9月12日(日)、駒込のLa Grotteに「しずくろん第2回公演『しずくろんの誘惑』」を観に行ってきた。
しずくろんは、晴居彗星さんともこもこさんによる、「言葉で遊ぶ」を標榜する自作朗読ユニットである。この二人と私が出会ったのは2007年の詩のボクシング・神奈川大会であった。大会を制し、優勝賞金を片手に控え室に引き上げてきた晴居さんに「そのお金でみんなで飲みに行くっていうのはどうです?」と提案し、「嫌です」と断られたのが私と彼の初めての会話だった。その後、晴居さんは全国大会も勝ち抜き、この年のチャンピオンとなる。もこもこさんはもこもこさんという名前ではなく、本名で出場していた。
二年後の2009年、晴居さんがひょっこりとお客として私の主宰するPoe-Triに来てくれた。しずくろんの話を聞いたのは確かその時だったと思う。
晴居さんは知的でシャープな人である。何よりもきちんと自分のするべきことに向き合う姿勢を持っていて、ハードワーカーだという印象を受ける。一方のもこもこさんは、詩のボクシングの、数百人単位の観衆を前にした本番のステージで「あ、原稿忘れた」と発言して探し始め、周囲を恐怖のズンドコに陥れたことからもわかるように、マイペースな人として知られている。あの子とだけは対戦したくない、とみんなが言うわけである。
芸術という言葉を分解すると「芸」と「術」になる。しずくろんの場合、一見して晴居さんが「術」担当、もこもこさんが「芸」担当であるかに思える。
だが、実際に目にしたしずくろん公演では、この二人がお互いに対して及ぼし合う影響が絶妙のバランスを保っていた。晴居さんはエモーショナルな魅力を、もこもこさんは知性を発揮し、そして二人の回転力とスピード、ポップな感覚が、オーディエンスをハッピーな疾走感と自然に溢れる笑いの中に導いてくれた。手法的にも個々の内容的にも「こういう手があるのか!」と何度も思った。作り込み段階における手抜きのない作業の積み重ねが、当日の良い意味でのイレギュラーをも生んでいたのだと思う。
二人のソロや群読、コントに至るまで様々な演目があったが、私が考えるに、しずくろん公演はパフォーマンスとしての朗読に触れたことのない人にこそ見てもらいたい。入り口がここだった人は、きっと「言葉で遊ぶ」ということの楽しさ、それを人前で見せるということについて肯定的な感情を持ってくれるのではないか。もしかしたら「言葉は自由なんだ」と感じてくれるかもしれなくて、それは本当に素晴らしいことではないだろうか。
唯一気になったのは、会場の椅子が小さく、当日寝違えて首が痛かった私には肉体的に快適でなかったことだ。
しずくろんは来春にも第3回公演を計画しているという。また、9月24日の詩のボクシング・東京大会には、晴居さんが個人戦に、そしてしずくろんに広瀬犬山猫さんを加えた「しずくろんと犬」が団体戦にそれぞれ出場する。さらに10月6日のPoe-Tri Vol.28には、もこもこさんがキャストとして初出演する。
よく考えると、私は今年に入ってから、純粋なお客として見に行った朗読系のイベントはこれが初めてだった。必ず行けるかどうかはわからないけれど、次回公演も是非、チケットを買って観に行きたい。そう思わせてくれる、9月12日のしずくろんであった。
しずくろんは、晴居彗星さんともこもこさんによる、「言葉で遊ぶ」を標榜する自作朗読ユニットである。この二人と私が出会ったのは2007年の詩のボクシング・神奈川大会であった。大会を制し、優勝賞金を片手に控え室に引き上げてきた晴居さんに「そのお金でみんなで飲みに行くっていうのはどうです?」と提案し、「嫌です」と断られたのが私と彼の初めての会話だった。その後、晴居さんは全国大会も勝ち抜き、この年のチャンピオンとなる。もこもこさんはもこもこさんという名前ではなく、本名で出場していた。
二年後の2009年、晴居さんがひょっこりとお客として私の主宰するPoe-Triに来てくれた。しずくろんの話を聞いたのは確かその時だったと思う。
晴居さんは知的でシャープな人である。何よりもきちんと自分のするべきことに向き合う姿勢を持っていて、ハードワーカーだという印象を受ける。一方のもこもこさんは、詩のボクシングの、数百人単位の観衆を前にした本番のステージで「あ、原稿忘れた」と発言して探し始め、周囲を恐怖のズンドコに陥れたことからもわかるように、マイペースな人として知られている。あの子とだけは対戦したくない、とみんなが言うわけである。
芸術という言葉を分解すると「芸」と「術」になる。しずくろんの場合、一見して晴居さんが「術」担当、もこもこさんが「芸」担当であるかに思える。
だが、実際に目にしたしずくろん公演では、この二人がお互いに対して及ぼし合う影響が絶妙のバランスを保っていた。晴居さんはエモーショナルな魅力を、もこもこさんは知性を発揮し、そして二人の回転力とスピード、ポップな感覚が、オーディエンスをハッピーな疾走感と自然に溢れる笑いの中に導いてくれた。手法的にも個々の内容的にも「こういう手があるのか!」と何度も思った。作り込み段階における手抜きのない作業の積み重ねが、当日の良い意味でのイレギュラーをも生んでいたのだと思う。
二人のソロや群読、コントに至るまで様々な演目があったが、私が考えるに、しずくろん公演はパフォーマンスとしての朗読に触れたことのない人にこそ見てもらいたい。入り口がここだった人は、きっと「言葉で遊ぶ」ということの楽しさ、それを人前で見せるということについて肯定的な感情を持ってくれるのではないか。もしかしたら「言葉は自由なんだ」と感じてくれるかもしれなくて、それは本当に素晴らしいことではないだろうか。
唯一気になったのは、会場の椅子が小さく、当日寝違えて首が痛かった私には肉体的に快適でなかったことだ。
しずくろんは来春にも第3回公演を計画しているという。また、9月24日の詩のボクシング・東京大会には、晴居さんが個人戦に、そしてしずくろんに広瀬犬山猫さんを加えた「しずくろんと犬」が団体戦にそれぞれ出場する。さらに10月6日のPoe-Tri Vol.28には、もこもこさんがキャストとして初出演する。
よく考えると、私は今年に入ってから、純粋なお客として見に行った朗読系のイベントはこれが初めてだった。必ず行けるかどうかはわからないけれど、次回公演も是非、チケットを買って観に行きたい。そう思わせてくれる、9月12日のしずくろんであった。