イワシの翻訳LOVE

はしくれトランスレータ「イワシ」が、翻訳への愛をつれづれなるままに記します。

オトナオオトカゲ

2009年05月10日 17時50分12秒 | Weblog


夏日の暑さです。変態ランナーとしてはこれはもう万障を繰り合わせて出陣するしかありません。意気揚々と公園に走りに行ってきました。平日で人気がなければ上半身陳列罪じゃなくって上半身裸で走りたいところなのですが、日曜日の今日は家族連れを中心に芋を洗うような人の多さ。さすがに人の目が気になるので、ランニングシャツでトロトロ10キロ走りました。真夏なら、半裸ランナーや半裸お父さんも結構いるから、大丈夫なんですけどね。しかし、ここのところの天気の良さで、腕を始め日に当たる部分とそうでない部分の日焼けの差がもう結構はっきりし始めてきました。服を脱ぐとなんだか脱色したパンダみたいな状態になっています。しかし、暑いのはうれしいのですが、これも地球温暖化の影響かと思うと、ちょっと複雑な心境です。

この陽気で動物たちも活性化し始めているようです。テントウムシがたくさん飛んでいて、走っていると服に飛びついてきます。服をハタハタして、そおっと天に返してあげます。それから、草むらの近くを歩いていると、トカゲもたくさん見ました。わたしはトカゲが大好きです。歩くときの、あの体幹のうねりを見事に利用したクネクネ感がたまりません。じっと止まっているときの、あの悟りの境地にも似た自己超越の表情がたまりません。カサカサカサっと目の前を走り去るので、小さい頃の習性で思わず尻尾を踏みつけたくなるのですが、さすがにすっかりいいオトナの年齢になったわたしは、無駄な殺生ならぬ殺尻尾はもうしたくありません。もっとじっくり見たいのですが、トカゲはあっという間に陰の世界に消えていってしまいます。

いつものように腕立て伏せをしていると、なんだか自分もトカゲになったような気がしました。手のひらが感じるアスファルトの熱。目の前3センチのところを、アリさんがせかせかと動き回っています。彼らの一挙手一投足が、ものすごくリアルです。まさに、ナショナルジオグラフィックマガジンの世界です。じっと見ていると、アリさんはわたしの腕を大樹とでも思っているのか、やおら登り始めます。おとぎ話の世界の巨人になったような気分です。腕立て伏せのすばらしいところは、四つ足になることで、こういう風に大地をアリの目、あるいは巨人の目で見ることができることです。地球の引力を、全身で体感できます。トカゲの脳、すなわち脳幹も鍛えられるような気がします。大脳が大した働きをしてくれない僕のような人間にとって、トカゲの脳で足りない部分を補うことはとても重要だと言えます。

家に戻ると、リビングに置いてあったソファを寝室に移動しました。読書をするときはソファに座るのが一番楽なのですが、昨夜、本を読んでいたときに、リビングは車の音と冷蔵庫の音がうるさくて、あまり読書に集中できないことにあらためて気づいたからです。これからは静かな寝室のソファを読書の基本スペースとして、読書マラソンに挑戦しよう! そう決意して、思い切って部屋の模様替えを始めたわけなのです。ソファを数年ぶりに動かしたら、トカゲがたくさん出てきました。というのは嘘で、何かえげつないものが出てくるかと思ったのですが、少々のゴミ以外、何もありませんでした。ソファのないリビングは、まるで引っ越してきたときの日のように、ガランとしてしまいました。いろんなことを思い出して、なんだかとても切なくなってしまいました。

いろんな思い出がつまったこの家。ひとりで住むには広すぎるこの家。だけどもう、立ち止まっているわけにはいきません。夏が来るよりも速く、夏が過ぎ去るよりも速く、僕も駆けていかなくてはいけないはずなのです。コモドドラゴン並の速度で、四つ足で進んでいきたいと思います。