鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

2重に解釈できる質問:「年齢はいくつか」or「言ったかどうか」(GLASS6-13)

2009-01-24 11:27:38 | Weblog
「ではお前に質問しよう。お前は自分が何歳であると言ったか?」 How old did you say you were? こうハンプティ・ダンプティが尋ねた。アリスがちょっと計算して答える。「7歳6ヶ月です」と。ところがハンプティ・ダンプティが勝ち誇ったように叫ぶ。「大間違い!」と。そして彼が説明する。「お前は年齢に関して一言だって言わなかった」と。

 PS:これはいったいどういうやり取りだったのだろう。「お前は自分が何歳であると言ったか?」は2重に解釈できる。①アリスが「何歳」と答えたかを確認する質問。この場合はアリスは例えば7歳6ヶ月とか答えるだろう。②もうひとつはアリスが年齢に関して「言ったことがあるか」を確認する質問。ハンプティ・ダンプティは悪い奴でいずれにしろアリスが間違うことになるように質問したのである。
 アリスが質問を①の意味にとり「7歳6ヶ月です」とか答えれば、彼は②の意味で質問したのだからアリスに「大間違い!」と言う。
 逆にアリスが質問を②の意味にとり「年齢のことは言ってません!」とか答えれば、彼は①の意味で質問したのだから「何歳!」と答えないアリスに「大間違い!」と言うのである。


「今度は私の番だ!」:順番に謎々を出して答えさせるゲーム(GLASS6-12)

2009-01-24 10:48:12 | Weblog
アリスが「おしまいから2番目に言ったこと」が何か自分にはわからないと答えたので、ハンプティ・ダンプティが「テーマを選ぶのは今度は私の番だ!」と言う。アリスは「まるで彼はゲームをしているみたいな言い方だわ!」と思う。

 PS:ここでゲームとはおそらく何人かが順番に謎々を出して答えさせるゲームようなものだろう。ハンプティ・ダンプティの謎々にアリスが答えられなかった。だから次に謎々のテーマを出すのは彼の番ということだろう。しかしアリスにはゲームをしているつもりは全然ない。アリスはただ対話をしているだけである。ハンプティ・ダンプティが勝手に謎々出しゲームと思いこんでいるとアリスはとまどっている。



「おしまいから2番目に言ったこと」:話題のまとまりをどう規定するかの問題(GLASS6-11)

2009-01-17 14:25:56 | Weblog
握手の後、ハンプティ・ダンプティは自分が塀の上にいても安全である理由について「私が塀から落ちても王のすべての馬とすべての兵隊がすぐに私を必ず拾い上げる」からとようやく説明する。ところが、ここで彼が言う。「この会話は進み方が少し早すぎる。おしまいから2番目に言ったことに戻ろう。」と。

 PS:ここで「おしまいから2番目に言ったこと the last remark but one 」とはどういう意味か?「言ったこと」つまり話題のまとまりをどう規定するかによって何がおしまいから2番目かさまざまでありうる。  
 例えば①「塀の上でなく地面のうえにいた方が安全だと思いませんか?」とのアリスの発言以後を最後の話題と考えれば、おしまいから2番目に言ったことは「なぜあなたは1人で戸外の塀の上に座っているんですか?」というアリスの発言以後の話題である。(GLASS6-7)
 ところが②おしまいに言ったことを「王のすべての馬とすべての兵隊がすぐに私を必ず拾い上げる!」というハンプティ・ダンプティの言葉とすれば、おしまいから2番目に言ったことは「お前は私と握手してよいぞ!」(GLASS6-9)という彼の発言である。
 かくてアリスは話題のまとまりをどう規定するかわからないので次のような対応をする。

 「私はよく思い出せません」とたいそう丁寧にアリスが言った。


口の両端が後ろで合わさると頭はとれてしまう?or頭はとれない?(GLASS6-10)

2009-01-16 11:16:59 | Weblog
壁から落ちそうに身をのりだしてハンプティ・ダンプティが握手のためアリスに手を差し出す。その時彼はほとんど耳から耳まで歯をむき出しニヤニヤ笑っている。握手しながら彼女は少し心配する。「もし彼がもっとたくさん笑ったら、彼の口の両端が後ろで合わさる。そうしたら彼の頭はどうなるかしら!とれてしまうわ!」

 PS:口が後ろで合わさらないのは、頭を胴体とつなげる背骨が通る場所が口の後ろ側にあるためである。形状的には背骨が頭の真ん中を通れば、口が後ろで合わさっても頭は取れないはずである。(この場合ただし食道・気管などの形状が特殊になる。)アリスは心配しすぎではないだろうか?

ハンプティ・ダンプティが載るのはマザーグースの詩の本か英国史の本か?(GLASS6-9)

2009-01-05 22:49:25 | Weblog
 ハンプティ・ダンプティは自分が塀の上にいても安全である理由を説明しようとする。「もし塀から落ちたとしても、そういう可能性はないが、しかし万一落ちたとしても」と厳かに言う。「王様がみずからのお言葉で約束した、エーエーエー・・・・」と彼がつかえる。アリスが不注意にも言ってしまう。「王のすべての馬とすべての兵隊を助けに送ると約束した」と。

 PS1:ここでハンプティ・ダンプティもアリスもマザーグースにある例の詩を考えている。(GLASS6-4参照)ところが彼はなぜアリスがその詩を知っているのか理解できない。

 ハンプティ・ダンプティが突然怒る。「お前は戸口か、木の後ろに隠れてか、それとも煙突にもぐりこんで盗み聞きしたんだな。さもなければ知っているわけがない。」これに対してアリスが「そんなことしてません。それは本に書いてあります」と答える。彼は穏やかになる。「人々がそれを本に書いたかもしれない」と。

 PS2:ここまでは普通である。ところがハンプティ・ダンプティはその本をマザーグースの詩の本と思わない。

 「それはいわゆる英国史の本である。よく私を見るがよい。私は王様と直接話をした人間である。」
 PS3:英国史の本であると前提すれば確かにハンプティ・ダンプティは王様と直接話している。彼の言うとおりである。かくて彼はアリスに次のように言う。

 「そのことで私が威張っていないとお前に示そう。お前は私と握手してよいぞ!」と。


あらゆる質問をハンプティ・ダンプティは謎々とみなす(GLASS6-8)

2009-01-05 09:23:27 | Weblog
 「塀の上でなく地面のうえにいた方が安全だと思いませんか?塀の上はとても狭いです。」とアリスが親切心から言った。ところがハンプティ・ダンプティは「お前は何てやさしい謎々を出すんだ!」と応じる。そして「地面の上にいた方が安全だなんて思わない。」と彼が付け加える。

 PS:ハンプティ・ダンプティはあらゆる質問を謎々とみなす。つまりある事態・行為の理由を尋ねるものとみなす。しかも自分への挑戦とみなし相手の気持ち・想定と逆に答える。彼は変わっている。例をあげよう。「あの花は美しいと思いませんか?」とアリスがたずねる。「なんてやさしい謎々をなんだ!」と彼はいうだろう。そして「美しいなんて思わない」と答え、その理由を何か説明するはずである。