鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

ジャバウォク物語⑦:出来事が確かに有るが、しかしその出来事は無規定(GLASS1-24)

2011-07-23 23:07:35 | Weblog
 詩の第7聯は第1聯と同じ。

あぶり時の午後4時だった、そしてねばやかなトーヴたち 
                           Twas brillig, and the slithy toves
時計の周りの芝生の土地でジャイロスコープ的に回り、きり的に穴あけする: 
                           Did gire and gimble in the wabe:
全く悲惨貧弱なのはボロゴウヴ鳥たち   All mimsy were the borogoves
そして家から離れ道に迷った緑の豚が吼えさえずりくしゃみする。 
                           And the mome raths outgrabe.

 アリスが言う。「とっても素敵な詩みたいだわ。でも理解できない。」(アリスは本来、自分に対してさえ理解できないと言うことが好きでない。)「ともかくその詩は私の頭を色んな観念で満たしてくれる。ただそれら観念が何なのか正確にわからない!でも誰かが何かを殺した:ともかく、それは確かだわ。」

 PS1:色んな観念が私の頭を満たすが、それら観念が何なのか正確にわからないとは、どういうことか?何かがあるが、それが何かがわからないこと。出来事が確かに有るが、しかしその出来事は無規定ということ。
 
 PS2:アリスの強がり:「誰かが何かを殺した」と、大まかな規定をその出来事に与える。

ジャバウォク物語⑥:Callooh! Callay! 華流!華麗!(GLASS1-23)

2011-07-17 22:46:10 | Weblog
詩の第6聯は次の通り。

「やよ、汝はジャバウォクを屠りたるか? “And hast thou sllain the Jabberwock?
わが腕(カイナ)に参れ、わが輝ける男子! Come to my arms, my beamish boy!
おお、日は壮麗! 華流! 華麗!」 O frabjous day! Callooh! Callay!”
父は歓喜に笑至笑至。 He chortled in his joy.

PS1:“Callooh! Callay!”は北極カモの鳴き声との説もあるが、ギリシャ語のカロスκαλός(美、善、快)に由来するとの説にもとづき、「華流! 華麗!」と訳した。

PS2:chortle は鞄語。chuckle(くすくすと笑う)+snort(吹き出す)。「笑至笑至」と訳した。

PS3:英詩の“boy”と“joy”、和訳は「男子」と「笑至」が脚韻を踏む。
   英詩の“day”と“Callay”、和訳は「壮麗」と「華麗」が脚韻を踏む。

ジャバウォク物語⑤:勝利し意気揚々と走る galumphing=gallop+triumph(GLASS1-22)

2011-07-10 22:26:26 | Weblog
詩の第5聯は次の通り。

いちに!いちに!ぐさりぐさり One, two! One, two! And through and through
激渦の刃がざくりと突貫! The vopal blade went snicker-snack!
息子はジャバウォク殺害を実行、そしてその首を携行 He left it dead, and with its head
彼は勝利し意気揚々と走り行き帰還。 He went galumphing back.


PS1:英詩の“snack”と“back”、和訳は「突貫」と「帰還」が脚韻を踏む。
   英詩の“dead”と“head”、和訳は「実行」と「携行」が脚韻を踏む。

PS2: vopalは鞄語。GLASS1-20で見たように、vortical(渦の)+principal(首位の)で「激渦の」と訳す。

PS3:galumphingは鞄語。gallop(意気揚々と走る)+triumph(勝利)。勝利し意気揚々と走る。

             

ジャバウォク物語④:暗くて深い森 tulgy wood (GLASS1-21)

2011-07-03 19:50:53 | Weblog
 詩の第4聯は次の通り。

 そしてぞんざい荒々しく思索し彼が屹立 And as in uffish thought he stood,
 ジャバウォクは眼がギラギラ The Jabberwock, with eyes of flame,
 深く暗い森からぬらり飄々と現出 Came whiffling through the tulgey wood,
 そして飛んできながら声はバブラバブラ And burbled as it came!
 
 PS1:英詩の“stood”と“wood”、和訳は「屹立」と「現出」が脚韻を踏む。
    英詩の“flame”と“came”、和訳は「ギラギラ」と「バブラバブラ」が脚韻を踏む。

 PS2:uffishは鞄語。声はgruffish(荒々しくどら声で無愛想)+態度はroughlish(ぞんざい)+気質はhuffish(怒りっぽく不承不承)。ぞんざい荒々しくと訳した。

 PS3:whiffleは風が不規則に吹く意。ぬらり飄々。

 PS4:tulgy wood:ディズニーの映画でアリスが迷い込んだ深くて暗い森が“tulgy wood”と名づけられている。tulgyの意味は不明。

 PS5:burbleは鞄語。bleat(メーメー鳴く)+murmur(ブツブツ言う)+warble(さえずり震わせ歌う)。ぶくぶくと言ったの意。バブラバブラと訳してみた。