飛水峡

思い出

第1章「山と川に生きる」

2010年02月24日 19時28分31秒 | ぎふ海流
位山と原郷の海
山国の地層に“幻の海”

位山付近の分水嶺。右は太平洋側、左は日本海側に水を分かつ。右遠方に御岳、左遠方は乗鞍岳=下呂市萩原町上空から、本社チャーターヘリで望む

 今冬初め、ヘリで空から県土を見下ろし、いかに岐阜が山国であるかを実感した。

 川上岳から位山に連なる分水嶺付近では、右は太平洋側に南流する山之口川、左は日本海側に北流する宮川源流の川上川が深い谷を刻んでいた。はるかかなたの雲の切れ間には、雪を頂く御岳、乗鞍岳が見えた。前者は太平洋側、後者は日本海側へと、雨や雪の天水を振り分けている。

 県内435河川のうち、太平洋に流れるのは、伊勢湾に入る木曽川水系296河川と庄内川(土岐川)水系35河川、それに三河湾に流れる矢作川水系も含め、計353河川。

 一方、日本海側では富山湾に流れる宮川、高原川など神通川水系48河川と庄川水系32河川、さらに三国海岸に至る九頭竜川水系があり、計82河川がある。

 太平洋と、日本海。二つの海の故郷ともいえる県土だが、小嶋智岐阜大学教授(地球科学)に地質時代以来の生い立ちを聞くと、思いもよらない“幻の海”が浮かんできた。

 まず、岐阜市の金華山や大垣市の金生山なども含まれる中・古生代の「美濃帯」と呼ばれる堆積(たいせき)岩層は、はるか南方の海から海のプレート運動でやってきて、大陸のへりに付いた「付加体」といわれるもの。ルーツは赤道の南の浅い海という。

 小嶋教授は、同じ起源の付加体をロシア東部でも発見した。今日ではそれが、フィリピンまで延々と連なっているとみられている。

 「奥飛騨から九頭竜にかけて、飛騨外縁帯といわれる細い帯状の地層がある。これはもともと陸側にあった、大陸棚のような浅い海が起源。プレート運動で陸側の飛騨帯との間に挟まれた」と。つまり、これは美濃帯の海とは別の北方の海だ。

 やがて日本海が生まれ、日本列島が大陸から離れて体をなしていく。東濃と飛騨には、内海や内湾がそれぞれ現われては消えた。まさに地球史的な原郷の海が、山ひだの底に積み重なっている。



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