Islander Works

書いて、読んで、人生は続く。大島健夫のブログ

しずくろん第2回公演『しずくろんの誘惑』

2010-09-18 22:46:33 | 見たもの
9月12日(日)、駒込のLa Grotteに「しずくろん第2回公演『しずくろんの誘惑』」を観に行ってきた。

しずくろんは、晴居彗星さんともこもこさんによる、「言葉で遊ぶ」を標榜する自作朗読ユニットである。この二人と私が出会ったのは2007年の詩のボクシング・神奈川大会であった。大会を制し、優勝賞金を片手に控え室に引き上げてきた晴居さんに「そのお金でみんなで飲みに行くっていうのはどうです?」と提案し、「嫌です」と断られたのが私と彼の初めての会話だった。その後、晴居さんは全国大会も勝ち抜き、この年のチャンピオンとなる。もこもこさんはもこもこさんという名前ではなく、本名で出場していた。

二年後の2009年、晴居さんがひょっこりとお客として私の主宰するPoe-Triに来てくれた。しずくろんの話を聞いたのは確かその時だったと思う。

晴居さんは知的でシャープな人である。何よりもきちんと自分のするべきことに向き合う姿勢を持っていて、ハードワーカーだという印象を受ける。一方のもこもこさんは、詩のボクシングの、数百人単位の観衆を前にした本番のステージで「あ、原稿忘れた」と発言して探し始め、周囲を恐怖のズンドコに陥れたことからもわかるように、マイペースな人として知られている。あの子とだけは対戦したくない、とみんなが言うわけである。

芸術という言葉を分解すると「芸」と「術」になる。しずくろんの場合、一見して晴居さんが「術」担当、もこもこさんが「芸」担当であるかに思える。

だが、実際に目にしたしずくろん公演では、この二人がお互いに対して及ぼし合う影響が絶妙のバランスを保っていた。晴居さんはエモーショナルな魅力を、もこもこさんは知性を発揮し、そして二人の回転力とスピード、ポップな感覚が、オーディエンスをハッピーな疾走感と自然に溢れる笑いの中に導いてくれた。手法的にも個々の内容的にも「こういう手があるのか!」と何度も思った。作り込み段階における手抜きのない作業の積み重ねが、当日の良い意味でのイレギュラーをも生んでいたのだと思う。

二人のソロや群読、コントに至るまで様々な演目があったが、私が考えるに、しずくろん公演はパフォーマンスとしての朗読に触れたことのない人にこそ見てもらいたい。入り口がここだった人は、きっと「言葉で遊ぶ」ということの楽しさ、それを人前で見せるということについて肯定的な感情を持ってくれるのではないか。もしかしたら「言葉は自由なんだ」と感じてくれるかもしれなくて、それは本当に素晴らしいことではないだろうか。

唯一気になったのは、会場の椅子が小さく、当日寝違えて首が痛かった私には肉体的に快適でなかったことだ。

しずくろんは来春にも第3回公演を計画しているという。また、9月24日の詩のボクシング・東京大会には、晴居さんが個人戦に、そしてしずくろんに広瀬犬山猫さんを加えた「しずくろんと犬」が団体戦にそれぞれ出場する。さらに10月6日のPoe-Tri Vol.28には、もこもこさんがキャストとして初出演する。

よく考えると、私は今年に入ってから、純粋なお客として見に行った朗読系のイベントはこれが初めてだった。必ず行けるかどうかはわからないけれど、次回公演も是非、チケットを買って観に行きたい。そう思わせてくれる、9月12日のしずくろんであった。

9月19日・「笑いと涙のぽえとりー劇場」

2010-09-14 14:01:08 | 告知
さて、ものすごく急ですが、9月19日(日)、高田馬場Ben's Cafeでの「笑いと涙のぽえとりー劇場」にゲスト出演し、15分のパフォーマンスを行うことになりました。

服部剛さん主催の「ぽえとりー劇場」は、のべ朗読者数が1000人を遥かに越えているという、都内きっての老舗オープンマイク朗読イベントです。服部さんの醸し出すピースフルな波動がイベント全体に行き渡る、楽しくも陰影に満ちた時空間を、是非、皆様も体験しにいらしてください。カフェメニューもどれもおいしいですよ。

初めてゲスト出演させて頂き、とても光栄に思っています。ストーリーのあるものを朗読する予定です。

以下、服部さんからのオフィシャルな告知文です。

☆☆☆

「ぽえとりー劇場」は皆さんの言葉にふれる・味わう・耳を澄ます朗読会です。
朗読する5分はあなたが主役。それぞれが自分らしい花を咲かせる詩的空間で過ごしましょう(トークを含め持ち時間5分で、詩を2篇まで)。

朗読する詩にテーマはなく、自由です。
※ お客様としての参加も歓迎です。開演の18時15分を目標にお越し下さい
※ 入場は無料です(店内のドリンク・フードをオーダーして下さい)
※ 会場の電話番号と地図はこちらをご覧ください。高田馬場駅より徒歩5分くらいです
※ お問い合わせは、gouhattori@yahoo.co.jp (服部剛)まで、よろしくお願いします。

☆☆☆

それでは、19日に皆様とお会いできるのを楽しみにしております。

つながり

2010-09-12 21:36:09 | 出たもの
よく、「一番苦しい時に助けてくれた〇〇さん・・・」なんていう言い方をする人がいるが、笑止千万だ。本当に一番苦しい時には、誰かが助けてくれたりなどするはずがない。地獄というものがあるなら、自分が誰ともつながっていない状態こそ、本物の地獄だ。

人のつながりは不思議だ。私が最初に出演した朗読イベントの主催者である鶴山欣也さんと、私が県立中央博物館の地下でたまたま出会った人とが、たまたま古い知り合いであり、それがこの夜、二人とも初めて足を踏み入れるWiCANアートセンターで二十数年ぶりの再開を果たすなんて、普通考えられるだろうか。今回、千葉詩亭がそのような場となることができたこと、そこに自分がかかわることができたことを私は心から嬉しく思う。

テーブルの上には、スモールさんが持ってきてくださったおいしいふかし芋が盛られている。休憩時間にその芋をかじりながら、栄町のアーケードの下で鶴山さん、ジュテーム北村さんと三人で立ち話しつつ、ふと我に返ってその状況のあまりの非日常っぷりに頭がくらくらする。アートセンターの中を振り返ると、あちこちで人の輪ができている。みんなが何の話をしているのかわからないが、笑顔のようだ。笑顔はいい。犬や猫が笑ったってみんなハッピーになる(動物だって笑うのだ)。ましてや人の笑顔は最高だ。

今のこの瞬間は二度と戻ってこない。一度やったイベントを、もう一度やることは決してできない。ただ、そこに集ってくださった皆様の心の中に、何かが残る時空間であり、そして、また「次」がある時空間であること。改めて、そのことを強く思う。

鶴山欣也さんの三十分のステージは、素晴らしかった。


一つ一つの声、そして手の動きが、聴衆の前にリアルタイムで「詩」を作り出してゆく。何よりも、栄町という町の空気に、鶴山さんがとてもしっくりなじんでいることに驚かされてしまう。まるで流れる水の中に心地良く浸っているかのような三十分だった。

今回のオープンマイク参加者は、

スモールさん
稗田恵一さん
伊藤健一さん
岬多可子さん
大島婦美枝さん
ジュテーム北村さん
後藤理絵さん

という皆さん。東京から、神奈川から、千葉から、詩人、農家、剣道家、画家、私の母、毎回出てくださっている方、初めての方。世界に詩のイベントはたくさんあるけれど、この人たちが集まるのはここだけだ。

今回も、主催としてオープニングはイダヅカマコトが、ラストは私が朗読させていただいた。

参加してくださった皆様、ご来場くださった皆様、ゲストの鶴山さん、あらためて本当にありがとうございました。

千葉詩亭・第七回は11月開催の予定です。そこでどんな新しいつながりが生まれるのか、まだ誰にもわかりません。どうか楽しみにお待ちください。私もとても楽しみなのです。

小説「そろそろ君が来る時間だ 10の小さな物語+1」刊行のお知らせ

2010-09-10 18:22:19 | ニュース

※写真は本文と関係があります

このたび、私の小説「そろそろ君が来る時間だ 10の小さな物語+1」が、来る10月10日(日)、詩遊会出版より刊行の運びとなりました。

定価1500円、サイズはB6版です。全148ページ。

本日より、ポエトリーカフェ武甲書店にて予約の受付を開始しております。下記連絡先までお申し込みください。ポエトリーカフェ武甲書店のブログ記事も併せてご覧ください。

ポエトリーカフェ武甲書店
TEL/FAX 0494-24-2813
MAIL poecafe@bukou-books.com

いろんな生き物が出てきます。多くの皆様に楽しんでいただければ、心より幸いに思います。

新ルール導入

2010-09-02 21:55:26 | 出たもの
夏休みはそう簡単に終らないのであります。8月32日のPoe-Tri Vol.27。ご来場ありがとうございました。

まず最初に、会場にいらっしゃれなかった皆様におしらせがございます。今回からオープンマイクのルールを変更いたしました。すなわち、

制限時間の5分間が経過するとともにステージの照明が落ち始め、15秒を超過した時点で真っ暗になります。

どの時点をもって5分間のスタートとするかという問題ですが、一人ひとりのオープンマイク参加者がステージに上がるとともに、一瞬だけ場内が暗転します。そして再び照明が点いた時点をスタートといたします。

リハーサル前に、3-triのPA、やまぐちさんと相談し、いろいろ試してみた結果、この形式を導入することになりました。うまくいかなかったらまた次回以降変更するつもりでしたが、これが幸いなことに好評で、中でも後藤理絵さん猫道さんは、その「時間を過ぎると照明が落ちる」ことをうまく利用したパフォーマンスを見せてくださいました。よって今後もこの形式を継続させていただきたいと思います。

そして、今回のPoe-Triではめでたいことも一つありました。ここに改めて、心から祝福の拍手を。Poe-Triをその場所に選んでいただいたことに感謝を。

今回のオープニングは、キャストとしては待望の初出演、uraocbさん


私の「全日本エクトプラズム選手権」を、uraさんのスタイルでプレイしていただきました。二作目に読んだ一族についての作品まで、まさに「いいものを見た!」という気分にさせてくれる素晴らしい時空間。

Ben's CafeのP.P.W.の新司会者、rabbitfighterさんが続いて登場。


しっとりとしたテキストの朗読で会場をぐっと集中させた後、なんと観客全員からひとつずつお題を得て、それで即興作品を組み立てるというスゴ技を!

後半に登場したのは、「騒音天獄」主宰、福田理恵さん。


長尺の作品を、静かな語り口で、ぶれずだれずに会場の隅々まで届けていく様はさすがの一言。

最後に私が、「京都物産展」、「パーティー」、「夏の空」、「盆踊り」(新作)、「旅立ちの詩」を朗読させていただきました。

ではでは、今回のオープンマイク参加者を、登場順に写真で紹介させていただきます。

ジュテーム北村さん!


羊監督さん!


晴居彗星さん


midoさん!


死紺亭柳竹さん!


笹田美紀さん


あしゅりんさん


後藤理絵さん


猫道さん


どうです、観に来たくなる人たちでしょ(笑)。

次回、Poe-Tri Vol.28は、10月6日水曜の開催予定です。読みたい方も聴きたい方も、是非、お気軽に。池袋でお待ちしております!