To be continued.

                   
アイリスの気ままに紡ぐダイアリー

善き人のためのソナタ ★★★★☆

2007-10-12 23:55:35 | 映画(劇場)
近くの映画館で、一週間限定上映の 善き人のためのソナタ を観てきました。

津田沼パルコ内にある津田沼テアトルシネパークでは、時々この種の企画があるので、
見損なった映画を観ることが出来ます。
設備はお世辞にも良いとは言えないのですが、そこは我慢我慢。

 

これ以上は無いというラストに、ジワジワと涙が溢れてきました。
彼に、感謝の気持ちを表すには最上の方法でしたよね。
ヴィースラーが、彼(=自分)のための本を購入する時の誇らしげで嬉しそうな表情が印象深く、
それまでの重苦しい雰囲気から解放されます。

◆あらすじ◆
壁崩壊直前の東ベルリン。
国家保安省(シュタージ)局員のヴィースラーは、劇作家のドライマンと舞台女優である恋人のクリスタが反体制的であるという証拠をつかむよう命じられる。
成功すれば出世が待っていた。
しかし予期していなかったのは、彼らの世界に近づくことで監視する側である自分自身が変えられてしまうということだった。
国家を信じ忠実に仕えてきたヴィースラーだったが、盗聴器を通して知る、自由、愛、音楽、文学に
影響を受け、いつの間にか今まで知ることのなかった新しい人生に目覚めていく。
ふたりの男女を通じて、あの壁の向こう側へと世界が開かれていくのだった・・・。
                                        (映画のチラシから引用)

人間的な感情など微塵も持ち合わせていないように見えるヴィースラー。
その心が少しずつ変化していく様子が、静かに、そして時として葛藤と共に描かれていきます。
最初は興味本位に面白がっていた盗聴ですが、どんどん二人に感化されて、ミイラ取りがミイラに。
彼らに不利な情報を隠匿するだけでなく、直接自分が表に立って手助けをしてしまいます。

絶対の組織である国家保安省に、そんな行動を知られたならば、ただでは済みません。

ガチガチの組織人間だった彼に、劇的な変化を起こさせるモノがあったということ
純粋に国家を信奉していた彼だからこそ、信じるに足るものが見つかれば、まぎゃくにも振れるのでしょうね。
権力の恩恵に、どっぷり浸っている人たちは変わりようもないし。

そして悲しいのは、男性の支配社会に翻弄される女性。
強固な愛で結ばれていた二人なのに、最後の最後には自分の保身を考えてしまうものなのか・・・
あんなに愛されているにもかかわらず・・・

最期の時には、ヴィースラーの言葉で心の平安が得られたのならば、せめてもの救いです。

お互いがお互いを監視しているような、こんな国家は真っ平ですね。
いい時代の、いい国に生まれて、それだけでも幸運というものです。

ド派手なハリウッド映画とは一線を画く、久々の心を揺さぶられる映画に感動しました。