飛水峡

思い出

中日新聞

2009年09月30日 23時16分48秒 | 新聞
「モクズガニ」漁が盛期 身近な川で秋の味覚を
2009年9月15日

川舟に乗り、モクズガニの入ったカニかごを引き揚げる佐藤さん=神戸町の平野井川で


 神戸町の平野井川で、秋の味覚として知られる「モクズガニ」の漁がシーズンを迎えた。同川は幅10メートルほどしかないが、わき水に恵まれてさまざまな生きものをはぐくんでいる。漁師たちは川底にモンドリと呼ばれるカニかごを沈め、この時期だけの漁に熱中している。

 平野井川は揖斐川の支流。護岸はコンクリートで固められているものの、水がきれいで水草が多いことから、アユやハヤ、ドンコなど魚類が豊富だ。ホタルの幼虫のえさとなるカワニナもおり、夏にはホタルの群舞が見られる。

 モクズガニ漁は、カニが産卵のため川を下る時期に合わせ、9月1日に解禁。地元の西濃水産漁業協同組合に所属し、許可を受けている3人が漁を続けている。

はさみの毛が特徴のモクズガニ。秋の味覚として知られる=神戸町で


 同町の佐藤了介さん(73)は、30年以上の経験を持つベテラン。自宅近くの平野井川に通い、約200メートル区間で漁を手がけている。

 金網で作られたカニかごにフナの身を入れ、川舟を使って川底に沈めたら準備完了。3日に1度のペースで引き揚げ、えさにつられて入ったモクズガニを回収する。

 14日朝も、水深約1・5メートルの川底から次々にカニかごを揚げ、約50匹を捕獲した。かごの中には、清流にしか生息しないハリヨも入っており、傷つけないように注意しながら川に戻した。

 佐藤さんは「この川は揖斐川に比べて水草が多く、カニが下るのも遅いようだ」と話す。長年の経験で「カニの通り道が分かる」という佐藤さん。えさの処理にも工夫し、毎年安定した漁獲量を確保している。

 捕獲したモクズガニは大垣市内の業者に引き取られ、料理店の秋の料理となる。濃厚なカニミソと甘い身がおいしく、ファンが多い。

 平野井川は田園地帯を流れる小さな川で、地元の人でもモクズガニ漁を知っている人は数少ない。佐藤さんたちが引退したら、漁をする人はいなくなるのではないかと言われる。

 佐藤さんはこの夏、地元の子ども会による川下りに自分の舟を提供し、船頭を務めた。身近な川の魅力を、子どもたちに伝えたいと思っている。舟上でカニかごを手早く処理しながら「カニがたくさん捕れた時は、本当にうれしい。こうして川にいると楽しいねぇ」と笑った。漁は12月まで続く。

 (中山道雄)

 【モクズガニ】 川で見られる甲幅7~8センチの大型のカニ。秋から冬にかけて海に下り、繁殖する。はさみに濃い毛があるのが特徴。カワニナなどの貝類や小魚を食べる。同属のチュウゴクモクズガニは、中華料理で有名な「上海ガニ」として知られる。



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