鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

“Division”の二重の意味:①「物を割ること」or②「数字を数字で割ること」(GLASS9-15)

2012-12-27 18:54:20 | Weblog
 白の女王がアリスにたずねる。「お前は“ Division”(物を割ること) が出来るか?パンをナイフで割る divide と答えは何か?」アリスは困って「うーん・・・・」と考え始める。赤の女王がアリスに代わってさっと答える。「バターつきパンに決まってる!」と。

 コメント1:“Division”には、二重の意味がある。白の女王と赤の女王は、“Division”とは、「物を割ること=二つに分けること」(①)と考える。パンをナイフで割る=二つに分けると、どうなるか?パンにバターをつけるために、割る=二つに分けるのだから答えは、当然、「バターつきパン」であろう。

 コメント2:アリスにとっては、“Division”とは、「物を割ること」ではなく、「割り算」をすること(②)である。彼女は、「数字を数字で割る」問題を、当然、予想していた。ところが「パンをナイフで割る」問題が出された。アリスは困る。

 コメント3:赤の女王は、“Division”は「物を割ること」(①)と考えるから、答えは「バターつきパン」が当然である。しかし、アリスは“Division”は「割り算」つまり「数字を数字で割ること」(②)と考えるから、この場合、問題そのものが、そもそも出されていないことになる。赤の女王が、当惑するアリスに代わって、さっと答えるが、実は赤の女王には「アリスに代わる」権利がない。

 ※旧稿
割り算、「パンをナイフで割る」の答えは何か?(GLASS9-15)
 白の女王がアリスにたずねる。「お前は割り算 Division が出来るか?パンをナイフで割る divide と答えは何か?」アリスは困って「うーん・・・・」と考え始める。赤の女王がアリスに代わってさっと答える。「バターつきパンに決まってる。」確かにそうだろう。パンを切る=割るのはバターつきパンにするためだから。赤の女王は正しい。アリスは反論しようがない。

「引く」の2重の定義:①「取り去る」こと、②「単位量を減少させる」こと(GLASS9-14)

2012-12-15 11:30:29 | Weblog
 赤の女王がアリスに「お前は、引き算は出来るか?8から9を引け!」と言う。「そんなの出来ない!」とアリスは、即座に答える。これを聞いて、白の女王が「彼女は引き算が出来ない」と言う。
 
 コメント1:アリスは、ここでは「引く」を「取り去る」の意味で考えている。例えば、リンゴが8個しかないとき、ここから「引く」、つまり「取り去る」ことが出来るのは、8個までである。「引く」を、「取り去る」と定義すれば、アリスは正しい。アリスは、「引き算」が出来ないのでなく、「引き算の定義」が「8から9を引く」ことを可能にしないのである。白の女王は、「彼女(アリス)は、正しい『引き算の定義』が出来ない、『引き算の定義』が間違っている」と言うべきである。

 コメント2:白の女王と赤の女王は、「8から9を引く」に対して、答えが出るような「引き算の定義」を要求している。例えば、「温度計が8℃を指しているが、9℃下がると、何度になるか」と尋ねられれば、アリスは「マイナス1℃よ」と答えることが出来るだろう。このとき「引く」は、「個数」に関して、「取り去る」ことと、定義されてはいない。

 コメント3:この温度計の場合、「程度」が問われている。まず「程度」に関して、尺度としての程度の幅、つまり単位(=目盛)(℃)が構成され、さらに「程度」が単位(=目盛)の量として示される。「引く」とは、ここでは「単位量を減少させる」ことである。

 コメント4:かくて「引く」の定義が2つあると分かる。一つ目は、「引く」とは、「個数」に関して、「取り去る」ことである。二つ目は、「引く」とは、「程度」に関して、「単位量を減少させる」ことである。

 ※旧稿
引き算、「8から9を引く」のは無理!(GLASS9-14)
 赤の女王がアリスに「引き算は出来るか?8から9を引け!」と言う。「そんなの出来ない」とアリスは答える。それはそうだ。例えばりんごが8個しかないとき3個とったら何個残るかは答えられる。しかし9個とれと言われたって8個しかないのだから取れっこない。アリスはそう考えた。これに対して脇で見ていた白の女王が結論する。「この子は引き算ができない」と。これはひどい。