鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

ライオンの偉大な問いがアリスには適用できない!(GLASS7-15)

2009-11-29 20:04:29 | Weblog
 さてライオンが話に加わる。彼はアリスを発見し「これは一体何なんだ!」と言う。ユニコーンが「本当にこれは何なのか?」と叫び、「お前にわかりっこない。おれだってわからないんだから」と応じる。ライオンがアリスに「お前は動物か、植物か、鉱物か?」と問う。
 
 PS1:このライオンの問いは韻を踏む。Are you animal or vegitable or mineral? さて、これは偉大な問いでありこの世界にこれ以外の種類はないからアリスはこのいずれかであるはずである。世界は生物と無生物からなり、鉱物は無生物、生物は動物か植物である(動物かつ植物ということもありうる)。

 アリスが答える前にユニコーンが「架空の化け物だ!」と答える。

 PS2:このユニコーンの答はなにを意味するのだろうか。ライオンの偉大な問いが何とアリスには適用できないのだ。アリスは動物でも植物でも鉱物でもない。彼女はこの世界に属さないのである。

かばんから大きなプラム・ケーキを取り出す(GLASS7-14)

2009-11-22 21:28:00 | Weblog
 さてユニコーンが「プラム・ケーキがほしい」と白の王様に言う。王様は使者ヘイアに「かばんを開けろ!」と命令する。ヘイアがかばんから大きなプラム・ケーキを取り出しアリスに持たせる。続いて彼は大皿と大ナイフをかばんから取り出す。どうやってそれらが出てきたのかアリスには理解できない。「まるで手品みたいだわ」と彼女は思う。

 PS:プラム・ケーキはむき出しだからそれがかばんに入っていたとしたら確かに日常の現実では手品である。しかし鏡の国ではそれは普通のことかもしれない。

約束:架空の化け物ユニコーンの日常的現実内での存在を信じる(GLASS7-13)

2009-11-08 22:32:07 | Weblog
 虚構の中の生き物子ども(アリス)が日常の現実の中に現れ戸惑うユニコーン。アリスにとっては虚構の中の生き物ユニコーンがアリスの現実(アリスは鏡の国にいるのだがあたかも本来の日常の現実の中に自分がいるかのように思っている)の中に現れ驚いている。双方が架空の化け物の現前を信じていいのか迷っている。しかも双方にとってその化け物は「口さえきく」のでありおのれが対等の存在だとまで主張する。
 アリスにとってのユニコーンの存在とユニコーンにとってのアリスの存在は全く等価である。双方にとって他方は異現実の存在であってこの現実のうちには存在の場所がない架空の仮象に過ぎない。
 ところが架空の仮象同士が出会っている。

 ユニコーンが言う。「そうか、いまや実際に我々は会ってしまったわけだから、お前が俺の存在を信じるなら、俺もお前の存在を信じよう!これが取引というものではないかな?」と。
 アリスが「いいわ、あなたがそれでいいのなら」と答える。

 PS1:ユニコーンの戸惑いは当然である。彼にとって異現実の存在であり架空の化け物である子ども(アリス)なるものがユニコーンの現実の中に存在することはありえない。言い換えればアリスが異現実である鏡の国に入り込んだこと自体がありえない。

 PS2:アリスは鏡の国を本来の日常の現実と混同しているのでユニコーンの現前に驚いているだけである。鏡の国が架空の現実であるとアリスが認識していればその中にアリスはいるのだから、ユニコーンの存在に驚く必要はない。
 正確には、ユニコーンの取引は、アリスが日常の現実にいるときユニコーンがその現実内に出現する場合に成立するものである。

 PS3:アリスが日常的現実に戻ったときアリスは果たして約束どおり架空の化け物ユニコーンの日常的現実内での存在を信じるだろうか?心配である。