寝ている二人の女王のいびきが歌になり言葉さえわかるようになる。アリスは歌を熱心に聞き突然二人の女王の重い頭がないことに気づく。アリスの前にアーチのついた戸口がある。注意を聴覚に集中すると触覚も視覚も忘れられる。いつの間にか自分のいる情景が変わった。
赤の女王が「私も眠い!」と言う。やがて白の女王も赤の女王もアリスのひざを枕に寝てしまう。アリスが言う。「寝ている女王様二人の面倒を見るなんて全英国史でなかったことよ!」と。理由は女王が普通の女の子のひざを枕に寝るからではない。アリスの理由は「一度に女王が一人以上いることがない!」からである。世界に二人の女王がいることはある。しかし英国に二人の女王がいたらおかしい。
白の女王が「私はとっても眠い」と言う。「かわいそうに彼女は疲れたんだ」と赤の女王。そしてアリスに「白の女王に子守唄を歌って上げなさい」と命じる。アリスが「子守唄を知らない」と答えると赤の女王が「歌って見せよう」と歌い始める。これは MOTHER GOOSE の中の子守唄の替え歌である。
①Hush-a-by baby, on the tree top!
→ Hush-by-lady, in Alice's lap!
ねんねんよう、木の上で!→ねんねんよう、アリスのひざで!
② When the wind blows the cradle will rock.
→ Till the feast's ready we've time for a nap.
風が吹くと揺りかごがゆれる→宴が始まるまで少しの間眠れる
③ When the bough breaks the cradle will fall.
→ When the feast's over we'll go to the ball.
枝が折れると揺りかごが落ちる→宴が終わると舞踏会に出かける
④ Down will come baby, cradle, and all!
→ Red Queen, and White Queen, and Alice, and all!
下に落ちる、赤ちゃん、揺りかご、みんな!→赤の女王、白の女王、アリス、みんな!
上手な替え歌である。
①Hush-a-by baby, on the tree top!
→ Hush-by-lady, in Alice's lap!
ねんねんよう、木の上で!→ねんねんよう、アリスのひざで!
② When the wind blows the cradle will rock.
→ Till the feast's ready we've time for a nap.
風が吹くと揺りかごがゆれる→宴が始まるまで少しの間眠れる
③ When the bough breaks the cradle will fall.
→ When the feast's over we'll go to the ball.
枝が折れると揺りかごが落ちる→宴が終わると舞踏会に出かける
④ Down will come baby, cradle, and all!
→ Red Queen, and White Queen, and Alice, and all!
下に落ちる、赤ちゃん、揺りかご、みんな!→赤の女王、白の女王、アリス、みんな!
上手な替え歌である。
白の女王がびくびくしている。赤の女王が「教育が良くなかったから白の女王は知識が少ない。でも気立てがよい。だから頭をなでればとても喜ぶ!」とアリスに言う。実は鏡の国の白の女王はこの世界の猫である。もちろんアリスは鏡の国にいるから白の女王の頭をなでる勇気はない。
アリスは自分を卑下しないから自分の意見が正しいと思う。白の女王が間違っている。本来なら間違いを指摘してもよいのだが白の女王の感情を傷つけたくないのでアリスは黙る。赤の女王がアリスに味方し白の女王の間違いだと判定。その上で「アリス女王陛下は白の女王を許すべきです!白の女王に悪気はないが間違ったことをつい言うから」と発言。ただし赤の女王がなぜアリスの意見が正しいと判断するか根拠が不明。
「雷があまりに怖くて自分の名前を思い出せない位だった!」と白の女王が言った。彼女は怖さの程度を譬えて言った。ところがアリスは反論する。「災難の最中に何で自分の名前を思い出す必要があるのか!」災難の最中についてはアリスの言うとおり。しかし災難について後で説明するなら白の女王の発言に間違いはない。自分の名前を思い出せない災難(白の女王)と自分の名前を思い出す必要がない災難(アリス)。話が混線している。
白の女王が雷がどんなにひどかったか説明する。「屋根の一部がはがれとてもたくさんの雷が入ってきた。それが塊となって部屋中を転げまわった。テーブルや物をひっくり返した」と。普通の雷は形がないがこの雷は形があり珍しい。
白の女王がまた言い出した。「それはとってもひどい雷だった。誰も考え及ばないような! You can't think! 」と。この「 you 」は人々一般を指す。ところが赤の女王が言う。「この子が考え及ぶなんてあり得ない!」と。赤の女王は「 you 」をアリスと考えた。もちろんアリスを軽んじている。ここには言葉遊びがある。「 you 」は人々一般もアリスもどちらも意味するので意図的に混線させれば面白い。
「ハンプティ・ダンプティが何のために来たのか知ってる」とアリスが言う。「彼はその魚を罰したいのよ。その理由は・・・・」ここで話が中断。なぜ彼が魚を罰したいのか、その答は第6章ハンプティ・ダンプティの歌にある。彼はコルク回しを持って魚を起こしに来た。魚が言いつけを聞かずに寝ているから。ところが白の女王がアリスの話を聞かない。だから話が中断した。
「ハンプティ・ダンプティがコルク回しを手に持って戸口にやってきた」と白の女王が言う。「彼はカバを探しているので家の中に入りたい」とのこと。「ところがその朝はあいにく家の中にそういうこと such a thing はなかった」と彼女が続ける。アリスは驚く。「いつも generally カバが家の中にいるんですか?」と。アリスの驚きはもっともである。しかし白の女王は全然驚いていず、カバが家の中にいることは当然で、ただカバがいる日を正確に呈示するのみ。「いつも」ではなくて、「木曜日だけ!」と。