鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

歌‘門の上に座ってる’(その10):その夏の宵、昔で茫洋(GLASS8-38)

2010-12-25 19:41:12 | Weblog
 白の騎士の歌がいよいよ最後である。彼が出会った老人は門の上に座っていて、自分の生業を説明した。今や、その老人( that old man )の様子が歌われる。

姿は穏やか、話は鷹揚 Whose look was mild, whose speech was slow,
髪は白く雪模様 Whose hair was whiter than the snow,
顔は烏の表情 Whose face was very like a crow,
眼は灼熱し熾きのよう With eyes, like cinders, all a glow,
老人は悩みで苦境 Who seemed distracted with his woe,
体を前後に動揺 Who rocked his body to and fro,
そしてモグモグ、つぶやきは低調 And muttered munblingly and low,
まるで口がねり粉で膨張 As if his mouth were full of dough,
鼻息荒くちょうど水牛仕様 Who snorted like a buffalo―
その夏の宵、昔で茫洋 That summer evening, long ago,
老人は門の上に座ってる A-sitting on a gate.
 
 PS1:原文では‘slow’‘snow’‘crow’‘glow’‘woe’‘fro’‘low’‘dough’‘buffalo’‘ago’が脚韻。和訳では「鷹揚」「雪模様」「表情」「よう」「苦境」「動揺」「低調」「膨張」「仕様」「茫洋」が脚韻を踏む。

 PS2:白の騎士が遠い昔、夏の宵に会ったこの老人は姿は穏やか、話は鷹揚。髪は白く、顔は烏のようで、目は灼熱。悩みに苦しみ、体を揺らし、モグモグ低くつぶやく。口はねり粉でいっぱいのようで、鼻息荒い。そして門の上に座っていた。

歌‘門の上に座ってる’(その9):老人を思い出させる3つのケース(GLASS8-37)

2010-12-20 21:48:34 | Weblog
 白の騎士の歌の第8連は、私(騎士)がメナイ橋の防錆の計画に熱中し老人の説明が聴こえないこと、しかし計画を立て終わり老人の生業の説明が今や聴こえること、そして老人に私が感謝すると歌った。歌の第9連が続く。

さて今やもし私が偶然投入 And now, if e'er by chance I put
私の指をニカワの液中 My fingers into glue, 
または激しく夢中に右足挿入 Or madly squeeze a right-hand foot
左足の靴の内部中  Into a left-hand shoe,  
 
 PS1:第9連前半は原文では‘put’と‘foot’、和訳では「投入」と「挿入」が脚韻。また原文では‘glue’と‘shoe’、和訳では「液中」と「内部中」が脚韻。

 PS2:私が指をニカワに入れたらこれはベタベタして驚く、または激しく夢中に右足を左足用の靴に入れたらこれも確かに驚く。

または私が落とす爪先上に Or if I drop upon my toe
ひどく重たい錘 A very heavy weight,
私を泣かせるのは、それらが意識上に I weep, for it reminds me so, 
思い出させる私が知ったあの年寄り Of that old man I used to know― 

 PS3:第9連後半は原文では‘toe’と‘so’、和訳では「爪先上に」と「意識上に」が脚韻。また原文では‘weight’と‘used’、和訳では「錘」と「年寄り」が脚韻。この後に続く原文で to know― は次の第10連への接続の語句と位置づけ、脚韻を踏む対象から除く。

 PS4:私が爪先上にひどく重たい錘を落とせばこれも私を驚かせる。3つのケースのいずれであれそれらは私を驚かせ、あの老人のことを思い出させて、懐かしさに私を泣かせる。

歌‘門の上に座ってる’(その8):メナイ橋の防錆対策はワインの中での煮沸(GLASS8-36)

2010-12-13 21:12:50 | Weblog
 白の騎士の歌の第7連は老人がバターロール、蟹、二輪馬車の車輪を探しだし,それらを売るのが生業と述べた。次いで老人は騎士の健康を祝し乾杯する。歌の第8連が次のように続く。

私には彼の説明がそのとき聴こえた、理由はまさしく I heard him then, for I had just
私の計画の完結  Completed my design
つまりメナイ橋を防錆対策うるわしく  To keep the Menai bridge from rust
ワインの中で煮沸  By boiling it in wine.
 
 PS1:第8連前半は原文では‘just’と‘rust’、和訳では「まさしく」と「うるわしく」が脚韻。また原文では‘design’と‘wine’、和訳では「完結」と「煮沸」が脚韻。

 PS2:メナイ橋を防錆のためにワインの中で煮沸したところで効果があるわけない。馬鹿げた計画。ただし私の意識が計画に集中するのをやめれば、老人の言うことが聴こえるようになるのはその通り。

私は老人が説明してくれたことに謝意 I thanked him much for telling me
知らされたのは彼の稼ぎの按配 The way he got his wealth,
しかし何よりも感謝すべきは老人の厚意 But chiefly for his wish that he
目指されたのは私の健康を祝す乾杯 Might drink my noble health.

 PS3:第8連後半は原文では‘me’と‘ he’、和訳では「謝意」と「厚意」が脚韻。また原文では‘wealth’と‘health’、和訳では「按配」と「乾杯」が脚韻。

 PS4:騎士(私)が老人に感謝するのは当然。老人はわざわざ彼の生業について説明し、さらに私の健康を祝し乾杯してくれたのだから。

歌‘門の上に座ってる’(その7):地面を掘るとバターロールが出てくる(GLASS8-35)

2010-12-05 23:12:19 | Weblog
 白の騎士の歌の第6連は、老人の仕事が鱈の眼から作ったボタンを売ることだと歌った。続く第7連は次の通りである。

「私はある時は地面を掘ってバターロールを探す ‘I sometimes dig for buttered rolls,
または鳥もちを用意して蟹を捕まえ蹂躙; Or set limed twigs for crabs;
またある時は私は草の小山で探す  I sometimes search the grassy knolls
二輪馬車の車輪。 For wheels of Handsome-cabs.

 PS1:第7連前半は原文では‘rolls’と‘knolls’、和訳では「を探す」と「で探す」が脚韻。また原文では‘crabs’と‘Handsome-cabs’、和訳では「蹂躙」と「車輪」が脚韻。

 PS2:地面を掘るとバターロールが出てくるのか?おかしい。鳥もちで捕まえるのは鳥なのになぜ蟹なのか?おかしい。草の小山に二輪馬車の車輪を探してあるのか?それは落ちているとしても馬車道で探すのではないのか?これもおかしい。鍛冶屋にあるのではないのか?

そしてそれが私の生業」(と彼はウィンク) And that's the way' ( he gave a wink) 
「そうやって私は稼ぎを実行― ‘By which I get my wealth―
かくてとても楽しい乾杯のドリンク And very gladly will I drink
祝すのは旦那様の高貴な健康。」 Your Honour's noble health.'

 PS3:第7連後半は原文では‘wink’と‘ drink’、和訳では「ウィンク」と「ドリンク」が脚韻。また原文では‘wealth’と‘health’、和訳では「実行」と「健康」が脚韻。

 PS4:老人は見当外れのところでバターロール、蟹、二輪馬車の車輪を探しだし、それを売るのが彼の生業だと言う。彼がウィンクしたのは自分の言っていることが荒唐無稽だと白状しているためかもしれない。しかしともかく彼はこうして稼ぐことができるのだから、めでたい。かくて楽しく乾杯である。