イーダちゃんの「晴れときどき瞑想」♪

美味しい人生、というのが目標。毎日を豊かにする音楽、温泉、本なぞについて、徒然なるままに語っていきたいですねえ(^^;>

徒然その242☆ 北温泉再訪記 ☆

2016-11-25 20:34:10 | ☆湯けむりほわわん温泉紀行☆



 2016年11月の19日から20日にかけて、イーダちゃんは、わが最愛の温泉宿であるところの、あの那須の「北温泉」に2連泊してきました。
 いやー、例によって米と飯盒持参の北海道行以来のマイ自炊スタイルでいったんですけどね、
 実際こちらを訪れるのは2011年の5月19日の愛車クラッシュ全損事故以来のことですから、
 なんというか、すべてが懐かしく、いろんな意味でたまんないものがありました…。
 今回の旅が可能になったのには、地元で激安の「ガッツレンタカー」というのを見つけたのがでかかった。
 こちら、軽を1週間借りて、なんと1万1千円という激安価格---これなら文無しのイーダちゃんにもじゅうぶん利用可能です。
 でもって、夜勤明けにこのガッツレンタカー(メーカーはスズキでした)を駆って、ガガガガガーッといってまいりました。
 肌に染み入るほど大好きな、ほとんど身体の一部といいきってしまってもいい、あの特別な、懐かしの「北温泉」に----!
 
 ひさびさの「北温泉」---2011年以来の訪問だから、これは、なんと5年ぶりの宿泊となります。
 東北インターの那須口で降りて、懐かしの那須の道筋が見えてきたら、お恥ずかしい話ですが、心臓がドキドキしてきたことをここに告白しておきませうか。
 那須という地はセレブの別荘地なんて一面もあるのですが、「北温泉」はそんなセレブなんかが集う別荘地とはまったく位相のちがう、奥那須のかなり外れのほうにあるのです。
 那須の観光センターの雑踏も、温泉神社も、それからあの有名な濁り湯の「鹿の湯」も「殺生石」もずっといきすぎて、R15号を延々直進----
 むかし有料道路だった一角も越えて、道の両側に熊笹の集落がだいぶ目立ってきたころ、「北温泉→」という表示のある看板を右折、 
 人家のまったくない山のくねくね道を延々いくと、やがて「北温泉」の駐車場に突きあたります。
 ひさびさにきてみると、駐車場が新しく綺麗になってるんでびっくりしました。
 かつての修験道の修行の地だった「北温泉」---クルマのドアをあけると、あのいくらか厳しさを帯びた、冷涼とした独自の山の気配を首筋に感じます。

----ああ、あの北温泉にきたんだな…、という実感じんわり。

 今回のイーダちゃんの湯治旅の目的は、実は、癒しなのでありました。
 失恋、じゃないんだけど、ちょっと個人的に大きな幻滅と失望とを感じさせるある事件がありまして、
 僕、自分で思ってるよりかなーりダメージを受けちゃってたんですね---軽い胃潰瘍なんかにもなっちゃって、
 こんなことはまえの会社でリストラ喰らったときにもなかったことです。
 自分のなかのタフネスが目減りして、計測の針がもうレッドゾーンでふれているのを、ええ、僕は意識してたんです。
 だから、徹夜明け運転で「北温泉」の駐車場にやっと到着して、荷物をクルマからだし、宿への400mのくねくね道を下りはじめたときに兆した安堵感は、 
 ほとんど筆舌に尽くしがたいものがありました。






 一歩づつ「北温泉」に近づくごとに、その重圧感が心なしすうっと薄れていく。
 山の寒気にくるまれ、夜笹川の瀬音が近づくごとに、ああ、帰ってきたんだな、というふしぎな安堵感が募っていく。
 5年ぶりの「北温泉」は、あいかわらずの佇まいでした。
 帳場も、山小屋みたいな玄関風景も、玄関前でかんかん燃えているマキストーブの風情も、記憶のまんま。
 僕は、もう、ただ静かに、単純に嬉しかったな…。






 宿の御主人から部屋の鍵をお借りして、316号の、寛永の部屋(実際に寛永のとき作られらた古い部屋なんです、ここは)に案内されます。
 ここは、たしかまえにも泊まったことがある部屋。
 暖房器具は炬燵オンリーの、8畳の部屋---隙間もあって、冬には寒い部屋なんですが、ここに荷物を置くと、いつもながらなんとも心が安らぐのを感じます。




 お茶を一杯飲んで、5分ほど休んだのち、僕は、すぐに同階の廊下の突き当りにある、「北温泉」のいちばんメインである「天狗の湯」に行きました。
 知ってるひとには説明不要かと思いますが、こちら、お湯処と廊下のあいだに、なんとドアすらないんです。
 部屋がフツーに並んでる廊下をまっすぐいったら、すだれ一枚隔てて、もうそこ湯治客らの裸の天国なの。
 ふっと居室からでて湯処のほうを見たら、まるだしの男性局部が見える、みたいな前近代の世界。
 でもね、こちらのお湯が恵んでくれる「癒し」っていうのは、ほかとは比べられない深いものがあるのも事実。
 だからこそ、「北温泉」の「天狗の湯」は、いつきても日本各地からやってきた湯の客でいっぱいなわけ。
 なにせ5年ぶりですから、こみあげてくるものも少々ありましたが、
 ああ、やっぱり、こちら、むかしのまんまの神々しくて威厳に満ちた、あの「天狗の湯」でした…。








 もうね、ここのお湯に浸かっちゃったら、いうことなんかなにもないよ…。
 だって、言葉なんかなにほどのものかね? 
 那須の山伝いに大量に流れてくる「天狗の湯」の源泉は、「北温泉」が雨に見舞われると、たちまちのうちにその温度を下げて39度のぬる湯になったり、 
 お湯のなかに遠くから運ばれてきた茶色の葉っぱがいくつも混じっていたり、
 でも、それから3、4時間もすると、雨以前のときより激熱の熱湯になってたり、近辺の山といっしょでまったくの話生きてるんですよ、こちらのお湯は。
 中世の修験道のころから那須の山とともに粛々と生きてきた「天狗の湯」----
 こちらのお湯で湯浴みをするというのは、つまり、那須の山々の命の恵みをいただくって側面もあるわけであって。
 はっきりいって尋常のパワーじゃありませんや。
 今回ひさびさに湯浴みしてみて、傷心の僕は「天狗の湯」の恐るべきパワーを全身の肌でもって痛感しました。
 たぷたぷとお湯と同化するうち、自分のなかにあった傷心の固い結ぼれが、お湯のたゆたいにあわせて、ゆるゆるとほぐれていくのが感じられました。
 湯気湯気、ゆらゆら----
 源泉は、じゃぶじゃぶ----
 若いお姉さんがおひとり途中から入ってこられたけど----追記:こちらのお湯、混浴なんです----とちゅうまで全く気がつきませんでした。
 ほかの湯浴み客の会話も裸も、もうなんていうかこの世のすべての事象が、湯気の作りだす幻影みたいに思えてきちゃって……
 こんな深い瞑想的な湯浴みを体感できたのはひさしぶりです。
 僕、日本各地のさまざまな温泉地を巡ってはきましたけど、
 そうして、お湯のパワーだけなら「北温泉」を凌ぐくらいのお湯もいくらかは知っちゃあいるけど、
 那須という土地全体の地母神から受けとるパワーの総量という見地から改めて見てみると、
 こちら「天狗の湯」から注がれるパワーというものは、ひょっとしたら日本一の高みにあるのかもしれません…。
 


                     ✖             ✖             ✖

 さて、「天狗の湯」をたっぷり堪能されたら、お薦めめなのは、やっぱりこちら「北温泉」館内の探索かと---。
 特に寛永の世に建てられた「天狗の湯」のある旧館は、素晴らしい。
 そう、「北温泉」ってね、基本的に魔窟なんですわ。
 常に薄暗い廊下は、古代の夢の迷宮さながらに錯綜していて、三叉路、四叉路なんてわけわからない地理もここじゃあ当たりまえ。
 行き止まりになってる謎の昇り階段があるわ、
 わけのわからん神サマを祭った小さな社がほとんど曲がり角ごとにあるわ、
 そこで焚かれている香の香りが、おかげで館内中にくまなく四六時中立ちこめているわ、
 さらにはトイレ前の通路下には暖房代わりの源泉が流れていて、そこに宿猫である「モモ」が腹をぺったりつけていつも眠げにくつろいでいるわ、
 湯ボケしたアタマと心を癒してくれるキテレツ風景が、もう満載です…。








 さあ、このへんまで読まれてくれたら、貴方もそろそろ「北温泉」にいきたくなってきたんじゃないですか?
 うん、「北温泉」は、とてもいい。
 誰がなんといおうと、僕は、昭和の香りたなびくこちらの宿「北温泉」を推薦します。
 女性の方には、たしかにここの混浴のハードルは、高めかもわかんない。
 でもでもでもね、着替処が男女いっしょくたの「天狗の湯」がむりにしても、宿前の広大な温泉プールなら女性用の着替処もちゃんとありますから。
 実際、僕にしてもここのお風呂で混浴したことは、数知れずありますし。
 極上の湯のなかで、見ず知らずの裸の異性と、性じゃない、温泉や旅行の世間話をするのは、とてもいいものです。
 人間の生活というものを、これほど厳かに肯定してくれる場所って、そうそうないんじゃないかな?
 俗世の汚猥と汚れとを落とすためには、ウイ、私見ですが、こちらは最上の場所であるかと存じます----m(_ _)m   
                                                                          (了)






                 ★北温泉旅館★
                 栃木県那須郡那須町湯本151
                 ☎0287-76-2008
 

 



 

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