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博多陥没事故~検討委員会最終報告 NATM工法は妥当?

2017-04-06 19:59:19 | 博多駅前陥没

博多駅前陥没事故からもうすぐ5ヶ月になる。埋め戻しの早さが注目され一躍時の人になった高島市長だが、パフォ―マンス以外には興味がないのか、損害を受けた市民や事業者への賠償は遅々として進んでいない。福岡市によると、3月30日までに協議に着手したケースは449件で、このうち合意したのは154件と全体の3割にとどまっている。賠償には、領収書や帳簿など損害額が確認できる書類が必要で、それらの提出が困難なケースも少なくないからだ。そんな中、事故原因を究明するために設置された国の第三者委員会(検討委員会)の最終報告会が、先月30日、東京都内で開かれた。

公表された報告書をみると、まず、崩落したトンネル現場に立入ることができないことや委員会設置から短期間でとりまとめたことから、可能性の高い事故原因を推定したと前置きしている。その上で、トンネル上部には地下水を含む砂れき層があり、その下の風化した岩盤層(風化頁岩)には複数の亀裂があった。そこを掘削したため、水圧が作用して亀裂や緩みが発生し、徐々に破壊し始め「水みち」が形成され、連続的な剥落と漏水が起きて大規模な陥没につながったと、事故のメカニズムを推定している。(下図1参照)

事故原因については、10の要因をあげて、それらが複合的に作用し陥没に至ったとしている。中でも可能性が高い要因として2つ。1つは、風化した岩盤層の強度にバラツキがあり、局所的に弱い部分が存在するなど不規則で複雑な地質構造だったこと。もう1つは、地下水位が地表から2.5mの位置にあり、砂れき層と風化頁岩の境界部に高い水圧が作用したこと。これらに対する安全対策が不十分だったため、陥没に至った可能性が高いと結論づけた。副次的な要因として、トンネルの天井を約1m下げたことで扁平な断面となり、天井強度が低下したこと。落盤対策として鋼管から薬剤を注入する工法(注入式長尺鋼管先受工法)を採用したが、岩盤層を突き抜けないよう挿入角度を小さくするため鋼管を切断、その結果上下重なる部分が短くなり、地山改良効果が十分発揮されなかったことをあげている。(下図2参照)

とここまでは予想された内容だが、問題は掘削工法についての委員会の見解だ。陥没事故の核心部分ともいえる「NATM工法」の選定に誤りはなかったのかという点だが、委員会は、厳しい条件下における設計変更が結果的にトンネル構造の安定性を低下させることになったとして、NATM工法の選定は誤ったものではなかったとしている。しかし、工事再開の留意事項では、シールド工法など他工法の活用も視野に入れ、安全面を重視する必要性があるとも言っている。さて、これはどのように解釈すればよいのか。限りなくクロに近いシロなのか。(※NATM工法:New Austrian Tunneling Methodの略。もともと山岳部など硬い岩盤質の地盤にトンネルを掘る工法として開発された)

報告を受け、福岡市交通局は会見で「委員会から工法の選定そのものが誤りではないという判断を頂いた。交通局が担当した設計と監督では、損害賠償を負うような過失はなかった」と言い切り、損害賠償は大成建設JVが負担すべきと断言した。嫌な予感は的中した。結局、国の第三者委員会へ丸投げした結果、責任の所在は明確にされないばかりか、市にお墨付きを与えることとなった。NATM工法に関しては、市が設置した専門家委員会の委員からも脆い岩盤でのNATM工法を疑問視する声が上がっていた。にもかかわらず、市は聞く耳を持たず建設会社に有無を言わさなかった。検討委員会は厳しい条件のもとで設計変更をしたことが原因で、工法の選定に誤りはなかったといっているが、それ以上の説明はない。土木専門誌には設計に過信があったとの指摘もある。果たして過失はなかったと言えるのだろうか。

福岡市は早期の工事再開をめざしているが、検討委員会は再度、地質や地下水の状況を把握する必要があるとしている。さらに、トンネル坑内に流れ込んだ水を抜くとバランスが崩れ、周辺地盤の崩壊に至る恐れがあると指摘している。工事はかなり困難が予想されるようで、不安はさらに膨らむ。ちなみに、この報告を受けての高島市長の会見(コメント)は一切ない。

 

 

( 図1:検証委員会資料「事故発生要因とメカニズム」より) 

 

 

 

(図2:日経コンストラクション「博多陥没、専門委が10想定要因を提示」より)

 

 

 

地下鉄七隈線延伸部の地質縦断図

岩かぶりは西側の掘進方向(上の図の左方向)に向かって小さくなっている。現在の地盤は、長い年月をかけて隆起や沈降を繰り返してできている。周辺の岩盤層は、かつて丘陵となって地上に現れていたとみられる。(日経コンストラクション「3次元で見えた”へり”、博多陥没現場の危うい地盤」より)

 

 

《関連記事》

弱い岩盤対策不十分 博多駅前陥没第三者委 最終報告案、責任所在示さず(西日本新聞 2017.3.30) 

博多陥没、施工企業に賠償責任 福岡市が見解公表(西日本新聞 2017.3.31)

 

《関連資料》

土木研究所HP。福岡市地下鉄七隈線延伸工事現場における道路陥没に関する検討委員会(2017.4.4更新)   

 


独裁極まる福岡・高島市政

2017-04-01 16:55:25 | 福岡空港

山口から帰福してみると、福岡市議会と高島市長の対立がさらに激化、というか高島市長の独裁性がますます強まっていた。福岡市議会は3月28日の本会議で、自民党が提案(市民クラブが一部修正)した福岡空港の新運営会社に出資を求める条例案を賛成多数で可決した。これに対し、出資に反対している高島市長は、対抗措置として議決をやり直す「再議」を表明した。議案の再可決には出席議員の3分の2以上の賛成が必要で、満たない場合は廃案になる。このため定例会は4月12日まで延長され、条例案は最終日(12日)に再議決されることとなった。福岡市議会で再議が行われるのは61年ぶりだという。

そもそも出資するしない以前に、市民や議会を無視し、独断で出資しないことを決め、いきなり2月議会に「福岡空港未来基金条例案」を提出した高島市長の姿勢に大きな問題があるのは言うまでもない。これまでの流れを時系列でみると、福岡市は2014年11月26日、福岡県知事と福岡市長の連名で「福岡空港の民間委託について意見」を国交省に提出している。「意見」には民営化の条件を付しており、本来ならばこの時点で議会に諮って、議論がはじめられるべきだった。ところが、福岡市は15年後半から港湾空港局の内部だけで協議をはじめ、16年5月30日、同局で出資しない方針を決定した。その後、一度だけ自民党との間で勉強会を開いているが、他会派には全く知らせていない。異常な状態のまま、昨年10月3日、突然、高島市長が出資しない方針を発表したのだ。メディアは一斉にこれを報じ、市民の知るところとなったが、議会への報告はそれから10日後のことだった。出資しないことを前提とした市の条例案を議会が否決したのも無理はない。それでもなお、聞く耳を持たない高島市長。議会を無視した挙句の「再議」に道理などあるはずもないだろう。

高島市長は先月30日、ブログで「報道で見ても何がポイントなのか解りにくいと思うので、私なりに噛み砕いてみますね」と得意のQ&Aスタイルで(これが曲者なのだが)空港問題を取り上げている。「私はこの新会社に福岡市が何億円、何十億円という貴重な税金をつぎ込む必要はなく、むしろ子どもや教育のような市民に密着した課題に使うべきと思っています」と子供にかこつけ市民の賛同を得ようとしている。しかし、実際には公立保育所を減らし、公立幼稚園を全廃するなど子供に関する施策は後向き。また新年度の教育予算は最低水準。全くどの口が言うのかと言いたくなる。さらに最後には、「再議といって、もう一度議会で採決をします。一人でも考えを改めて頂ければ結果は変わります。皆さんが投票した市議会議員さんはどういう動きをしていますか?」と市民に呼びかけつつ議員に圧力をかけている。まさに独裁市政、ここに極まり。

 

《追記 2017.4.7

来週の再議決に向けて、高島市長の議員への弾圧がエスカレートしている。HUNTERによると、市幹部や市長側近が自民党市議本人や後援会関係者に露骨な圧力をかけているという。それでなのか、昨日、突如、自民党橋田市議が退会届を提出、出資に反対することを表明した。これで自民党出資条例案の可決は難しい状況になった。福岡市議会の定数は62。可決ラインは全員出席の場合は42。(3月28日同様、2議員が棄権した場合は40)つまり、この1票ですべてが決まる。現在、橋田市議に退会を思いとどまるよう自民党の説得が続いているが、果たしてどうなるのか。それにしても、高島市長。自分のメンツのために権力を乱用するとは、一体どこまで独裁なのか。

運営権売却めぐり市議が退会届(NHK福岡 2017.4.6)

 

 

記者団から質問を受ける高島市長 (写真:高島市長公式ブログより)

 

 

《関連記事》

福岡市長「再議」を表明 空港出資条例案 議会可決に異議(西日本新聞 2017.3.29)

福岡空港出資問題、閉ざされていた議論~担当局のみの検討(NETIB-NEWS 2017.3.16)

《関連資料》

福岡市議会HP