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「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた (123) 長尾家 36

2024年06月26日 16時43分31秒 | 甲越軍記
 景虎は、二郎吉の異様な姿を見て歩みを止めて仔細を聞くと、二郎吉はこれまでの事の次第を細かに語ったので、景虎は二郎吉に猛勇を感じて
「汝、出世の志あるなら、我に仕えてみぬか」と言った
二郎吉は、それを聞いて「かっか」と笑い、「我は漢(おとこ)なり、武士となって敵の首を取り、名を輝かさんとは思えども、なんで汝らのような乞食坊主に従うことがあろうか、くだらぬことを言っている暇があるなら在所を巡って食を乞うべきであろう」と相手にしないで立ち去ろうとした。

鬼小島弥太郎は、これを聞いて大いに怒り、「汝は何も見えぬのか、長尾家の大将の御前をはばからず奇怪な言葉を吐きおって、舌の根を失うでないぞ」
二郎吉も目を怒らせて、「汝がいかに偽っても、我がこのような出たらめを信じるわけがない、本当だと思う方がおかしいなり、長尾家と言えば越後の国の大将なり、乞食のような若造を大将などと呼ぶものか
大将であれ、坊主であれ、そんなことは関係ない、論は無用である
我を従えたければ腕にかけて従えてみよ、もし儂が勝ったなら一棒にて打ち殺して呉れよう」と居丈高に言い放った。

鬼小島は「汝、このような田舎で朽ち果てるは惜しいと情けをかけたが、無体な言葉を吐きおって、そのつもりであるなら儂も一棒にかけて、汝の迷いを晴らしてくれようぞ」と杖を振り上げて打ちかかった。
二郎吉も槍を振り上げて稲妻の如く打ちおろす、鬼小島はわざと杖を引いて、二歩三歩と下がると「得たり」と二郎吉が踏み込んで打とうとするところを
鬼小島は素早く身をひるがえして救い上げるように二郎吉の槍を打った
二郎吉の槍は遥かに跳ね落され後ろにどっと倒れ込んだ
鬼小島は「いかがじゃ、これで伏したか」と手を差し伸べると、二郎吉は身を起こし「勝負は時の都合なり、組み合って力を試そうではないか」と大手を広げて鬼小島に挑みかかって来た

鬼小島もこれをむんずと組止めて、互いの金剛力を振るい、しばし「えいえい」gと声を出してもみ合ったが、鬼小島が身を躍らせて二郎吉を救い上げて投げると、二転三転して転がっていった。
鬼小島は再び「汝、これにて伏したか」と言うと、二郎吉は首を垂れて
「この目を持ちながら、真の豪傑を知らず言葉を誤ったことは面目なし、願わくば御名を聞かせたまえ、永く臣となって御馬前の塵を払い奉らん」
心から伏してみえれば。景虎は喜び、まことに長尾家の御曹司としって二郎吉も大いに喜んで主従の約束をなして罪を謝った。
されども二郎吉は叔父夫婦に息子の仇を打ったことを伝える用がある、叔父夫婦を慰めねばならぬと言い、冬になれば栃尾に参りますと約束して
大鳥を担いで叔父の家に戻っていった
後に数度の合戦で高名をたて、川中島合戦に戦功があった、甘粕備中守とは、この壮士、二郎吉の事である。






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