「話しかけられた時だけ話しなさい!」との赤の女王の発言に対し、先ほど、アリスが反論した時、赤の女王は「馬鹿げている!」とアリスを怒った。しかし、ちょっと考えて、赤の女王は突然、話題を変えた。
「お前は『もし私が本当に女王だったら if I really am a Queen 』とさっき言ったが、それはどういう意味だ?どういう権利があって、お前は自分を女王と呼ぶことができるのだ?女王になるための試験に合格するまでは、お前は女王でない。」と赤の女王が言う。
かわいそうなアリスは「私はただ『もし』と言っただけです!」と弁解した。
PS1:赤の女王が今話題にしているアリスの発言の経緯を確認しよう。①頭の上に女王の金の王冠があることを発見したアリスが、初めて歩いてみる(GLASS9-1参照)。②その時、アリスは、女王冠を落とすのではないかと、歩き方がぎごちなかった。しかし彼女は「もし私が本当に女王だったら、じきに上手に歩けるようになるわ」と自分に言った(GLASS9-2参照)。
PS2:赤の女王は、アリスが「自分を女王と呼ぶ call youself a Queen 」ことができるか、その権利を問題とする。
①アリスは確かに「アリスは女王である I am a Queen 」という命題を提示した。
②ただしアリスはその命題について「もし if 」という主観的なMOOD(法)を付け加えた(仮定法)と、弁解する。「アリスは女王である」という命題について、それを事実と考える(直説法)のでなく、またあるべきもの=当為と考える(命令法)のでもない。その命題は非事実だとアリスは考えた(仮定法)と、彼女は弁解した。
③しかし赤の女王は「アリスは女王である」という命題について、その主観的なMOOD(法)を問題にするのではない。
赤の女王は、命題の客観的な真偽を問題にする。例えば「全ての人間は死すべきものである」という命題であれば、この命題は客観的に真である。そして一般に、例えば、大前提「全ての人間は死すべきものである」が真とすると、小前提「ソクラテスは人間である」が真なら、結論「ソクラテスは死すべきものである」は客観的に真である。
しかし「アリスは女王である」という命題は、客観的に真であると証明されていない、そう赤の女王が主張する。
③-2 赤の女王は、アリスが女王になるための試験に合格すれば、「アリスは女王である」という命題は、客観的に真と証明されると、主張する。
④ アリスは、「アリスは女王である」という命題について、主観的に非事実として提示しているのだから(仮定法)、命題そのものの客観的な真偽は問わなくてよいと、弁解した。
④-2 しかしアリスは、実は、「アリスは女王である」という命題が客観的に真であると、秘かに前提していた。
アリスは賢いので、赤の女王から「どういう権利があって、お前は自分を女王と呼ぶことができるのだ?」と質問されたとき、自分は反論できないとすぐに気付いたのである。
アリスは、「女王冠が頭の上にある者はすべて女王である」(大前提)、「アリスは女王冠が頭の上にある者である」(小前提)、よって「アリスは女王である」(結論)と自分が推理したと知っている。この推理は確かに論理的に正しい。
しかしアリスは気付いた。大前提の「女王冠が頭の上にある者はすべて女王である」という命題は、客観的に偽なのである。
アリスは、この大前提の命題を、女王冠が自分の頭上にあることの喜びゆえに無批判に、真であるとしたことが、間違いだったとすぐ気付いた。アリスは賢く論理的である。
すなわち、例えば、小前提が「猫タマは女王冠が頭の上にある者である」(真)とすると、論理的に正しい推論が導く結論は「猫タマは女王である」となる。ところがこれは偽である。(女王の冠が、ある猫の頭の上にあるからといって、その猫が女王であるわけがない。)つまり大前提「女王冠が頭の上にある者はすべて女王である」が、そもそも偽だったのである。
※旧稿(2008-01-06)
権利の根拠につい考える:アリスは論理的である(GLASS9-6)
アリスは自分の頭に女王の冠があるのに先程、気付いた直後、「もし私が女王だとすればすぐに女王らしくなれる」とつぶやいた。それを聞いていた赤の女王が今、あらためてアリスをとがめる。「どういう権利があって、お前は、もし女王だったらなんて言ったのだ?」と。アリスはこの意味をすぐに理解する。頭の上に女王の冠があるという出来事は起きたが、この出来事と、アリスが女王である権利が証明されることとは、別のことである。アリスはたじろぐ。ここでもアリスは、賢くまた論理的である。彼女は女王であると主張する権利が自分にあるかと検討し、一瞬のうちにその権利はないと論理的に結論付けた。例えば女王の冠が、ある猫の頭の上にあるからといって、その猫が女王だというわけではないのだから。
「お前は『もし私が本当に女王だったら if I really am a Queen 』とさっき言ったが、それはどういう意味だ?どういう権利があって、お前は自分を女王と呼ぶことができるのだ?女王になるための試験に合格するまでは、お前は女王でない。」と赤の女王が言う。
かわいそうなアリスは「私はただ『もし』と言っただけです!」と弁解した。
PS1:赤の女王が今話題にしているアリスの発言の経緯を確認しよう。①頭の上に女王の金の王冠があることを発見したアリスが、初めて歩いてみる(GLASS9-1参照)。②その時、アリスは、女王冠を落とすのではないかと、歩き方がぎごちなかった。しかし彼女は「もし私が本当に女王だったら、じきに上手に歩けるようになるわ」と自分に言った(GLASS9-2参照)。
PS2:赤の女王は、アリスが「自分を女王と呼ぶ call youself a Queen 」ことができるか、その権利を問題とする。
①アリスは確かに「アリスは女王である I am a Queen 」という命題を提示した。
②ただしアリスはその命題について「もし if 」という主観的なMOOD(法)を付け加えた(仮定法)と、弁解する。「アリスは女王である」という命題について、それを事実と考える(直説法)のでなく、またあるべきもの=当為と考える(命令法)のでもない。その命題は非事実だとアリスは考えた(仮定法)と、彼女は弁解した。
③しかし赤の女王は「アリスは女王である」という命題について、その主観的なMOOD(法)を問題にするのではない。
赤の女王は、命題の客観的な真偽を問題にする。例えば「全ての人間は死すべきものである」という命題であれば、この命題は客観的に真である。そして一般に、例えば、大前提「全ての人間は死すべきものである」が真とすると、小前提「ソクラテスは人間である」が真なら、結論「ソクラテスは死すべきものである」は客観的に真である。
しかし「アリスは女王である」という命題は、客観的に真であると証明されていない、そう赤の女王が主張する。
③-2 赤の女王は、アリスが女王になるための試験に合格すれば、「アリスは女王である」という命題は、客観的に真と証明されると、主張する。
④ アリスは、「アリスは女王である」という命題について、主観的に非事実として提示しているのだから(仮定法)、命題そのものの客観的な真偽は問わなくてよいと、弁解した。
④-2 しかしアリスは、実は、「アリスは女王である」という命題が客観的に真であると、秘かに前提していた。
アリスは賢いので、赤の女王から「どういう権利があって、お前は自分を女王と呼ぶことができるのだ?」と質問されたとき、自分は反論できないとすぐに気付いたのである。
アリスは、「女王冠が頭の上にある者はすべて女王である」(大前提)、「アリスは女王冠が頭の上にある者である」(小前提)、よって「アリスは女王である」(結論)と自分が推理したと知っている。この推理は確かに論理的に正しい。
しかしアリスは気付いた。大前提の「女王冠が頭の上にある者はすべて女王である」という命題は、客観的に偽なのである。
アリスは、この大前提の命題を、女王冠が自分の頭上にあることの喜びゆえに無批判に、真であるとしたことが、間違いだったとすぐ気付いた。アリスは賢く論理的である。
すなわち、例えば、小前提が「猫タマは女王冠が頭の上にある者である」(真)とすると、論理的に正しい推論が導く結論は「猫タマは女王である」となる。ところがこれは偽である。(女王の冠が、ある猫の頭の上にあるからといって、その猫が女王であるわけがない。)つまり大前提「女王冠が頭の上にある者はすべて女王である」が、そもそも偽だったのである。
※旧稿(2008-01-06)
権利の根拠につい考える:アリスは論理的である(GLASS9-6)
アリスは自分の頭に女王の冠があるのに先程、気付いた直後、「もし私が女王だとすればすぐに女王らしくなれる」とつぶやいた。それを聞いていた赤の女王が今、あらためてアリスをとがめる。「どういう権利があって、お前は、もし女王だったらなんて言ったのだ?」と。アリスはこの意味をすぐに理解する。頭の上に女王の冠があるという出来事は起きたが、この出来事と、アリスが女王である権利が証明されることとは、別のことである。アリスはたじろぐ。ここでもアリスは、賢くまた論理的である。彼女は女王であると主張する権利が自分にあるかと検討し、一瞬のうちにその権利はないと論理的に結論付けた。例えば女王の冠が、ある猫の頭の上にあるからといって、その猫が女王だというわけではないのだから。