鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

嬉しいと思える出来事が起きれば嬉しいと思う:出来事と情念の連関の規則(GLASS5-12)

2008-09-27 11:31:50 | Weblog
やがてアリスはあたりが明るくなったのに気づく。「あの怪物のカラスは飛んで行っちゃったんだわ」と思う。そして「カラスがいなくなってとても嬉しいわ。もう夜になるのかと思ってたから」と彼女が言う。これを聞いて白の女王が感想を述べる。「私もなんとかして嬉しいと思うことができたらなあ!」と。
PS1:この白の女王の発言の意味はなんだろうか。彼女は嬉しいという体験をしたい。しかし彼女は嬉しいと思うことができないのである。では一般にどうしたら嬉しい気持ちになれるのか。嬉しいと思える出来事が起きれば嬉しいと思うはずである。ところが白の女王は奇妙な発言をする。

「そういう規則(※嬉しいと思うことができるようになれる規則)を思い出すことができない!」と白の女王が嘆く。
PS2:ここでいう規則とは何か?ある出来事がある一定の情念を引き起こすという規則である。嬉しいと思うためには、原因として嬉しいと思える出来事が起こり結果として嬉しさの情念が生じるという連関の規則を知っていなければ、つまり身についていなければならないと白の女王は思う。ところが彼女はその規則を身につけていないのである。出来事と情念の連関の規則が彼女にはない。白の女王にとっては出来事と情念が連関しないでバラバラに存在するのである。一方で出来事は出来事で勝手に起こり、他方で情念は情念でこちらはきっかけとなる出来事との連関なしに勝手に生じるのである。

かくて白の女王が言う。「お前はこの森に住んで、(※嬉しいと思える出来事が起きれば)いつでも好きなときに、(※出来事と情念の連関の規則を知っているから、つまりその規則が身についているから)嬉しいと思えるのだから、お前はとても幸福にちがいない!」と。

PS3:アリスの心の動きはこうである。まず情念がある「夜は暗いので嫌い」→次に一連の出来事が起こる:「もう夜になるのかと思った→ところが暗さの原因はカラスであるとわかった→そのカラスがいなくなった→もう暗くならない」→アリスは出来事と情念の連関の規則を知っているから、つまりその規則が身についているから→嫌いという情念を引き起こさない出来事が生じてアリスのうちに嬉しいという情念が発生する。


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