To be continued.

                   
アイリスの気ままに紡ぐダイアリー

おくりびと ★★★★☆

2008-09-19 23:40:18 | 映画(劇場)
おくりびと を観た。



久々にジワッと心に沁みる良い邦画だった。
人の死を殊更に重々しく描いていない所が良いね。
時々劇場内のあちこちから笑いが漏れていたほど。
私も笑ったり泣いたり、大忙し~

遺体をひつぎに納める「納棺師」という職業を初めて知った。
葬儀屋さんか、看護師さんがする仕事だとばかり思っていた。

単に遺体に処理を施す技術屋さんとも、サービス業とも違う、何かがあった。

亡くなった人への敬意なのか、遺体に向かう真摯な態度、儀式を執り行っているかのような静かな佇まいに心を動かされる。
そして、優しく死者を慈しむように行われる所作の美しさ・・・ 思わず見入ってしまう。

これは、モックンのビジュアルに負うところも大きいかな。
練習の成果だろうね、とにかく絵になる。
間違いなく、本木雅弘の代表作になるだろう。

心と形の融合、日本古来の様式美みたいなものが外国人にウケたのかな。
モントリオール世界映画祭のグランプリ受賞も納得だ。

死んだあとの扱われ方なんて、どうせ本人は何も分からない。
でも、最後のお別れの時だからこそ、心を込めて大切に扱ってくれる人に、この身を託したい。
女性なら特に、綺麗な自分を記憶しておいて欲しいもの。
また遺族の立場でも、遺体とはいえ、ぞんざいに扱われるのは見るに忍びない。
残された人間に対する思いやりも感じられる。

私も最期は、彼におまかせして「美しく旅立ちたいー」って思ったよ。


冒頭のツカミは、最高におかしい。
主人公・大悟(本木雅弘)の初仕事は、どう見ても若い女性の遺体。
遺体を拭き清める大悟の手が、下腹部で止まる。
・・・ん?・・・何か当たる! 男性のシンボルが付いてる・・・
なんと、ニューハーフだった

さまざまな別れの形があるが、死者の年齢によって遺族の反応が全く違うのが興味深い。
おじいちゃんは、妻・娘・孫娘3人のキスマークと共に旅立つ。
天寿を全うしての死は「お疲れさまでした」という感じで、ある意味、遺族も幸せだ。

またまた笑えるのが、納棺のマニュアルビデオで、死体に扮する大悟。
その死人にしては逞しすぎる身体と、反応してはいけない所での反応ぶりも見所か


NKエージェント社長(山崎努)の仕事ぶりに心を打たれ、迷いながらも納棺師を一生の仕事と決める過程を丁寧に描いている。

だからこそ、納棺師を嫌っていた妻(広末涼子)が「夫は納棺師です」と誇らしげに言うセリフにも心から納得できる。

穏やかなチェロの音色も、山形の四季おりおりの景色も、心に寄り添うように美しかった。

後半の親しい人たちの死は、多分に作為を感じるが、ストーリー上仕方ないか。
前半があまりにも面白く描かれていただけに、ちょっと目についちゃう。
ラストは、これで終わり?ってプツンと切られたように感じたけれど、エンディングで流れるスタッフロールと込みなら、まあいいか。

モックンとクレジットの両方を見るのは至難の業だった。