鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

夢と現実は異なる二つの部屋のようなものである(GLASS12-5)

2008-02-29 22:53:26 | Weblog
 アリスが黒い子猫のキティに話しかける。「夢の中で聞いた詩は全部お魚の詩だった。お前とそこで一緒だったらお前が喜んだはず。明日の朝は現実のお魚を上げるわ!」と。
 しかし夢の中で赤の女王が魚を好きなわけではない。だから彼女がお魚の詩を喜ぶこともない。夢と現実は断絶している。
 ところがアリスは夢の中の赤の女王を現実の世界の黒い子猫の変形したものと定義する。夢から覚めるとき赤の女王が黒い子猫に変形するのをアリスが目撃したからである。夢と現実は連続しているとアリスは思う。あるいは夢と現実は連続していて断絶している。つまり夢と現実とは一つの家の異なる二つの部屋のようなものである。
 しかも①アリスは現実を重視し現実の部屋の子猫が夢の部屋で女王の着ぐるみを着て女王を演じる(=魚を好きなわけではない)と考える。ただ着ぐるみを着ているのは子猫だから女王はお魚の詩を喜ぶはずとアリスは現実の世界の子猫に話しかける。
 これに対し②現実を重視しない見方もある。夢と現実は連続しているが、現実の部屋で子猫の着ぐるみを着る或る者が夢の部屋では女王の着ぐるみを着るのである。この見方では子猫と女王は対等であり、女王の着ぐるみを着る或る者は女王を演じ、子猫の着ぐるみを着る或る者は子猫を演じる。夢の中で女王と子猫は別物であり女王がお魚の詩を喜ぶことはない。つまり現実と夢が対等であり、子猫の属性(=魚が好き)が女王の属性(=魚を好きなわけではない)と重なることはあり得ない。女王がお魚の詩を喜ぶなどということはありえない。


鏡の国の3人の主人公:赤・白の女王とハンプティ・ダンプティ(GLASS12-4)

2008-02-25 22:56:07 | Weblog
キティが黒い子猫。スノウドロップが白い子猫。母猫のダイナーはまだ白い子猫の身づくろいを終わらしていない。アリスが気づく。「夢の中で白の女王がだらしがなかったのはこのせいだわ。そして白い子猫が白の女王だったんだわ!」と。さらに「ダイナーは夢の中でハンプティ・ダンプティだった!」とアリスは思う。彼女はなぜこう思ったのだろうか。ハンプティ・ダンプティの存在感が圧倒的だったから。鏡の国の主人公は結局、赤の女王、白の女王、そしてハンプティ・ダンプティということなのだ。




アリスはなぜ夢の中で別のものに変身しないのか(GLASS12-3)

2008-02-24 22:06:21 | Weblog
アリスは子猫が夢の中で赤の女王であったことを子猫に認めさせたい。そこでチェスの赤の女王に対峙させるが子猫は顔をそむけて見ない。でもちょっと恥ずかしそうにしているとアリスには思える。かくてアリスは子猫が赤の女王であったと結論し敬意を示しキスする。だが赤の女王が子猫に変わるのをアリスは見たのだから子猫が認めなくても間違いない。それにしても夢の中で子猫は赤の女王に変わったのになぜアリスはアリスのままで何にも変身しなかったのはなぜか?

いつも同じことしか答えないのは無言と同じである(GLASS12-2)

2008-02-21 22:07:23 | Weblog
 「お前は鏡の国 the Looking glass world でずっと私と一緒にいたんでしょ。覚えてる?」とアリスが子猫に尋ねる。現実の世界の子猫が夢の中では赤の女王だったから。ところが子猫はゴロゴロしか答えない。不便だ。「ハイならゴロゴロ、イイエならニャオとか答えてくれればいいのに!」とアリスは思う。子猫はゴロゴロ言うだけなので鏡の国でアリスと一緒にいたのかわからない。「いつも同じことしか答えない人とどうやったら話ができるのかしら!」とのアリスの嘆きはもっともである。風がいつでもゴーゴーとしか答えないのと同じである。さらに言えば会話で同じことしか答えないのは無言と同じである。


現実の世界=子猫が夢の世界の存在を告げ知らせる(GLASS12-1)

2008-02-20 22:07:20 | Weblog

「赤の女王陛下はそんなにゴロゴロ言ってはいけません」とアリスがうやうやしく言う。「でも、あんなに素敵な夢の世界から私を引き離し目覚めさせたのはお前よ」とアリスが子猫を非難する。アリスのこの非難の意味を検討しよう。なぜアリスが夢から覚めたのか。思うにアリスは勝手に夢から覚めたので子猫が目覚めさせたわけではない。しかし赤の女王が子猫に変化したのを見てアリスは赤の女王が夢の世界に属し子猫は現実の世界の一部であると理解した。アリスが夢の世界に気づいたのは現実の世界が別にあることを知ったからである。子猫はアリス目覚めさせたわけではない。しかし子猫=現実の世界がかつてアリスが夢の世界にいたことを告げ知らせるのである。(PS:「GLASS12-1」は、「Lewis Carroll, THROUGH THE LOOKING GLASS, 12 WHICH DREAMED IT? に関するコメント1」の意味である。以下の項目でも、同様。)

イラスト: 結局ホントに子ネコでした


夢の世界のアリスと現実のアリスor赤の女王と子猫問題(GLASS10&11)

2008-02-20 21:27:44 | Weblog

  小さくなった赤の女王をアリスが思いきり前後に振る。アリスは怒っている。赤の女王は無抵抗。アリスは振り続ける。やがて赤の女王の顔が小さくなり目が大きくなって緑になる。体が小さくなり太って柔らかくなり丸みを帯びてくる。そしてそれは子猫だった。赤の女王が現実には子猫だということが明らかとなり夢の世界から現実に戻る。夢の中のアリスは現実でもアリス。ところが夢の中の赤の女王が現実には子猫だとは不思議である。(PS:「GLASS10&11」は、「Lewis Carroll,THROUGH THE LOOKING GLASS, 10 SHAKING, 11 WAKING に関するコメント」の意味である。)

イラスト: 赤の女王をゆすって……


アリスは癇癪持ちで赤の女王を捕まえる(GLASS9-60)

2008-02-19 22:03:01 | Weblog
  「あなたね!」とアリスが赤の女王に食って掛かる。なぜなら赤の女王こそすべての悪戯の原因に違いないから。ところが赤の女王は突然小さくなってテーブルの上を走り回り自分の後ろにたなびくショールを追いかける。ほかのときならこの変身に驚いたろうがアリスは今ひどく興奮しているから何が起きようと驚かない。アリスは小さくなった赤の女王を捕まえて「あなたなんか振って子猫にしてやる!」と言う。アリスは癇癪持ちである。

お玉ごときにどなられてアリスが怒る(GLASS9-59)

2008-02-19 21:36:42 | Weblog

スープのお玉がテーブルに沿ってアリスの椅子の方に歩いてきてどけとイライラしながらアリスに合図する。すでにろうそくがみな天井まで伸びビンが二枚の皿をくっつけてパタパタと飛び、白の女王が深皿のスープの中に消えたりしている。その上お玉ごときにどけと言われ「こんなこともう我慢が出来ない!」とアリスは叫ぶ。そして両手でテーブルクロスをつかみぐいと引っ張る。皿、客、ろうそくなどすべてがガチャンと落ち床に山になる。アリスは気が強い。赤の女王がいるのに自分のパーティが滅茶苦茶になったからと怒ったのだから。

イラスト: 晩餐の始末


白の女王がスープの中に消える(GLASS9-58)

2008-02-17 22:14:59 | Weblog
この時アリスはしわがれた笑い声を耳元で聞く。白の女王に何かあったのかと思って振り向くと彼女がいなくて椅子に羊の脚肉が座る。「ここにいる!」と彼女の声が深皿から叫ぶ。アリスがそれを見ると白の女王の笑った顔が深皿の縁から見えた。そして彼女がスープの中に消える。もう猶予がない。客の何人かが深皿の中に横たわっている。アリスはあわてている。お客などみんながスープの中に消えたら困るのか?アリスが一人残されるのが怖いのか?いやアリスはただ動転しているのだろう。起きていることが奇妙すぎるから。

ろうそくが伸びビンが鳥のように飛ぶ(GLASS9-57)

2008-02-14 21:33:01 | Weblog
白の女王が「何かが起きそう!」と叫ぶ。突然ろうそくがみな天井まで伸び先端に花火がついたイグサの畑のようになる。またどのビンにも二枚の皿がくっつき翼となり二本のフォークが脚となりパタパタとあちこちに飛ぶ。アリスは「鳥のようだわ!」とひどい混乱の中で思う。不思議なパーティーである。