鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

アリスの身体は鏡の国に属するが、「歩く」という身体能力は現実の世界に属する(GLASS2-14)

2011-11-27 22:39:29 | Weblog
 アリスから見える距離のところに、チェスの赤の女王が立っている。アリスは女王と話したいと思う。薔薇が「女王に会いたいのだったら、反対方向に歩くよう忠告する!」と言う。
 アリスはこの忠告がくだらないと思い、無視する。赤の女王のほうに向かって歩き出す。驚いたことに、瞬時に女王の姿が消える。アリスは、出発点だった家の戸口にいる自分を発見する。

 PS1:「鏡の国」はあべこべの世界だから、現実の世界で前に進むと、鏡の国では(現実の世界における)逆のベクトル方向に自分が進む。
 さて女王は鏡の国にいる。アリスが鏡の国の住人なら女王に向かって歩けばよい。ところがアリスは現実の世界の住人である。だからアリスが女王に会うためには反対方向に歩かなければならない。
 つまり、アリスの身体は確かに鏡の国に属するが、「歩く」という身体能力は現実の世界に属すると言える。

 今や女王を見失って、アリスはムッとする。そこで元の場所に引き返す。

 PS2:女王を目指すのでないときは、アリスの身体能力は鏡の国の住人と同じように機能する。だから元の場所に引き返すことができる。ところが女王を目指すときは、アリスの「歩く」という身体能力は現実の世界に属し、あべこべに歩かないと女王のところに行けない。

 元の場所にもどったアリスは女王を探す。遥か遠くに女王を発見。今度は逆方向にアリスは歩く。1分と経たずにアリスは女王の面前に達する。しかも長い間、目指していた丘も目の前にある。

 PS3:何とアリスがあんなに苦労していた丘に行く方法も、「反対方向に歩く」ことだった!

「薔薇の頬 rosy cheeks 」&「しぼみ始めた」のでない長い髪(GLASS2-13)

2011-11-20 02:05:27 | Weblog
 「お前みたいに動き回ることができる花がもう一種類、この庭にいる。その花は、お前より赤いし、花びらが短い!」と薔薇が言う。「その花びらはダリアみたいにきっちりしてる。とにかく君の花びらみたいにくしゃくしゃじゃない!」と鬼百合。

 薔薇が優しく言う。「でもお前の責任 your fault ではない。お前はただ、しぼみ始めてるだけだ。花びらがだらしなくなるのも仕方ない!」と。アリスはこの薔薇の考え「しぼみ始めてる」に大反対。

 その時、ドシン、ドシンと足音をたててチェスの赤の女王が現れた。アリスが最初、彼女を灰の中に見つけたときは3インチ程しかなかったが、今はアリスより頭半分背が高い。

 PS1:赤の女王の登場で「①アリスが花だとすると何色?また②花びらは何か?(GLASS2-7)」の答えが分かった。①女王の赤色に対して、アリスの色が問われる。薔薇が「申し分ない」と形容する色である。アリスは「薔薇の頬 rosy cheeks 」をしている。

 PS2:②花びらは頭髪である。若い娘のアリスは髪を長く伸ばし、成人女性の赤の女王は髪をまとめている。

 PS3:髪が長いのは、だらしなくないし、そもそも決して自分が「しぼみ始めた」からでもない。アリスはそう思い、薔薇の考えに反対した。
        
                

「誰にも会ったことがない!」と「誰とも会ったことがある!」(GLASS2-12)

2011-11-15 21:56:01 | Weblog
 「アリスよりもっと間抜けな顔をした人なんて誰にも会ったことがない! I never saw anybodey that looked stupider! 」とのスミレの発言。それを聞いた鬼百合が「黙れ!」と叫ぶ。そして言う。「お前はまるで誰とも会ったことがあるみたいだな! As if you ever saw anybody! いつも頭を葉っぱの下に入れてグーグー寝て蕾と同じで世界で起きてることを何も知らないくせに!」と。
 
 PS:ここも言葉遊び。「誰にも会ったことがない! I never saw anybodey! 」に対し「誰とも会ったことがある! You ever saw anybody! 」が提示される。I=You=スミレなので、この二つの発言の違いは一ヵ所、‘never’と‘ever’のみである。この二つの発言は、一ヵ所を除いて同一である。だから鬼百合が「まるで・・・・みたいだ」と酷似性を指摘した。

アリス、薔薇、スミレの言葉遊び(GLASS2-11)

2011-11-06 18:35:55 | Weblog
 “花床(=寝床) beds がとても柔らかく作られると、花はいつも寝ていてしゃべらない”と知って、アリスは“だからこれまでしゃべる花と会ったことがなかったんだ”と納得した。
「こういうことを考えたことは、これまでなかったわ! (1) I never thought of that before! 」とアリスが言った。
 これに対し薔薇が厳しい調子で言った。「私の見解では、お前は考えるということが全くない! (2) You never think at all! 」と。
 突然、スミレが「アリスよりもっと間抜けな顔をした人なんて見たことがない! (3) I never saw anybodey that looked stupider! 」と言った。

 PS:アリス、薔薇、スミレのこの発言はどういう関係があるのか?実はアリスの発言の一部を入れ替えたor引き継いだのである。
 アリスの発言がまずある。(1) I(=Alice) never thought of that before!
 薔薇がこれを一部、変化させる。(2) You(=Alice) never think at all! つまり時制を別とすれば、of that before が at all に置き換わった。
 スミレがアリスの発言の一部 (1) I never thought のうち、 I never はそのまま引継ぎ、th を s に置き換え、thought の母音を saw に引き継いだ。かくてスミレの発言は(3) I never saw と始まる。
 アリス、薔薇、スミレの発言は、そのやり取りが意味的に面白いが、同時に、アリスの発言をもととする言葉遊びでもある。