鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

粉が挽かれる ground のか、たくさんの花と土地 ground が必要であるのか?(GLASS9-22)

2013-02-26 12:59:32 | Weblog
 アリスが「それ(=粉)は摘まれるのではありません it isn’t picked at all 」と説明。「それは挽いて粉にされるのです・・・・ it’s ground ― 」と言う。白の女王が「なんエイカーの地面が必要なのだ? How many acres of ground? 」と質問。そしてさらに言う。「そんなに多く必要なのだとしたらお前はうっかり抜かしてはならない! You mustn't leave out so many things. 」と。
 
 コメント:アリスと白の女王の会話は絶望的に混乱する。 “It isn’t picked at all. It’s ground.”との発言で、アリスは、粉 flour について語るから、「それは摘まれるのではありません。それは挽いて粉にするのです。」と言ったつもりだった。ところが白の女王は花flower について考える。同じアリスの発言を、白の女王は「花は摘まれるのではない。(=摘む位では足りない。)必要なのは、(広い)地面です。」と解釈した。だから白の女王は言ったのだ。「たくさんの花を集めるため、そんなに何エーカーもの土地が必要なら、何で先に、たくさんの花と土地(many things )について言わず、うっかり抜かしたのだ!」と。

 ※旧稿
それは挽かれる ground のか土地 ground であるのか?(GLASS9-22)
 粉 flour と花 flower との取り違いの中でアリスが言う。「それは摘まれるのでなく挽かれる ground のです」と。「それは土地 ground であるのか。何エーカーの土地がいるのだ?」と白の女王がたずねる。そして「そんなに多く必要なものだとしたらお前はそれをうっかり抜かしたりしてはならない」と忠告。 

(1)音のレベル、(2)文字(=文脈的音=話の縮約記号)のレベル (GLASS9-21)

2013-02-17 14:28:43 | Weblog
 ここで赤の女王がまた質問し始めた。「実用的問題について、お前は答えることが出来るか?」と。そして「パンはどうやって焼くのか?」と尋ねる。アリスが「それなら知ってる!」と、待ってましたとばかり、答える。「まずフラワー flour を用意します。」「どこでフラワー flower を摘めばよいのだ?」と白の女王が尋ねる。「庭でか?それとも生垣でか?」
 
 コメント1:問題があるのは、アリスと白の女王の会話である。共通の言葉「フラワー」が、音として登場する。パンを焼くためには「フラワー」が必要だと、アリス。白の女王も「フラワー」が必要と認めた。ここで、二人の間に、相互了解が成立。

 コメント2:話の中に、まず(1)音のレベルがある。音のレベルで、「フラワー」が相互了解された。(コメント1参照)しかし、話は、そこから先、相互了解がすぐに、成立しないレベルへと、進む。先取りして言えば、「フラワー」1と「フラワー」2が、つまり文脈的音が、やがて区別されることとなる。文脈の中でしか定義されない音のレベルがある。それが文脈的音である。
アリスが「フラワー」1 flour を思っているのに、白の女王が「フラワー」2 flower を思っている。話は(1)音のレベルを基礎として、今や、(2)文脈的音のレベルに達した。同一の音「フラワー」が異なる文脈に出てくる。二人は、まだ今は、相互了解していないが、やがて、各々が、文脈的音「フラワー」1(粉)と、文脈的音「フラワー」2(花)と、別々のものを思っていることを、相互了解するだろう。

 コメント3:文字(文字のつづり)は、文脈的音の差異を指し示す。異なる文字(文字のつづり)が、それぞれ別個の文脈的音を、指し示す。文字 「flour (粉)」が、文脈的音「フラワー」1を指し示し、文字 「flower (花)」が、文脈的音「フラワー」2を指し示す。文字は、文脈的音を指し示す。
さらに言えば、文脈的音は、複雑な話を縮約したもの、複雑な話の省略記号である。かくて、文脈的音を指し示す文字(文字のつづり)もまた、複雑な話の縮約・省略記号である。 

 ※旧稿
粉 flour と花 flowerは違う(GLASS9-21)
 赤の女王がまたアリスに質問する。「パンはどうやって作るのか?」と。アリスが「知ってる!」と叫んで「まず粉 flour がいります」と答える。「どこでその花 flower を摘むのだ?」と白の女王が誤解。「庭でか?垣根でか?」と聞く。粉 flour と花 flower は似ているが違う。

白の女王の規則と、日常の現実の規則(GLASS9-20)

2013-02-12 11:43:50 | Weblog
 「もちろんお前はABCを知っているな?」と赤の女王が言う。「当たり前、知ってる」とアリス。「私も知ってるわ」と白の女王がささやく。そして「これから一緒に二人で、何度もABCを言うことになるぞよ!」と続けた。

 コメント1:白の女王の推論の過程。アリスがABCを知っていて、白の女王もABCを知っている。そうすると二人はこれから何度も一緒にABCを言うことになると、白の女王が推論。同じ歌を知っている二人が、同じ歌を一緒に何度も歌うようなもの。
 しかし、同じ歌は何度も一緒に歌うが、同じABCを何度も一緒に唱えることは、普通、ない。歌は一緒に歌うが、ABCは一緒に唱えない。
 白の女王は、同一のことをともに知っていれば、当然、ともに一緒に、それを外的に表現すると思う:白の女王の規則。
 だが、同一のことを二人がともに知っている場合、それを一緒に外的に表現することは、歌に当てはまるが、ABCに当てはまらない:日常の現実の規則。 
 白の女王の規則が、日常の現実の規則と、異なる。

 さらに「お前に秘密を教えてやろう。私は1字の言葉を、読むことができる!素晴らしいと思わないか!しかし、がっかりしなくて良いぞ。お前もやがて1字の言葉を、読めるようになる!」と白の女王が言った。

 コメント2:ここでも、白の女王の規則と、アリスが従う日常の現実の規則とが、異なる。一方で、白の女王の規則によれば、「1字の言葉を読める」ことが、称賛に値する。他方で、アリスが従う日常の現実の規則―これは当然にも、著者や読者が従う規則でもある―によれば、「1字の言葉を読める」ことは別に称賛に値しない。それは、当たり前のこと、むしろ容易なことに過ぎない。

 ※旧稿
質問が変だし告白・励ましも変である(GLASS9-20)
 赤の女王がアリスに「お前はABCを知っているか?」と変な質問をする。「もちろん!」とアリス。すると「私もABCを知っている」と白の女王が言う。また「秘密を教えよう。実は私は一字の単語を読めるのだ。偉いだろう」とおかしな告白。さらに「お前もがっかりしないでよい。直に出来るようになる」とこれまたおかしな励まし。赤の女王の質問が変なら白の女王の告白・励ましも変である。

日常的現実と夢における非連続と連続 (GLASS9-19)

2013-02-05 11:46:55 | Weblog
 「あなたは計算が出来るの?」とアリスに突然、尋ねられた白の女王は息を飲み、眼を閉じる。そして言う。「足し算は出来る。もしお前が時間をくれれば。しかし、引き算は何があっても出来ない。」

 コメント1:白の女王はなぜこんなに素直でいい人なのか?“GLASS1-1”で見たように、いたずらするのは黒い子猫。白い子猫はいい子。黒い子猫が「鏡の国」では赤の女王として登場、白い子猫は白の女王として登場。「鏡の国」はアリスの見た夢。(“GLASS12”で論じられる赤の王様が見た夢かどうかの問題は、ここでは保留。)アリスの日常的現実と、アリスの夢は、非連続であるとともに、連続する要素も存在する。

 コメント2:日常的現実と夢。キャロルは、夢は日常的現実の変形と考える。白い子猫が白の女王に変形する。両者は、子猫と女王という点では別物だから、非連続。しかしともに白いこと、ともに行動主体であること、さらにいい子、正直な性格であることは連続する。

 ※旧稿
白の女王は正直である(GLASS9-19)
 アリスから尋ねられた白の女王は息をのみそして目を閉じて言う。「足し算は出来る。ただし時間をくれれば。だがどんな場合でも引き算は出来ない」と。白の女王は正直である。彼女は計算が苦手である。