おはようございます。ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
「リーダーの人間力」の第5回目に入ります。
今までには4回、次のとおり書いてきています。
◆7月20日付け リーダーの人間力(1):小説のお勧め
◆7月26日付け リーダーの人間力(2):本物のリーダーが書いた本
◆7月29日付け リーダーの人間力(3):人間力を備えたリーダーの5つの特質
◆8月12日付け リーダーの人間力(4): 「志」を持つこと
第5回目として、生き方のぶれないリーダーの本を紹介します。
『生き方 ― 人間として一番大切なこと』(稲盛和夫著、サンマーク出版、1,700円+税)です。
京セラやKDDIの創業者であり、日本航空の再建を成し遂げた経営者としてあまりにも有名な著者は、間違いなくリーダーとしての人間力を備えた人です。
そしてまた、この本はサブ・タイトルにあるように「人間として一番大切なこと」を書いた著者の哲学が込められた本です。
さて、この本の中で私の心に残った言葉を書いてみましょう。
1.現代のような閉塞的な時代にもっとも必要なのは、「人間は何のために生きるのか」という根本的な問いである。
2.人生をよりよく生き、幸福を得る果実は、次の掛け算の方程式で表現される。
人生・仕事の結果=考え方 × 熱意 × 能力
3.稲盛氏の造語の「知恵の蔵(真理の蔵) ― 宇宙の摂理、あるいは創造主の叡智などと言い換え可能」は、人類を絶えず成長発展の方向へ誘導し、その大いなる知を新しい発展やひらめき、あるいは創造力としてそのつど引き出したり、汲み上げたりしているのではないか。
4.不可能を可能に変えるには、まず「狂」がつくほど強く思い、実現を信じて前向きに努力を重ねていくこと。それが人生においても、また経営においても目標を達成させる唯一の方法である。
5.思い、考え、練っていくことをしつようにくり返していると、成功への道筋があたかも一度通った道であるかのように「見えて」くる。最初は夢でしかなかったものがしだいに現実に近づき、やがて夢と現実の境目がなくなって、すでに実現したことであるかのように、その達成した状態、完成した形が頭の中に、あるいは目の前に克明に思い描けるようになる。
しかも、それが白黒で見えるうちはまだ不十分で、より現実に近くカラーで見えてくる ― そんな状態がリアルに起こってくる。
6.「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」ことが物事を成就させ、思いを現実に変えるのに必要。 (途中略) 臆病さ、慎重さ、細心さに裏打ちされていない勇気は蛮勇にすぎない。
7.人生では、「知識よりも体得を重視する」ということも大切な原理原則。これは、言い換えれば、「知っている」ことと「できる」ことは必ずしもイコールではない。知っているだけで、できるつもりになってはいけないという戒めでもある。
8.(「リーダーには才よりも徳が求められる」として)中国の明代の思想家、呂新吾(ろしんご)がその著書『呻吟語(しんぎんご)』の中で説いている。
「深沈厚重(しんじんこうじゅう)なるは、これ第一等の資質。磊落豪雄(らいらくごうゆう)なるは、これ第二等の資質。聡明才弁(そうめいさいべん)なるは、第三等の資質」
9.心を磨く指針として、自らの経験から次のような「6つの精進」が大切だと思い、周りの人たちにも説いてきた。
(1)誰にも負けない努力をする
(2)謙虚にして驕らず
(3)反省ある日々を送る
(4)生きていることに感謝する
(5)善行、利他行を積む
(6)感性的な悩みをしない(いつまでも不平を言ったり、してもしかたのない心配に囚われたり、くよくよと悩んではいけない。そのためにも、後悔をしないようなくらい、全身全霊を傾けて取り組むことが大切)
10.これからの日本と日本人が生き方の根に据えるべき哲学をひと言でいうなら、「足るを知る」ということ。また、その知足の心がもたらす、感謝と謙虚をベースにした、他人を思いやる利他の行いであろう。
11.人生には、それを大本で統御している「見えざる手」がある。それは、(1)運命、(2)「因果応報の法則」で、大事なのは、因果応報の法則のほうが運命よりも若干強い。
12.宇宙自身がすべてをよりよくしていこうという意志を備えており、そこに属するあらゆるものにも成長発展を促している。したがって、宇宙に存在するすべてのものは成長し、発展することが本然で、私たち人間もその例外ではない。
だから、宇宙の意志と同じ考え方、同じ生き方をすれば、必ず仕事も人生もうまくいく。
13.人間の心は多重構造をしていて、同心円状にいくつかの層をなしているものと考えられる。
(外側から)
(1)知性 ― 後天的に身につけた知識や論理
(2)感性 ― 五感や感情などの精神作用をつかさどる心
(3)本能 ― 肉体を維持するための欲望など
(4)魂 ― 真我が現世での経験や業をまとったもの
(5)真我 ― 心の中心にあって核をなすもの。真・善・美に満ちている
14.まずは自分自身が、また1人でも多くの人々が(本書で述べられたような「生き方」をもとに)それぞれ与えられた崇高な使命を理解し、人間として正しいことを正しいままに貫き続ける。そのような「生き方」の向こうには、必ず光り輝く黎明の時を迎えることができる、と信じている。
(最後の言葉)
65歳を迎えたときに、改めて人生とは何かということを学びたい、また真の信仰を得たいと思い、得度し仏門に入った著者らしい、一流経営者の「生き方」の本です。
長い文章におつき合いいただきありがとうございました。
感銘を受けたので、ここまで書いてしまいました。
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