鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

論理家のハンプティ・ダンプティと現実家のアリス(GLASS6-18)

2009-03-20 23:20:43 | Weblog
 アリスがお誕生日プレゼントが一番好きと言うと、ハンプティ・ダンプティが「お前は自分の言ってることがわかってない」と非難する。そして「1年は何日だ?」と質問。「365日」とアリス。「誕生日は何日ある?」と彼。「1日」と彼女。「365日から1日を引くと何日だ?」と彼。「もちろん364日です」とアリス。
 PS1:ここまでハンプティ・ダンプティの意図は何なのか?いまだ不明である。

 さてハンプティ・ダンプティが突然疑わしそうな顔をする。「紙に書いてほしい」と彼。アリスは苦笑してメモ帳を取り出す。彼のために紙の上に計算を書く。彼はメモ帳を手にとって注意深く見る。「正しく計算されてるように見える」と言う。
 PS2:ハンプティ・ダンプティは計算が苦手でアリスが暗算ができることが不可解である。

 ところがアリスは驚いてしまう。「メモ帳、さかさまです!」と叫ぶ。「確かにさかさまだ」と彼が陽気に言う。彼女がメモ帳を正しい向きに直す。
 PS3:ハンプティ・ダンプティはおそらく紙の上での計算式の書き方もわからないのだ。何ということだろう。あんなに高慢ちきなのに。

 「少し変だとは思った」と彼。そして続ける。「さっきも言ったが正しく計算されてるように見える。今それを完全に調べ尽す時間はないが。非誕生日プレゼントをお前がもらえる日が364日あるのは確かだ!」と。「確かに」とアリス。「誕生日プレゼントのためには1日だけある」と彼。
 PS3:結局、ハンプティ・ダンプティの意図は何か。論理的には非誕生日プレゼントは364日もらえるが誕生日プレゼントを貰えるのは1日だけだということがアリスと彼との間で共通理解された。彼は何でそんなにもらうチャンスが少ない誕生日プレゼントをアリスが好きなのか理解できない。非誕生日プレゼントの方がずっと貰えるチャンスが論理的・計算的には多い。だからそのことをアリスに理解させたかったのである。これが彼の意図だった。しかしアリスは意見を変えない。なぜなら現実には誰も非誕生日プレゼントをくれたりしないから。ここでも論理家のハンプティ・ダンプティと現実家のアリスが対立する。