飛水峡

思い出

岐阜新聞

2005年02月20日 21時36分30秒 | 新聞
 飛騨市河合町で養殖されている特産品の「河ふぐ料理」がピンチに陥っている。河ふぐは、アメリカ原産のチャネルキャットフィッシュ(アメリカナマズ)のことだが、在来生物に悪影響を及ぼすとして、環境省が先月末に輸入や飼育、放流などの規制対象となる「特定外来生物」の候補に指定したためだ。危機感を持った河合村漁業生産組合など地元関係者は、市や県などと連携しながら「河ふぐの養殖生産を認めてほしい」との意見書を提出するなど、同省に強く働きかけている。

 同町の河ふぐ料理は一九八二(昭和五十七)年、地元の養殖業者が茨城県霞ケ浦からチャネルキャットフィッシュの稚魚を取り寄せ、同町保の下小鳥ダム湖で養殖を始めたのがきっかけ。最初は県内や富山市などの一部旅館に卸していただけだったが、地元の公営宿泊施設で宴会用料理として生け作りやかば焼きなどの提供を始めたところ、ナマズ特有の臭みがなく、珍味として評判を得た。九二(平成四)年には、料理を試食した梶原拓前知事が絶賛。「飛騨名物河ふぐ料理」と命名し、県内でも広く知られるようになった。

 現在、河合村漁業生産組合(中家征夫組合長)が同ダムに約三千平方メートルの網いけすを設置。県の認可を受けた漁業権魚種として養殖している。生産量は年間約九トンで、成魚(約三キロ)になるまで、一、二年間飼育してから出荷している。

 環境省は、チャネルキャットフィッシュを特定外来生物指定候補リストに挙げたが、今後、一般から意見を聞くパブリックコメントを経て閣議決定され、六月の外来生物法施行から適用される見通し。同法で指定されると、飼育や運搬、輸入、譲渡、放流などが原則として禁止される。

 このため、地元関係者は今月上旬から、市や県水産振興室と連絡を取りながら打開策を模索。当面は、パブリックコメントが締め切られる三月二日までに、河ふぐの養殖生産の継続を求める意見書をできる限り多数提出するなどして、環境省にアピールしていく方針だ。

 中家同組合長は「養殖を始めてから、いけすが損壊したことは一度もない。河ふぐが外へ逃げ出さないよう周りに柵も設けている。どうか、われわれの仕事を取り上げるようなことはしないでほしい」と訴える。水産庁栽培養殖課では「外部への流出防止など環境面の対策を条件に、飼育の許可が得られるのでは」と話す。

 「河ふぐ料理」と命名した梶原前県知事は「地域の実情を知らずに規制対象にしたら、地域の産業は滅びてしまう」と指摘している。

 (古宿博史)

【チャネルキャットフィッシュ】
 ナマズ目イクタルルス科の魚類。原産地は北米。大きさは25-50センチで、大きいものは1メートルを超える。国内には養殖用として1971年に持ち込まれた。茨城県霞ケ浦で急増。海外では補食と競合によって多くの在来生物に悪影響を及ぼしているという報告もある。

(写真)飛騨市河合町のダム湖で養殖されているチャネルキャットフィッシュ。地元特産品が、環境に有害な特定外来生物の候補に指定された

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