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フロッピーをセットしてください

2011-06-24 | わかりやすい表現
1.5 「フロッピーをセットしてください」
    ---たくさんのことを簡単に言い過ぎる

●「フロッピーをセットしてください」
 この表現の何が問題かがわからない人はかなり多い。それほど、この文の「内容」が一般的ということでもあるが、内容はさておいても、この類の「表現」が一般的ということでもある。
 では、次の例ならどうであろうか。

例++ 「OHPをセットしてください」
   「扇風機をつけてください」
   「編集メニューのカットを選択してください」

 これらの例をみると、もし自分が、こんな指示をされたら困るということがわかってもらえるはずである。
 よくわかってしまっている人にとっては、この指示の何か悪いのかがわからない。このギャップが、実はマニュアルの表現ではしばしば発生してしまう。「くたばれ マニュアル」への道まっしぐらとなる。

●「あれ 取って」
 我が家は2人だけの老夫婦世帯である。
 「あれ 取って」「あの白いの どこだっけ」「あの話 どうなった」の類の会話が日常生活の中では頻発する。「あれって何」と聞き返されることはあまりない。
 生活を密接に共有している人の間のコミュニケーションと、生活どころか文化まで異なる人の間のコミュニケーションとは、コミュニケーション・コストも違うが、さらに表現仕方もまったく異なる。異なるように表現を設計しなければならないのだが、しばしば、そのことを忘れてしまう。
 自分でも学生相手に家内相手のような話し方をしてしまうことが、時々ある。年をとると、切り替えが難しくなってくるようである。

●わかっていることは省略する
 わかっていることは省略しないとくどい表現と言われる。しかし、わかっていないときに、省略表現されると、何が何やらわけがわからない。
 わかっているかわかっていないかがわからないときには、したがって、何を省略して、何を省略してはいけないかがわからないから、つきつめて考えると事態は絶望的なのだが、少なくとも、「相手の知識に配慮する」くらいの配慮と努力は、人に何かを伝えようとする時には必須である。
 人の面と向かっているときには、こうした配慮は実は無意識のうちにしている。コミュニケーションのよくとれている夫婦の会話は、はたからみると、とんでもないようにみえるが、これで結構、コミュニケーションが取れている。なお、余計なことであるが、こんな省略会話になれてしますと、頭のボケにつながるので止めたほうがよいと実は思っている。