鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

冬に歌われた歌を記憶し春・夏がすぎ秋に書き記すことが可能か?(GLASS6-31)

2009-05-30 21:21:25 | Weblog
ハンプティ・ダンプティがさらに詩を暗唱する。
 
 夏、そのとき日が長い     In summer, when the days are long,
 おそらく、君はその歌を理解  Perhaps, you'll understand the song;

 PS1:英詩は“long”と“song”、和訳は「長い」と「理解」が脚韻を踏む。
 
 秋、そのとき茶色の木々の葉 In autumn, when the leaves are brown,
 ペンとインクを取り、君は記せ歌の言の葉 Take pen and ink, and write it down.

 PS2:英詩は“brown”と“down”、和訳は「木々の葉」と「言の葉」が脚韻を踏む。

 PS3:さてハンプティ・ダンプティの詩によれば、①冬、歌が歌われる。②春、その歌の意味が告げられる。③夏、その歌が理解される。④そして、ようやく秋、歌が記される。なんと冬に歌われた歌を書き記すとき、季節は春・夏がすぎ、すでに秋となっている。だから理性的で真面目なアリスが驚いて感想を述べる。

 「その歌をそんなに長い間、覚えていることができたら、私はそれを書き記すわ」とアリス。するとハンプティ・ダンプティが言う。「お前がそのように批評をする必要はない。それら批評は無分別で私を怒らせる」と。

 PS4:彼が怒る気持ちもわかる。彼は詩を暗唱しているのであり詩の世界の情緒のうちに生きている。ところがアリスは日常世界の分別のうちに生き続けその観点から批評する。これは詩の世界の秩序からすれば無分別である。

緑色(green)と思いの色々(mean)(GLASS6-30)

2009-05-28 21:53:33 | Weblog
ハンプティ・ダンプティによる詩の暗唱が続く。

 春、そのとき森が茂り緑色  In spring, when woods are getting green,
私は君に試み告げる思いの色々 I'll try and tell you what I mean.

 PS1: 緑色(green)と思いの色々(mean)が脚韻を踏んでいる。

 PS2: アリスはハンプティ・ダンプティの詩を単なる詩の暗唱と思わず、彼の発言と思いいちいちコメントする。ここでは思いの色々をアリスに試み告げると彼が言うので、彼女が応じる。

 「どうもありがとうございます」とアリス。



“見るだけでなく聞くこともできる目”(GLASS6-29)

2009-05-17 20:08:47 | Weblog
 ハンプティ・ダンプティが詩を暗唱し始める。アリスはあまり聞きたくなかったが彼が「この詩は全くお前を楽しませるために書いたものだ」と言うので、聞くことにする。

 冬、そのとき野原が白い      In winter, when the fields are white
 私はこの歌を歌い君は嬉しい    I sing this song for your delight

 PS1: 白い(white)と嬉しい(delight)が脚韻を踏んでいる。

 ここでハンプティ・ダンプティが「ただし歌いはしないがね! I don't sing it 」と説明する。
 
 PS2: “歌う sing ”は①歌を作る・作詩すると、②声を出しメロディーをつけて歌うと二重の意味があるので、彼は①作詩するが、②声を出しメロディーをつけて歌うことはしないと説明した。

 アリスが「私が見るところではあなたは歌ってません! I see you don't 」と応じる。するとハンプティ・ダンプティが言う。「おれが歌っているかいないかお前は目で見る you can see とは、お前は誰よりもよい目をしてるんだな」と。アリスは黙っている。

  PS3: アリスは“see”の語を「理解する」の意味で使っている。ところがハンプティ・ダンプティは“see”の語を「目で見る」の意味にとっている。だから、歌っているかいないかについて「耳で聞き」確認するのでなく「目で見て」わかるとは彼にとって驚きである。“見るだけでなく聞くこともできる目”とは確かに「誰よりもよい目」である。


‘mome’は‘from home’の短縮形である(GLASS6-28)

2009-05-13 22:42:54 | Weblog
『ジャバウォク物語 Jabbawocky 』の第1聯4行目
「そして the mome raths が outgrabe する」 And the mome raths outgrave.

 アリスがこれについて質問する。「‘mome raths’は何ですか?」と。ハンプティ・ダンプティが答える。「‘raths’は緑色の豚の一種である。‘mome’は‘from home’の短縮形である。だから道に迷っているの意味だ。」と。

 PS1:かくて‘mome raths’とは「家から離れ道に迷った緑の豚」の意味である。‘mome’の説明は納得がいく。しかし‘raths’が緑色の豚の一種だと言う根拠は不明である。

 アリスがさらに「‘outgrabe’の意味は何ですか?」と尋ねる。ハンプティ・ダンプティが説明する。「‘outgribing’は吼える bellowing とさえずる whistling との間にあって、真ん中にある種のくしゃみがはいったようなものである。・・・・その声は一度聞いたらもうたくさん、というやつだ。」と。
 
 PS2:かくて‘outgrabe’は「吼えさえずりくしゃみする」の意味だがそのような意味に何故なるかが不明である。

 PS3:『ジャバウォク物語 Jabbawocky 』の第1聯(1-4行目)の和訳はかくて次の通り。
   1行目「あぶり時の午後4時だった、そしてねばやかなトーヴたちが」
   2行目「日時計の周りの芝生の土地でジャイロスコープ的に回り、きり的に穴あける」
   3行目「全く悲惨貧弱なのはボロゴウヴ鳥たちである」
   4行目「そして家から離れ道に迷った緑の豚が吼えさえずりくしゃみする」

悲惨貧弱 mimthy ( miserable+flimthy ) (GLASS6-27)

2009-05-09 23:23:04 | Weblog
『ジャバウォク物語 Jabbawocky 』の第1聯3行目
「全く mimthy なのは the borogoves である」  All mimsy were the borogoves

 これについてハンプティ・ダンプティが説明。「‘mimthy’は‘flimty(貧弱) and miserable(悲惨)’で鞄語である」と。さらに続いて言う。「 ‘the borogoves’ はやせてみすぼらしい外見の鳥で羽根が回り中に突き出ている、生きているモップのようなものである。」
  
 PS1:‘mimthy’は「悲惨貧弱」と訳そう。また‘the borogoves’は「ボロゴウヴ鳥」と訳してみよう。

 PS2:3行目の和訳「全く悲惨貧弱なのはボロゴウヴ鳥たちである」



日時計の周りの芝生の土地 wabe(a long way + beー ) (GLASS6-26)

2009-05-05 19:18:15 | Weblog

  『ジャバウォク物語 Jabbawocky 』の第1聯2行目
 「 the wabe のなかで gire し gimble する 」 Did gire and gimble in the wabe: 
 
 これについてアリスが質問する。「‘gyre’と‘gimble’はどういう意味ですか?」
ハンプティ・ダンプティが説明する。「‘gyre’とは gyroscope (ジャイロスコープ)のようにグルグル回ること。‘gimble’とは gimlet (きり)のように穴をあけることである。」続けて今度はアリスが「‘the wabe’は日時計の周りの芝生の土地のことでしょう。」と言い自分の頭の良さに驚く。「もちろんそうだ!」と彼が言い、さらに説明する。「それが‘wabe’と呼ばれるのは日時計の before(前に), behinde(後ろに)  a long way(はるかに広がる) からだ。」と。アリスが「それは日時計の両側 beyond(向こうに) はるかに広がるから。」と付け加える。

   PS1:「日時計の周りの芝生の土地」wabe の説明はすばらしい。「 a long way(はるかに広がる) 」の一部 wa と「日時計( it )の before(前に), behinde(後ろに), 両側 beyond(向こうに)」の一部 be -とを結合させて鞄語 wabe を著者は作ったのである。なお確かにアリスは頭がいい。

   PS2:2行目の和訳「日時計の周りの芝生の土地でジャイロスコープ的に回り、きり的に穴あける」
  


あぶり時の午後4時 brillig(broiling+bigin) (GLASS6-25)

2009-05-05 17:51:13 | Weblog

  ハンプティ・ダンプティが「すべての詩について説明できる」と言うのでアリスは『ジャバウォク物語 Jabbawocky 』の第1聯を暗唱する。

“'Twas brillig, and the slithy toves
  Did gire and gimble in the wabe:
  All mimsy were the borogoves
  And the mome raths outgrabe.”

 「難しい言葉がたくさんある!」と彼が言う。
 
 1行目 「時間は brillig だった、そして slithy なトーヴたちが」
       'Twas brillig, and the slithy toves
 
 「 ‘brillig’は午後4時を意味する、つまり夕飯のために物を broiling する(あぶる)ことを bigin (始める)時間を意味する。」「‘slithy’は lithe (しなやか)で slimy (ねばねば)の意味である。これは旅行かばん portomanteau のようなもので2つの意味が1つの言葉の中に入っている。」「‘toves’はアナグマ badgers のようで、トカゲ lizards のようで、また栓抜き corkscscrews のようなものである。」「それは奇妙な外見の生き物だわ」とアリス。彼が続ける。「それらは巣を日時計の下に作りチーズを食べて生きる」と。

  PS1:第1聯は4行からなるので1行ずつ取り上げる。鞄語 portomanteau word は今や普通の言い方で辞書に載っている。混成語とも呼ばれsmog(smoku+fog)などがある。ここでは鞄語でないトーヴ toves なる生き物が実に奇妙である。アリスが言うとおりである。テニエルの挿絵がトーヴがいかなるものかを示す。

         イラスト: オモゲマ、ボショバト、トグラが幅かりのまわりで

 PS2:1行目の和訳「あぶり時の午後4時だった、そしてねばやかなトーヴたちが」


すべての詩とはこれまでに作られた詩とこれから作られる詩の合計である(GLASS6-24)

2009-05-02 13:33:43 | Weblog
アリスがハンプティ・ダンプティに言う。「あなたは言葉の意味を説明するのが大変お上手なようです、サー Sir 」と。そして「『ジャバウォク物語 Jabbawocky 』と呼ばれる詩の意味を説明していただけますか?」とお願いする。彼が「聞かせてごらん」と言う。そして私はすべての詩について説明できる、つまりこれまでに作られた詩すべて、またまだ作られていないたくさんの詩すべての説明ができる」と自慢する。
 PS:ハンプティ・ダンプティがすべての詩というとき彼は時間の軸まで考慮する。単にこれまで存在したすべての詩だけが対象なのではない。これから作られ存在することになる詩についても彼は説明できるという。これは“すべて人は死ぬ”というときこの言明が時間軸から言えばこれから生まれる人をも含むのと同様である。ハンプティ・ダンプティは論理的に厳密であるが、しかし常識的でない。常識的には「すべての詩について説明できる」といえばすでに作られて今ある詩をさすのが普通である。これから作られる詩を想定したりしない。