鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

状態を示す in と場所・位置を示す in (GLASS5-6)

2008-08-31 20:22:19 | Weblog
ショールを直してあげながらアリスが白の女王に言う。「髪が何て状態のうちにあるのかしら! What a state your hair is in! 」と。髪がぼさぼさなのだ。これに対して「ヘアブラシがそれ(髪)のうちに絡まってしまっている! The brush has got entangled in it!」と女王が答える。

PS: このやり取りには少し遊びがある。「髪がある状態のうちに in ある」との言明に対し「ブラシがそれ(髪)のうちに in  ある」との言明が対置される。状態を示す in と場所・位置を示す in を対比させ楽しんでいる。

なお白の女王はさらに不運でこのあと「櫛は昨日なくしてしまった」とため息をついて言う。

形状において or 気持ちにおいて:ショールをまっすぐにする straight (GLASS5-5)

2008-08-23 00:44:27 | Weblog
「ショールをまっすぐにしてよろしいですか?」とたずねたアリスに対して白の女王が憂鬱そうに答える。「ショールがどう考えているか私にはわからぬ」と。
 
PS: この奇妙なやり取りはいったい何なのか。アリスは白の女王にショールを形状においてまっすぐにする straight かどうかたずねた。ところが当の白の女王は、アリスがショールをその気持ちにおいてまっすぐに(素直に)するstraight かどうかをたずねたと理解した。白の女王はショールを擬人化して考えているのだ。

かくて白の女王が次のように言う。「ショールは怒っていると思う。私はそれをピンでこっちに留め、あっちに留めしたが、ショールは機嫌がよくならない」と。この白の女王の発言に対しアリスはショールの気持ちでなく形状のことだけ考えて答える。「ショールは一方の側しかピンで留めてないからまっすぐになりません!」と。そしてショールを直してあげる。

だらしない白の女王:身に着けているものが「どのひとつだってねじれてる」(GLASS5-4)

2008-08-16 00:59:36 | Weblog

 白の女王の服の着方があまりにだらしないので、アリスは誰か手伝ってあげる人がいればよかったのにと思う。「どのひとつだってねじれてるわ Every single thing's crooked. 」とアリスの感想。また「どこもかしこもピンだらけだわ」と気づく。彼女は大きな声で白の女王に申し出る。「ショールをまっすぐにして差し上げてよろしいですか?」と。 PS1:白の女王がだらしない理由については最後の12章で明らかになる。彼女は実は白い子猫がアリスの夢の中で変身した姿であり、母猫のダイナーがまだ白い子猫の身づくろいを終わらす前にアリスが夢の中に入ってしまった。だから鏡の国で白の女王はだらしがないのである。 PS2:白の女王のだらしなさの程度が、身に着けているものが「どのひとつだってねじれてる」というのはうまい表現である。また相当に激しいだらしなさである。 PS3:しかしどうして「どこもかしこもピンだらけ」なのか?その理由はまだ明らかでない。

イラスト: せいいっぱい髪をなおすアリス


能動態 do it と受動態 it done (GLASS5-3)

2008-08-13 01:04:34 | Weblog
アリスが言う。「話の正しい始め方を女王陛下が私に教えて下さりさえすれば私はそれをします do it 」と。白の女王は「それがなされる it done ことを私は全然望んでない」とうめいて答える。
PS1:ここでは能動態 do it と受動態 it done が対比されて楽しまれている。
PS2:女王はなぜうめいたのか。その理由はすぐわかる。次の通り。

白の女王が言う。「私は2時間も自分自身に服を着せていた a-dressing myself 」と。だから彼女はうんざりしてうめくのである。




“話しかけるaddressing ”と“かける a-dressing ”(GLASS5-2)

2008-08-06 17:49:15 | Weblog
アリスはショールを白の女王にかけてあげながら「私は今、白の女王様に話しかけているんですね addressing ?」と言う。「お前がこれを、かける a-dressing と呼びたいのなら、その通りじゃ」と白の女王が答える。アリスは“話しかけるaddressing ”と言ったが、白の女王はその言葉を“(ショールを)かける a-dressing ”と理解したのである。そして白の女王が付け加える。お前はこれを、“かける a-dressing ”と呼ぶかもしれないが、「それは私の考えと全く違う!」と。これに対しアリスは会話の最初から議論したりするのは失礼だと思って微笑し反論しない。
PS:白の女王が“かける a-dressing ”ではなく、では何と考えていたのか知りたいところだが以後の議論がないのでわからない。残念である。


怯えて「バタつきパン、バタつきパン」とつぶやく不思議な白の女王(GLASS5-1)

2008-08-06 17:13:39 | Weblog
アリスが森の中でショールを見つけので誰のものだろうと思った。その時、白の女王が走ってやってくる。「途中でお会いできて良かったです」とアリスは言ってショールを白の女王にかけてあげる。ところがなぜか白の女王はどうしようもなく怯えきった様子で「バタつきパン、バタつきパン」とだけつぶやいていた。
ここで謎は①なぜ白の女王がどうしようもなく怯えていたのかその説明がないこと、また②なぜ彼女が「バタつきパン、バタつきパン」とつぶやくのかその理由もわからないこと。不思議な白の女王である。
(PS:「GLASS5-1」は、「Lewis Carroll, THROUGH THE LOOKING GLASS, 5 Wool and Water に関するコメント1」の意味である。以下の項目でも、同様。)




アリスの「怪物のカラス」論:大きすぎ森を取りぬけられない&ハリケーンを起こせる(GLASS4-37)

2008-08-01 09:52:10 | Weblog
 「怪物のカラス」から逃れてアリスは森の中に逃げ込み大きな木の下で立ち止まる。彼女の分析。「あのカラスは私のところに来られない。大きすぎて森の木の間を無理矢理通りぬけるなどできないから。でも羽をはばたかさないでほしい。森の中でハリケーンが起きるから。」その時「あっ、誰かのショールが飛ばされてきた!」とアリスが見つける。