例。
普段は片手で足りる回数なんです。

しかしさすがに10回を越えるともう何が何だかという状態にもなってきます。
侮ってはいけないはずなのに、今日はこの辺で。
なんて事にもなりかねない。
危険な事この上ありません。
きちんと心を込めて演奏できる回数が良いですね。

エッティンガーさんの第九、チョンさんとは全く違いますがダイナミックであるところは同じ。
表現の幅が広いのです。
ただその幅の方向性は全然違う。
今流行りのピリオド奏法とは真逆という点では一緒。
でも向いている方向が違うので出てくる音楽は全く違います。
先日も書きましたが好き嫌いがはっきり分かれると思うのです。
明日はサントリーホールでの本番。
ホールの個性も違いますからどんな音楽が飛び出すか。
こうご期待!

いよいよ第九

2010-12-19 01:35:28 | オーケストラ
学校コンサートも終わり、いよいよ第九に突入です。
昨日からリハーサルに入りました。
指揮は常任指揮者ダン・エッティンガー。
全部で五回の本番があります。

まず明日は所沢市のミューズで一回目の本番。
今日のリハーサルもミューズで行われました。
非常に開放的なステージです。
全く狭さを感じさせないホール。
気持ちが良いですね、実に。
ただその分楽屋は狭いですけど。
両方広いともっと使いやすいのですが。
その代わり舞台裏には広いとラウンジがあってここの居心地が最高です。

ここの他にサントリーホール、オーチャードホール、オペラシティと東京で三カ所。
盛岡市でも一回やりますがここだけ合唱団が地元の皆さん。
その他は全て東京オペラシンガーズという最強軍団が歌います。

今日のリハーサルでもオペラシンガーズはその最強ぶりをいかん無く発揮。
声も立派ですが音楽性もテクニックも備わっていますので、マエストロのどんな要求にも即座に対応。
こちらも安心して聞いていられます。

さてエッティンガーさんの第九。
ずいぶんと思い切った表現をする場面も。
良いのかなあ?と思う事もしばしばですが。
これがこのマエストロの真骨頂ですからね。
好き嫌いは分かれるかもしれませんが面白い音楽を作る事は確かです。
でも流石に声の扱いは見事ですね。
ソリストや合唱に要求する事の的確さ。
アドバイスの見事さ。
やっぱりオペラの人かな?

で、明日は所沢でマチネ。
今日の行き帰りも道が大渋滞。
特に帰りは凄い事になってまして。
果たして明日はどうなる事やら。

寒くても

2010-12-17 00:31:30 | オーケストラ
昨日と一昨日は学校コンサート。
火曜日は下田市立稲生沢(いのうざわ)中学校の体育館での本番。
ここに4校の生徒が集まりました。
稲生沢小学校に稲生沢中学校、稲梓(いなずさ)小学校に稲梓中学校の4校の生徒さんたちです。
下田はさすがに暖かい、その上にこの日は12月とは思えない暖かさ。
12月の体育館とは思えない、快適な温度。
気分よく本番をやらせてもらいました。

そして昨日は地元横浜は小田(こだ)小学校で。
前日とはちがい大きな小学校の大きな体育館、それが生徒でいっぱい。
体育館が大きくて温度が上がらず寒さは身にしみましたが。
でも最後の曲、「天国と地獄」で生徒さんも踊り出し。
我々も負けずに踊り出し。
体育館は大盛り上がり。
本当に楽しい演奏会となりました。

今回の指揮者は円光寺さん。
9月の後半も担当されていたのですが。
司会としても本当にお上手で。
盛り上げ方が素晴らしいのです。
最後の盛り上がりも円光寺さんあればこそ。
来月にも円光寺さんで学校コンサートがあります。
神奈川県1校と愛知県4カ所。
今度はどんな盛り上がり方になるのか?

夢ははかなく

2010-12-11 01:10:59 | オーケストラ
ディズニー・オン・クラシック、サントリーホール公演が終わりました。
楽しかった!
もうこの一言に尽きます。

ツアーメンバーはここまで既に30回もの本番をこなしてきていました。
ですからもうトップギアーに入ったまま突っ走っている状態。
そこへ横から飛びついて同じ早さでいきなり走らなくてはならないのがサントリーホールだけの我々。
それだけに体力的にも知力もつらいものがありますが、リハーサル中や本番の最中はもうそんな事を考えている余裕も無く。
目の前に現れる音と通り過ぎる一瞬を捕まえる事に専念。
でもメチャクチャに楽しいのです。
年に一回の特別な夜を十分に楽しみ尽くしました。

しかし、それだけに疲れ方も半端ではなかった。
家に帰り着いてソファーに座り込み。
そのまま一時間眠りました。

でも、やっぱり最高の夜。
まだ魔法がとけていないかも。

いよいよ

2010-12-09 00:38:24 | オーケストラ
今日はオーチャードホール地下のリハーサル室でDOCサントリーホール公演のリハーサル。
先週もリハーサルは行われましたが今日はシンガーも加わっていよいよ本番さながらのリハーサル。
色々な仕掛けも用意されていますが準備は整いました。

去年はツアーの一部でしかありませんでしたが、今年はこれが最初で最後のDOC。
ツアーの皆さんは既に30公演をこなしてきてます、出来上がり切っております。
そこへ単発で加わるのですから大変なエネルギーを要します。
でも面白いですけどね。

年々サントリーホール公演のリハーサルの出来上がり方のスピードが早くなっているように感じられます。
昔は2回の練習をびっちりやって何とか本番に間に合うという感じでしたが。
今年など始めからすすっと進んでしまう。
ツアー経験者が多く参加しているという事もあるでしょう。
どうやれば良いかを知っているメンバーで固まって来たんですね。
特に1stバイオリンなどは新たに加わったメンバーはツアー経験者ばかり。
いつもの顔がずらっと並んでいますので、思わず笑ってしまいます。

明日はいよいよ本番。
ここ一回に全てをかけて!

これで

2010-11-30 01:26:23 | オーケストラ
博多のアクロス福岡のホールでモーツァルトプロの本番。
ゲネプロでは余りに広すぎる空間に手こずりました。
響きが多過ぎて音の粒が聞こえてこないのです。
風呂場で更にエコーを掛けた感じと言ったらちょうど良いかも。

しかし本番、ほぼ満員お客さんが程良く響きを吸ってくれていい具合になったのです。
実に弾いていて気持ちの良い音。
ここでモーツァルトを演奏するという事の幸福感を胸いっぱいに感じつつ。
マエストロとの5回の本番も終了しました。

ジュピターが終わって何度目かのカーテンコール。
最前列の女性からマエストロにお花と籠いっぱいのイチゴのプレゼントが。
マエストロは何とステージの上でそのイチゴをパクリ!
コンサートマスターの荒井さんや各パートのトップにもイチゴをプレゼントして回って。
みんなで大笑い。
楽しいステージ風景となりました。

今日の本番でマエストロと東フィルとの10年間に渡るコラボレーションも一区切りとなりました。
マエストロと共に音楽を作って来た月日は何物にも替え難い大きな財産となりました。
これからは次の世代の指揮者エッティンガーさんと新しい時代を作れたらと思います。

そんな感慨も胸に抱きつつ、モーツァルトの大傑作の3曲を演奏していました。
一つ一つの音が胸に様々な思い出呼び起こし、また寂しさをも感じさせてくれたのです。
ステージ上のイチゴはまるで最後の晩餐のよう。
笑いながらも、心の中に寂しさも。

最後の

2010-11-28 00:12:38 | オーケストラ
ブルックナーの定期が終わって、次の定期はオール・モーツァルトの定期でした。
モーツァルトが最後に書いた三曲の交響曲、39番、40番、41番を一度に演奏するという演奏会。

それぞれの曲のキャラクターが全然違います、演奏する音色もそれぞれの曲で変えなくてはいけません。
またその中の楽章毎にも相応しい音がある、合計12通りの音楽と音色。
きちんと弾き分けるのはなかなかに難しい。
マエストロの要求を現実の物にする為の労力は桁外れの物が必要となります。

とにかくモーツァルト、悩ましくも怪しい魅力に満ちるモーツァルト。
天上の声が聞こえたかと思えば、次の瞬間には地の底からの慟哭も。
何回やっても答えは見出せませんね。
天才の音楽に挑んでは跳ね返される、そんな繰り返しです。

一昨日オペラシティーで行われた定期は非常な盛り上がりと見せました。
特に40番の終わった後の拍手は凄かった。
そしてコンサートの締めくくり、ジュピターの最後の音が消えた瞬間に爆発した拍手。
ブルックナーの時の静かでも力強い拍手とは違った高揚感。
これもまた忘れる事の出来ない夜。

さて今日は岐阜市のサラマンカホールで定期と同じモーツァルトプロ。
明後日はまた同じプロを博多のアクロス福岡で。
ミニツアーです。

そのツアーの移動日の明日は京都で息抜きをします。
岐阜の本番は午後3時からでしたので、終演後にそのまま京都まで移動して来ました。
明日もここに一泊して博多へは当日に移動します。
紅葉シーズンの京都、もの凄い人の数です。
なので明日は人があまり行かないだろうと思われる穴場を狙って紅葉を楽しもうかと。
そんな計画でおります。

天を目指す

2010-11-22 02:05:34 | オーケストラ
金曜日にサントリーホールで、今日はオーチャードホールで。
ブルックナーの交響曲第八番を二回、チョンさんの指揮で演奏しました。

思い出深く、そして大好きなこの曲を二回も。
チョンさんの指揮で演奏出来た事がただただ幸せです。

長い長い旅をして、天に上る道を見つける。
そんな曲です。
本当に長い、ゆったりとして巨大で。
深い思索から激しい慟哭。
人間の感情を揺さぶるような音響。
素晴らしい時間でした。

しかしこれだけの曲をマエストロの棒でとなると、これもまた大変な事態でして。
疲れ方は本当に本当に凄いものがあります。
頭の髄まで疲れました。
勿論体の方もクタクタ。
でも心地良い疲れです。
個人的にはもうこれ以上言う事はありません。

明日はゆっくり休みます。

偉大な音楽を

2010-11-19 02:31:27 | オーケストラ
昨日から始まった定期のリハーサル。
指揮者は久しぶりのマエストロ「チョン・ミョンフン」さんであります。
八月のアジアフィル以来という事ですが東フィルでとなると果たしていつ以来なのでしょうか。
去年の子ども音楽館以来かな?

で、曲はブルックナーの交響曲第八番です。
ただし今回はノヴァーク版最終稿での演奏です。
実を言えばハース版の方が好きなんですが、こればかりは仕方の無い事ですね。
近頃ではノヴァーク版がすっかり主流、ハース版で八番を演奏するのは
日本人では高関さんだけかも。

さてマエストロ、この偉大な音楽を実に雄大なスケールで描いて行きます。
どっしりと構えつつ、繊細な音色の変化で各局面の描き分けをして行くのです。
その音色に対するこだわりは半端では無く、いつにも増して厳しい要求を。
それを再現する事の困難さ。
体と頭とを酷使しつつの演奏となっていまして、疲労も半端ではありません。
元々ブルックナーの八番は体にきつい曲ですが。
加えて音色を描き分ける為に頭脳もフル回転。
リハーサルが終った時には頭の奥深い部分がジーンと痺れた感じにもなりました。

明日はまず一回目の本番がサントリーホールで。
日曜日が二回目、こちらはオーチャードホール。
果たしてどこまで深く深く掘り下げられるのか。
楽しみであります。

この八番という曲には色々な思い出がたくさん。
初めて生でブルックナーを聞いたのもこの八番。
朝比奈先生の指揮で大フィル、勿論ハース版。
始めて演奏したブルックナーの交響曲もこの八番。
まだ学生の頃、ジュネスミュジカルオーケストラで。
指揮は尾高さんで、この時はハース版とノヴァーク版の折衷版。

レコードを買って来てスコアと見比べたら全然曲が違う。
よく見たらレコードはハース版でスコアはノヴァーク版。
こんなに違うんだと感心しきりだったり。

明日の演奏がまた貴重な思い出の一つとして加わる事を期待して。
精一杯演奏して来たいと思います。

本家本元

2010-11-15 00:46:42 | オーケストラ
長岡から帰ってしばらく東フィルはお休みでした。
昨日からは次のお仕事のリハーサルとなっていて今日も続けてリハーサル、本番は明日、埼玉県は羽生市で。

今回の指揮者は重鎮外山雄三先生。
先生は作曲家としても活躍されていて、最も有名な作品は「管弦楽のためのラプソディー」です。
このラプソディー、色々な指揮者で演奏してきましたが何故か外山先生の指揮では演奏した事がありませんでした。
今回、初めて先生の指揮で演奏します。

今日はそのリハーサル。
このラプソディー、数年前に改訂版が出版され今ではほとんどのオケはこの改訂版で演奏しています。
旧版との違いといえば3小節長い事ぐらいですね。
途中で1小節、最後に2小節、長くなっているのです。

指揮者の中にはまだ旧版のスコアを使っている人も多く。
リハーサルで長さが合わずにアレっとなる事もあるのです。

今日のリハーサル。
まさか本家本元の先生が旧版を使っているなんて事は全く予想せずにいたのですが。
最後の最後で長さが合わず。
先生もびっくり。
ちょっと楽譜を見せて、とオケの楽譜を見れば新版の楽譜。
「こりゃ長いな」とおっしゃって新版で追加された2小節をカット。
ちょっとだけ短くなりました。

このラプソディーが今の長さになった経緯というのがありまして。
以前このブログでも書いたかもしれませんが。
伝説となったN響のヨーロッパ公演のアンコールピースとして書かれたこの作品。
元々は20分以上もある大作だったそうです。
これを岩城さん達がバサっと大胆にカットして今の長さに縮めてしまったのだそうで。
岩城さんは更に炭坑節もカットしたかったとも。
あれは人工的に作られた民謡だからとおっしゃってました。

我々がアンコールとして海外で演奏した時は更に「あんたがたどこさ」と「ソーラン節」に「炭坑節」をカット。
イントロからすぐに「追分」に飛んで「八木節」という短いバージョンで演奏しました。
外国のお客さんにはこのくらいで丁度良かったようです。

岩城さんが亡くなる前、この曲を本来の長さで演奏したいのだとおっしゃってました。
外山さんに申し訳ない、オリジナルの姿で演奏したいので今楽譜を探してもらっているんだ。
というお話をなさっていたのですがついに果たされないまま岩城さんも亡くなられて。
ラプソディーの本来あるべき姿を聞くことは叶わなくなってしまったようです。
残念な事です。

何時の日か外山先生ご本人が原典版を復活させてくださるとうれしいですね。


続けるという事

2010-10-25 01:22:37 | オーケストラ
今日は白金フィルの本番がミューザ川崎でありました。
毎年1回のペースで積み重ねてきた本番も今日が19回目。
来年は第20回となります。
結成20周年は再来年なのですが来年で一つの区切りです。

雨の中、8割方の客席を埋めてくださったお客様には本当に感謝です。
このオケは不思議と観客動員に恵まれていて幸せなオケなのです。
アマオケの中にはなかなか動員が伸びなくて思案を重ねている所もあるのですが。
白金は本当にお客さんが入ります。
有り難い事です。

で、出来の方は。
うーん、何とも言い難いかなあ。
積み重ねてきた年月で良くなってきた部分と。
失われていく部分、そのバランスが問題だと思うのです。
若いメンバーも増えてきて元気は相変わらずなのですが。
結成当初からのメンバーもだいぶ年齢を重ねておりまして。
技術の衰えという問題に直面せざるを得ない。
この2年くらいでそのバランスが崩れて来ているように感じるのです。
果たして今までのような練習の形態で良いのかどうか考える時期に来ているのではないかと。
そんな事を思いながらの本番でした。

色々な意味で考える時期なんではないかな。
もうすぐ20年ですから。


で、明日は尼崎へ。
オペラシティで他の仕事のリハーサルを行ってから尼崎へ移動となります。
毎年恒例の高校生の為のオペラ観賞教室at尼崎。
出し物も蝶々さん。
行って参ります。

魔法の杖

2010-10-19 01:33:13 | オーケストラ
今日は『炎』のコバケン先生の指揮でヨハン・シュトラウスとベートーベン。
ですが、コバケン先生が振ればどんな作曲家の作品でもコバケンの「何とか」になってしまうのが凄い所。
今日も「こうもり序曲」や「美しき青きドナウ」などシュトラウスの有名な作品と「ベト7」というプログラム。
ですが全てが「コバケン」の「こうもり序曲」や「コバケン」の『炎』の「ベト7」に。
凄い個性ですよねえ。
あれだけの濃い個性を持ち、それを存分に発揮して、まわりの人間を全てそこに巻き込んでしまう。
そんな事の出来る日本人はそうそういませんよねえ。
時にはお客さんまで煽ってしまうのですから。

そんなコバケン先生の指揮棒。
間近で見ると何とも不思議な形をしているんです。
特注品なのか、それとも自家製なのか。
持つところが独特の形をしていて、しかも大きい。

どこかで見た形だなあと思っていたのですが。
そう、あれは魔法使いが持っている杖とそっくり。
ですがガンダルフや白雪姫に出てくる魔法使いが持っているような長い杖ではなく。
ハリー・ポッターが持っているような短い魔法の杖にそっくり。

あの棒一本でオケやお客さんを魔法にかけてしまうのですから。
コバケン先生は立派な魔法使いとも言える訳で。
いや、全ての巨匠クラスの指揮者はみんな一種の魔法使いです。
そんな魔法が自由に使える指揮者の少ない事と言ったら。
そう言えばチョンさんの指揮棒も例の杖に似ているし。

ただの棒なんですが。
使い手によっては途轍もないパワーを放出するんですね。