北京・胡同窯変

北京。胡同歩きが楽しい。このブログは胡同のあんな事こんな事を拙文と写真で気ままに綴る胡同お散歩日記です。本日も歩きます。

第71回 紫竹庵胡同23・イスの周りに花が咲く!!

2015-12-17 14:00:05 | 通州・胡同散歩
「日除け、金魚のかめ、柘榴の木」(天篷、魚缸、柘榴木)
かつて中庭のある胡同生活に関してこんな諺のような言葉がありました。
四合院住宅の中庭でよく見かけられた三種類。
でも、現在の胡同を歩いていて目に付くのは、何と言ってもその道端に
置いてある「イス」。その例に漏れず紫竹庵胡同にも「イス」が置いて
ありました。






胡同の道端にさりげなく置かれたイス。そんなイスの周りに人々は集います。
晴れた日には日向ぼっこ、時によっては情報交換の場所となり、ある時には
ゲーム場と化すのです。手短に言えば、イスの周りに世間話の花が咲く。


以前ご紹介した「回民胡同」には、こんなイスがありました。



真ん中のテーブルにはお茶と灰皿。心憎いなぁ。


ところで、上にご紹介したイスはどれも新しいスタイルのものばかりですが、
古典的なイスを見かけることも。

たとえば、これ(↓)。



凳(deng・ドン)あるいは凳子(dengzi・ドンズ)。背もたれのない腰掛け(スツール)
を言うそうです。なお、背凭れのある腰掛け(チェア)のことは「椅子(yizi・イーズ)。
日本語で腰掛けすべてをひと口に「イス」と言い、漢字で書けば「椅子」となります
ので、頭が混乱しそうです。中国語では「椅子」と「凳子」との区別がはっきりして
いるんですね。

この凳子、清朝末期の写真にも登場しています。場所は四合院住宅の中庭。
写真向かって左の女性が腰掛けています。




そして、現在の胡同でも何気なく使われています。道端にちょこんと置かれていたり
するので見逃してしまうかもしれません。紫竹庵胡同にて。




この凳子を長く大きくすると、こうなります。
板凳(bandeng・バンドン)あるいは長凳子(changdengzi・チャンドンズ)と言うそうです。


この手のもので古くて渋いものを食堂などで見かけます。例えばジャージャン麺などで
有名なお店。ちなみに、上のものは魯迅博物館に参観者の休憩用に置かれていたもの。


さて、古典的なイスには、こんなのもあります。紫竹庵胡同にて。



馬札子(mazhazi・マーヂャーズ)と言うそうです。ご覧になってお分かりのように
折りたため、持ち運びが簡単。

この馬札子、かつての皇帝も使っていました。



ついでに、皇帝がその手に持っている矢の行方は、ここ(↓)。


皇帝はスポーツの真っ最中だったんです。


話しを元に戻しますが、この持ち運び便利な腰掛けは、その便利さゆえに愛鳥家の
必携アイテムと言ってよいかもしれません。



この愛鳥家さんは以前にもご紹介した方ですが、犬、鳥、鳥籠、三輪車、そして馬札子
という、胡同を語る場合に欠かすことの出来ない動物や道具にさりげなく身の回りを
囲まれていて、私には大切な写真の一枚になっています。


日本では近所の人と気軽に話をしなくなったと言われるようになってから、どのくらいが
経つのでしょうか。良くも悪くも他人様に対して無関心なわけですが、その後に続くのは、
無気力、無責任、無感動、無作法だ、なんておっしゃる方もいるようです。
それに対して胡同の道端に置かれたイスの周りには、ご近所さんが集い、晴れた日には
日向ぼっこ、ある時には情報交換の場所となり、ある時にはゲーム場と化してしまいます。
つまり、世間話に花が咲くというわけなのです。


今年の夏も近い日、紫竹庵胡同に行ってみました。そうしたら以前には二脚だったイスが
三脚になっていました。



どうやら、お仲間が増えたようです・・・。

  
  
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