鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

真偽の決定は、真偽の確認ができる時まで待てばよい!(WONDERLAND1‐18)

2013-10-26 17:28:11 | Weblog
 兎の穴を落ちながら、「でも猫はコウモリを食べるかしら?」とアリスが思う。そしてここでアリスはかなり眠くなり、夢の中にいるみたいに呟き続ける。「猫はコウモリを食べるかしら?猫はコウモリを食べるかしら? Do cats eat bats? 」そして時々は「コウモリは猫を食べるかしら? Do bats eat cats? 」とアリスは言ってしまう。
 
 ◎言葉遊び(2):“Do cats eat bats?”と“Do bats eat cats?”との違いは、“c”と“b”が入れ替わっただけ。眠ければ、この程度の字の入れ替わりなど起きてもおかしくない。“c”と“b”が入れ替わると、突然、食べる主体と食べられる客体が入れ替わる。日本語なら、例えば「クマがウマを食べる」場合に、“ク”と“ウ”が入れ替わると「ウマがクマを食べる」こととなる。

 ここでアリスがどう思っていたか、推量しよう。今、兎の穴を落ちている真っ最中では、二つの対立する言明「猫がコウモリを食べる」と、「コウモリが猫を食べる」のどちらが本当かを確認できない。それなら、どちらを言っても同じことだと、アリスは思ったはずだ。

 ◎アリスの考え方・感じ方(11):アリスはプラグマティックである。相互に対立、あるいは矛盾する命題が、互いに真であると衝突しても、真偽を確認できない間は、どちらも等価である。真偽の決定は、真偽の確認ができる時まで、待てばよい。

アリスのおしゃべりの連続を支えるのは、連想の流れ! (WONDERLAND1‐17)

2013-10-06 21:49:40 | Weblog
 まだどんどん落ちる。することが何もないので、アリスはまた一人しゃべり始める。「ダイナーは今晩、私がいなくて寂しがるわ。」(ダイナーは飼い猫。)「ダイナーと一緒に穴を落ちたかった!空中にネズミはいないけど、でもコウモリがいる。ダイナーはコウモリを捕まえればいい。コウモリはネズミにそっくりだから。」
 
 ◎アリスの考え方・感じ方(10):空中にネズミはいないが、ネズミにそっくりのコウモリがいる。(猫のダイナーにとって都合のいい現実。)空中では、猫は、ネズミでなく、その代替のコウモリを捕まえればよい。アリスの連想の流れを確認しよう。①「空中」→②空中にいる「コウモリ」→③コウモリに似る「ネズミ」→④ネズミを捕まえる「猫」→⑤「猫がコウモリを捕まえる」。アリスのおしゃべりの連続を、連想の流れが支える。(「 」はアリスの関心の中心を示す。)
 あるいは、もう少し詳しく見ると、①「猫」のダイナー→②猫が捕まえる「ネズミ」(以上、連想1)。③「空中」→③空中にいる「コウモリ」→④コウモリに似る「ネズミ」(以上、連想2)。ここで連想1の流れと連想2の流れが、合流。⑤「ネズミ」を猫が捕まえる(②)→⑥ネズミは「コウモリ」に似る(④)→⑦コウモリを「猫」が捕まえる。(以上、連想3)