風がスープのように強い(GLASS8-14)

　白の騎士がアリスに言う。「お前の髪の毛はしっかり留めてあるだろうな？」と。それは二人が出発するときのことだった。「ただ普通のやり方です」とアリスが微笑しながら答える。「それでは不十分だ」と騎士が心配そうに言う。「ここの風は途方もなく強いのだ。それはスープのように強い（＝濃い）のだ」と彼が付け加える。

　PS：ここは意味がわかりにくいが、風が強い strong のは、どの程度かというと、スープのように濃い（＝強い）strong ということである。英語では当然だが、日本語では茫然である。

丸皿を袋に入れるはずが、自分自身、袋の中へ落ちる(GLASS8-13)

　「丸皿をこの袋に入れるのを手伝ってくれ！」と騎士がアリスに頼む。アリスは袋の口を十分に大きく開けて持つ。しかし彼が丸皿を袋に入れるのに長い時間がかかった。

PS：なぜ騎士は長い時間がかかったのか？実は変な理由である。

　騎士は非常に不器用であって丸皿を袋に入れるはずが、最初二、三回は自分自身、袋の中へ落ちたからである。

丸皿を持っていく：その内包的理由と外延的理由(GLASS8-12)

　アリスが手に丸皿を持っているのに騎士が気づき、「その丸皿は何のためのものだ？」とたずねる。「干しぶどうケーキをのせるためです」とアリスが答える。すると騎士が「持って行ったほうがよい」と言う。

　PS1：騎士が丸皿を持って行ったほうがよいと判断したのはなぜだろうか？干しぶどうケーキをのせるための丸皿を使う機会があるだろうと彼が考えたせいだろう。例えばバーベキューの時にその丸皿を使うなど。これはちょうどワインを注ぎいれるワイングラスを用意しておくのがパーティーの時にそれを使うからというのと同じである。ところが騎士は不思議な理由を言う。

　「干しぶどうケーキを見つけたら丸皿がすぐ役立つからのう」と。

　PS２：これはあたかもワイングラスを用意しておく理由を問われて、パーティーの時にそれを使うためと答えるのでなく、ワインを注ぎいれるためと答えるようなものである。理由には内包（概念が適用される全ての事物に共通する性質）的なものと外延（概念が適用される事物の範囲）的なものがある。つまりワイングラスを用意する内包的理由はワインを入れるためであり、外延的理由はパーティーで使うためである。（ワイン←ワイングラス→パーティーで使う）。丸皿を持って行く内包的理由は干しぶどうケーキをのせるためであり、外延的理由はバーベキューで使うためである。（干しぶどうケーキ←丸皿→バーベキューで使う）。内包的理由（干しぶどうケーキをのせるため）は丸皿の定義に当たるものであり、丸皿を持っていく理由を問われたとき答えるのは、普通これではなく、外延的理由（例えばバーベキューの時にその丸皿を使うため）である。騎士は外延的理由を言わずに、内包的理由を言っている。騎士は変な人である。