少年マンガなんてもうかれこれ20年以上読んでなかったんですが、今年の5月にパッキャオとメイウェザーの世界戦がありまして、たまたま「はじめの一歩」の森口先生が少年マガジン誌上で、この世紀の対決を事前予測してる号をコンビニで立ち読み中偶然に見つけまして、で、超・ひさびさ買ったんですよ---少年マガジン。
まあ買ったらもったいないから、電車のなかとかファミレスとかで読みますよね?
で、僕もそうしたんですけど、読んでみたらびっくりしたの、面白くて---。
「はじめの一歩」以外はほとんどはじめて読むマンガで、ストーリーもキャラもまったく分かんなかったんですが、なんていうんだろう? 雑誌の見開きにエネルギーがあるんですよ---ピカーッって感じで。
それまでの僕は、マンガといったらなんといっても少女マンガがいちばんよくて、その次に青年マンガがきて、最後に少年マンガがくる、みたいな図式を無意識に胸中に刻んでいたんですが、その図式、わずか30分でひっくりかえされちゃいました。
おっと、凄えや、少年マンガ---!
なにが凄いかというと、雑誌全体とページ全部にみなぎってるパワーがもの凄い。
作品的に完成されてるとか、詩的情緒に満ちているとか、物語自体のプロットの練り具合が超複雑で、しかも、その完成度が凄まじく高いとか、そういった見地から見ると当然大人むきの青年マンガとか少女マンガのほうに軍配があがるんでせうが、雑誌をひらいた瞬間の瞬時の「掴み」---そのパワーと単純な引きの強さにおいて、少年マンガはあらゆるマンガを凌駕している、と思わざるをえませんでした。
そうっスね---あえてコトバにするなら、それは、ビートルズの公式曲「ロングトール・サリー」のなかにみなぎってるエネルギーとちょい似てる。
あれ、イントロ抜きの「あ・ごなテルあんとメーリー」っていうポールの絶唱シャウトでいきなりはじまるじゃないですか?
もう単刀直入---余分なイントロもMCじみたもんもなんもなく、ぴちっぴちの生きのいい新鮮音楽が、突然目のまえでドカーンと弾けちゃうわけで。
あれですよ、まさに。
あれ、元歌は、もうちょっとブルーズくさいロックンロールなんだけど、ビートルズのそれの味わいは極めてポップ。
うん、この「ポップ」ってとこがミソなんだと思う。
ほかの遊びに夢中の子供をこっちに振りむかせるには、やっぱりそれだけのものがいるんスよ。
「パワー」と「オリジナリティー」と、それとこの分かりやすい「ポップ」さと---。
マンガといえば、つげ義春なんか僕は好きなんですけど、彼のマンガはねえ、どっちかというと「文芸」のノリじゃないですか?
うん、「文芸」ってそれなりに素敵なんだけど、やっぱりいくらか染みったれてますからねえ---「生活」と「人生」と、あと、つかのまの「沈黙」と。
こういうノリだと、現代のメジャーな少年マンガの誌面には、どうしても乗りにくい。
(そういう意味でむかしのマンガ---ジョージ秋山の「あしゅら」とか永井豪の「デビルマン」、あと、とりいかずよしの「トイレット博士」を載せてたころの少年マンガってもの凄かったんだなあ! 感嘆)
いまの少年マンガには、60年代から70年代にかけて満ち満ちていたような、あのアナーキーな神がかりのパワーはありません。
社会の暗部やタブーには絶対触れないし、いっちゃんヤバイ部分は小器用にすり抜けていくし、ま、より洗練された形態に進化・特化しているといってもいいでせう。
このスマートでお利口な「洗練」ってやつが、僕は、ダメなんだなあ---。
ドロドロのカオスが大好物なイーダちゃんとしては、どうにも喰いたりないっていうか…。
僕は、クリームよりは40~50年代のブラック・ブルーズ、70年代ロックよりは、むしろウッドストックを取りたいニンゲンなんです。
だから、時代に即して「お利口さん」になったマンガと会うのが嫌で、ずーっと敬遠してたって事情なのか。
でも、パッキャオvsメイフィールド戦が機縁となってひさびさ見てみたなら、凄いっス---少年マンガ誌上は、もう才能の宝庫じゃないですか---!
クラッシックな「七つの大罪」も、あいかわらずの男の子路線の「デザートイーグル」も、野球マンガの「ツースリー」も、みんなみんな凄い。
みんながみんな、キラキラしてる。
それは、作者であるマンガ家さんの悲鳴と引きかえのキラキラかもしれない。
でも、キラキラはキラキラです---光ってるのはまちがいない。
ページを繰りながら、僕、呻りましたねえ…。
で、そのなかでもとりわけ感心したのが、冒頭にUPした若林稔弥(トシヤと読むのかな?)氏の「徒然チルドレン」だったんです。
これには、やられた---。
これ、前にでた四コマの名作「あずまんが大王」の進化型みたいなタイプの連作四コマなんですけど、これはいいっスよ。
僕は、いっぺんでファンになっちゃった。
なにしろね、これ、キュート---もう・ね---繰るページすべてが漏れなくキュート---!
か、かわいい‥。
この「徒然チルドレン」、主人公が複数いまして、その複数の生徒の学校生活における異性との日常的なふれあいを、それこそ素朴なタッチでマンガ的に表現していくんですけど、ねえ、その表現をこの作者にやられると、これがたまらない。
ねえねえ、たとえばさあ、コレ、見てよ---
ね・どーよ?(トいきなしヤンキー顔になって)好きなひとからメールが届いたときの、この歓喜の感覚におぼえがないとは、いわさない---。
こうした、なんでもないちょっとした日常の動作に、作者の思い入れを乗せきる手腕において、この若林さん、巨匠っス。
まだ新人さんかもしれない---僕はあまりマンガ界に詳しくないんで大きなことはいえないんですが---そういった外面的なキャリアとは無関係に、この作者さん、確実に「詩人の眼」を持っていて---
僕は、恐らくそれにやられた。
ええ、すぐに近くの書店に走り、「徒然チルドレン」全3巻を購入してきましたとも!
コーヒー飲みながらそれ読んで---いやー、いい時間だったなあ。
僕は、冒頭にUPした生徒会長と亮子ちゃんカップルがフェヴァリアット。
2巻の「独裁」は、特によかですね~
あ。あと、ひねくれ七瀬と加賀クンと天文部の絡みもなんか好き---。
さらにいえば、加奈と千秋のくっつきそうでくっつかない、じれったい恋バナも好き---。
といっても未読のひとには、なにいってるかサッパリ分かんないよねえ?
というわけで、貴方もこれを読んだら近くの大きな書店にいき、若林稔弥の「徒然チルドレン(講談社)」を購入しませう---!
キャッチーで、ほろ苦で、リアルに等身大で、そいでもってチェルシーで……こんなマンガはそうないと思う。
うん、まちがいなく、これ、近来の傑作です---。(^o-y☆tyu!
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