北京・胡同窯変

北京。胡同歩きが楽しい。このブログは胡同のあんな事こんな事を拙文と写真で気ままに綴る胡同お散歩日記です。本日も歩きます。

第217回 北京・蘇州胡同(5) 公然の秘密たる非合法な営業が繰り広げられていた。

2019-01-06 10:23:35 | 北京・胡同散策
好物の白菜をあとにして再び歩を進めると、何やら大きなゲート。







顧みれば2014年10月に撮った写真にもこのゲートは写っていました。
しかし、注目していただきたいのは、何といってもゲートの西隣に肉屋さんがあったこと。


こちらのお店を経営なさっていらっしゃったのは、どうやら回族の方だったようです。
そのため扱っているのは牛肉と羊肉で、豚肉はおいてありません。

余談になりますが、今年の干支は「猪(イノシシ)」。しかし、中国では「猪」は「zhu(ヂュー)」と読み、
豚のこと。だから中国では本年はブタさんの年なのです。
ちなみに、「イノシシ」は「野猪(yezhu/イエヂュー)」。


時間を現在に戻してゲートを通り過ぎると、



理髪店がありました。


しかし、看板が出ておりません。
なにやら規制があるようです。

しかし、理髪店のシンボルマーク、サインポールはグルグルと回っていました。
サインポールの回っていない理髪店なんか、理髪店とはいえませんよね(笑)


理髪店のサインポールといえば、天橋地区の校尉営胡同で見かけた理髪店が懐かしい。





サインポールが逆さまに取り付けられてしまったため、“HAIR”という文字が逆立ちしてました。


逆立ちした“HAIR”という文字が発散するゆるーい空気のなかでサインポールが穏やかに
グルグルと回転していました。このゆるさのまんま、ずーっと営業していただきたいなぁ。


理髪店のシンボルマーク、サインポールといえば舶来物。
斜め前に洋館が建っていました。





どうやら下の写真に写っているのがこの洋館の表玄関のようです。
上の写真で言いますと、中華風石塀の向こう側になります。



角度を換えて。



窓の部分を最上階から地下室まで撮ってみました。











この建物、建てられたのはおそらく民国期だと思うのですが、通りに面した半地下にある出
入口前の屋根や柱の部分はひょっとしてずっと後の時代に取り付けられたものでは、といっ
た雰囲気が濃厚でした。




上の大きな洋館から東隣に目を移すと、これまた民国期の産物かなと思える建物。







こちらは飲食店になっております。
前にご覧いただいた理髪店同様に店名を書いた看板がありません。
やはり、何らかの規制あり、といったところでしょうか。




ゆるーい字体がなかなかいいですね。


実はこの飲食店、2014年にはこんな感じでした。
同じ建物とは思えません。





先にご紹介した飲食店と同じ経営者なのかは未確認なのですが、2014年の場合、
現在のお店とは違い、店名や特色料理をしめすこれ見よがしの大きな看板がお店
の前面をドーンと飾っていたのです。

それに引きかえ現在のお店の、何とつつましやかでおとなしいことか。



思えば、2014年頃までの蘇州胡同はこのようなお店が軒を連ねる、パワフル、エネルギッシュ、
エキサイティング、そんなカタカナ語のとても似合う通りでした。しかし、現在この通りに櫛
比しているのはお店たちにかわって車列なのです。

ほとんどのお店が消えうせたり、あるいはおとなしく改築したのは、本当のところは分からぬ
ものの、違法というのがその理由のようです。現在違法駐車しているクルマもいっぱいあるの
ですが・・・。


ここで時代を遡って、昔の蘇州胡同で繰りひろげられていた過酷で、哀切きわまりなく、そして
したたかでもあった非合法な店舗営業ぶりのブラックなひとコマをほんの少しでも覗いておくの
も北京で暮らす大人のたしなみといえるかもしれません。

『北京旧事』(余釗著、学苑出版社)によりますと、義和団事件の際の八カ国連合軍による占領
後の北京の胡同、具体的にはかつての東交民巷公使館区近くの船板胡同、蘇州胡同、鎮江胡同
(現在の東西鎮江胡同)などには、外国人向けの妓院があり、そこで働く妓女達のほとんどは白
系ロシア人や日本人で、対するお客といえば公使館区内の外国人たちだったそうです。

上の記事に関してもう少し書けば、民国期の社会調査によりますと、上掲の船板胡同、蘇州胡同、
鎮江胡同などにあった妓院は私設のもの、つまり非公認非合法のもので、にもかかわらず、お客
は外国兵が多いということで、警察は干渉せず(あるいは干渉できず)、それらの妓院の存在は公
然の秘密であったようです(『北平娼妓調査』《社会学会》第5巻、1931年6月)。

警察も見て見ぬふりをせざるえなかった公然の秘密たる非合法な営みが日々繰り広げられていた
かつての蘇州胡同一帯、今回はそれら胡同の過去の記憶のひとコマとして黒い輝きを放つ深淵を
ほんの少し覗きこんでみました。


さてさて、新しい年になり、本日はもう一月の六日。ご覧くださっている皆さまにおかれまして
は日々お元気でお過ごしのことと存じます。

明けましておめでとうございます。


近所のマーケットの売り場では今年の干支、ブタさんがご覧のように並んでいました。

本年ものんびりと当ブログを綴ってまいる所存でおります。遅々とした歩みではありますが、
旧年同様お付き合いください。本年もどうぞよろしくお願い致します。




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2 コメント

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水の蘇州 (koh)
2019-01-13 23:48:40
"かつての蘇州胡同一帯、今回はそれら胡同の過去の記憶のひとコマとして黒い輝きを放つ深淵を
ほんの少し覗きこんでみました。”
引き付けられる、一説です♪
「蘇州」は聞きなれた地名で興味深かったです。
今年も愛読させていただきます<m(__)m>
Re.水の蘇州 (胡同窯変)
2019-01-14 07:04:44
励ましのお言葉をありがとうございます。

わたしの方こそ今年もkohさんのブログを楽しく読ませて
いただきます。

本年もよろしくお願い致します。

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