北京・胡同窯変

北京。胡同歩きが楽しい。このブログは胡同のあんな事こんな事を拙文と写真で気ままに綴る胡同お散歩日記です。本日も歩きます。

第193回 北京・南八宝胡同 名前の美味しそうな胡同たち

2018-06-05 10:20:33 | 北京・胡同散策
今回は、前回ご紹介した昔はハイカラな場所だったのでは、と思われる後溝胡同の北端から
すぐのところにある、ある意味でいかにも中華的な名前の南八宝胡同(NanbabaoHutong/ナ
ンバーバオフートン)を散策してみました。

陽を浴びる「南八宝胡同」と書かれたプレートがまぶしい!!



この日は、蘇州胡同沿いにある北出入口から散策を始めました。





実にシンプルで分かりやすい看板。

「旅館」





おじゃましてみました。



入って右手にフロントがあり、係りの女性がソファに腰をおろして熱心に刺繍してました。



扉の中をご覧ください。



二種類の中華式の建物がありました。
時代の違いを反映しているのかもしれません。

こちらは北京でよく見かける彩色を施した建物。



それに対して向かいの建物は彩色なし。
螺旋階段で二階にあがるようになっている点に限り現代的です。





一階には部屋はなし。
植木鉢やテーブル、その他こまごまとしたものが。

あと後まで記憶に残っている灯篭(提灯)。



残念ながら、各部屋の内部は宿泊客がいらっしゃって拝見することができませんでした。

「旅館」を後にして再び散策。

路上の木陰で、只今、お食事中。



お店。



餃子専門店でした。もちろん水餃子です。



一人前20個で、15元。1元はだいたい日本円で17円ぐらいですから、およそ255円なり。

メニューを見ると美味そうな餃子ばかり。この時はお腹がすいていなかったので食べませんでしたが、
あとで後悔しきり。

なんと、その隣にもお店が。







涼しげな朝顔やひょうきんなヘチマにお目にかかるのには、もう少し時間がかかります。





看板のない肉屋さん。地元の方にとっては看板の有無など関係ないのかもしれませんね。





中華式と現代風、異質な二種類の扉が仲良く並んでいるのかな、と思ったのですが、
よくよく見ると、現代式のドアに中華をちゃんと取り入れているのが興味深い。




この辺で「南八宝胡同」の沿革などについて。

「南」という方角を示す言葉についてはさておいて、「八宝」とは、一般的に多くの材料でつく
った料理の名前に使われる言葉。

たとえば、もち米に干し葡萄、さくらんぼの砂糖漬け、はすの実、干し竜眼などを加えて蒸した
八宝飯。八種の薬味入りの八宝粥など。

多くの材料を使っている点では共通しているのですが、北京、広く中国では日本で言う「八宝菜」
はありません。北京で八宝菜という名前を探すと「八宝醤菜」のことで、これは生麩、竹の子、
大根、白菜、落花生、杏仁、干し豆腐などの材料を醤油につけた漬物を指しています。

さて、日本、中国に関係なく「八宝」という言葉は食べ物関係に使われているわけですが、この
言葉が今回の胡同名として使われたのは、日本の方には映画『ラストエンペラー』でおなじみの
清の最後の皇帝宣統帝溥儀さん(在位1908ー1912)の時代からで、それが現在まで続いていると
いうわけです。

では、宣統帝以前にこの胡同はなかったのかというとそうではありません。現在分かっている
範囲で書きますと、乾隆帝(在位1735-1795)の時代の1750年に作られたといわれる『乾隆京
城全図』にはちゃんと載っていて、乾隆帝の時代にはすでにあったことが分かります。

ただし、その時の名称は「南八宝胡同」ではなく「巴巴胡同(バーバーフートン)」。

この「巴巴」という言葉、聞くところによると、とりわけ食事の時などにはエチケット上、口に
出していうのは好ましくない、間違えて口に出して言ってしまうと周りの方たちから白い目で見
られかねない、そんなものを指す幼児語なのだそうです。もっとも、この「巴巴」も食べ物に関
係しているのですが・・・。

いったいどうして、こういう言葉が乾隆帝の時代に胡同名として使われていたのか実に興味深い
テーマですが、この辺のことについての詮索はここではこのくらいできりあげ、次に今はもう
残っていない胡同もありますが、「八宝」という言葉が使われている胡同名を少し挙げておきま
した。ご興味をお持ちの方はご覧ください。何らかの相違点や類似点が見つかれば、それだけで
北京という街が今まで以上にぐっと身近な場所になり、北京へのまなざしもいっそう温かみをお
びてくることまちがいありません。

八宝胡同、八宝楼胡同、東八宝胡同、八宝坑胡同、珠八宝胡同、牛八宝胡同、八宝甸胡同など


次はこの胡同沿いにある「小報房胡同」の東出入口。



こちらの小報房胡同には、いくつか見どころがあるのですが、その中でも個人的に“謎の館”と
呼んでいる洋館がおすすめです。

さて、もとに戻ると男性があくびをしてました。





男性のあくびに吸い込まれかのように入ってみました。



こちらは外壁を改修中に工事を休止してしまったといった様子。





上の写真の右手アパートの窓辺。





木陰に入るといい気持ち。



写真奥を横切っているのは“船板胡同”。



胡同を後にしようとすると、袋に入ったスイカをさげた女性。スイカにつられて
ついついシャッターを切ってしまう。



当日は五月の下旬に入ったばかりだというのに夏日を思わせる高気温で、一足早い
西瓜日和。

余談ですが、西瓜といえば北京のスイカ。そして、北京のスイカといえば北京南部
の大興区の西瓜。ここは中国初の『中国西瓜博物館』まである西瓜の名産地。産直
なので新鮮でいっそう美味い。

これから夏も本格的にはじまり、西瓜も本番。夏の風物詩を皆さんもどうぞお召し
あがりを。



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